雅・処

好きなアイドル・俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

スタジオライフ「メッシュ」

7年ぶりの萩尾望都作品「メッシュ」

珈琲ブレイク?にスタジオライフ(Studio Life)ファンにしか分からないと思われる芝居の感想などを。


昨今の私のスケジュールは3ヶ月毎に山場を迎えます。無我夢中になっていた時期はおそらく過ぎてしまってますが、何気に劇団スタジオライフの観劇日程が1年のメイン行事になっているのが恐ろしい。芝居の出来不出来は当然ありますが、私はこの劇団の作り出す他の演劇にはあり得ない空気がたまらなく心地良くて、ついつい入り浸ってしまってます。


まあ、全国各地から夜行バスや飛行機に乗ってカートをひきづって現れる熱心なファンも多数いらっしゃいますので、一公演平均5,6回&たまに遠征、という自分なぞはまだ可愛い(?)ほうだと思っております。


萩尾望都さんの『メッシュ』見てきました。両キャスト出揃った*1ところで、成程ナルホド、やっぱり違うダブルキャストの魅力。


次回公演案内&主要キャストを知ってから原作を読んだ時は、「メッシュ役・・・いないなぁー(汗)、ミロン役・・・曽世さんピッタリ!」と思ったものですが、フタを空けてみたら結構それなりに出来上がってました。


原作には相変わらず忠実な倉田脚本。オムニバス形式の作品から、親子の愛憎を抽出して他のエピソードをバッサリ切ったので大判風呂敷広げた挙句に破綻してしまった・・・(過去にはそういうことも少なくなかったけど)ということはなかったと思われます。


原作でもメッシュが父親サムソンに向ける強烈な憎しみと愛されたかった願望の部分がいささか理解しづらいのですが、舞台版だとメッシュが延々、憤っているのが少し唐突な感じもして最後の最後になってようやく「憎んでも憎みきれない、愛しても愛しきれない」メッシュ少年の感情が伝わってくる感じです。


ものすごーく感動するような出来ではないけど、ちょっぴり懐かしく、ちょっぴり痛くてそれでも心が癒されてくる、そんなお芝居になっていたと思います。

【 キャストについての雑感 】


確かに原作に最適なメッシュ役*2というのは今回の配役にはいなかったです。しかし、愛の渇望を演じさせたら劇団一の山本芳樹君と若手花形役者、岩崎大君の二人はそれぞれになかなかがんばってました。


芳樹君は、三原順原作『SONS』でも父親を愛するあまりに自殺する少年・ジュニア役を強烈に演じただけあって、こういう作品はまさにハマリ役。当時より一段と大人になってしまってるのでどうか、と思いましたが、さすがにソツなく演じきってました。


対する大ちゃんのメッシュのほうは、漫画とはかなり違うイメージですがなかなか気に入りました。*3大ちゃんは、漫画の主人公をよく演じるだけあって、容姿にはとても恵まれており普通にカッコよいお兄さんなんですが、いつでも残念に思うのは、「色気が足りない・・・(溜息)」ことです。


今回も原作に比べてだいぶ健康的な(笑)メッシュではありましたが、周りをお兄さん達に固められ、可愛がられているとなかなか弟チックで可愛く見えてきました。二人共心配した金髪がなかなか似合っていてホッとしました。


驚いたのは、高根研一ミロンの弾けっぷり。ライフ一の強面顔、男気たっぷりの彼ですがああいうお茶目な一面を恥じらいなく演じられるようになったところに「一皮むけたなー」と感心しました。絶世の美形『ドリアン・グレイの肖像 (新潮文庫)』を経て、一層演じることに貪欲になってきたのでしょうか。今後も楽しみです。


まだまだ若手の部類の青木隆敏君と奥田努君が年長のドルー役を演じたのも一驚でした。この役は、やはりもっと年季の入った役者に演じてもらいたかったけれども、やたらエキセントリックかナイーブな役どころが定番だった青木君が男の渋さを細かい仕草と共に演じていたのは新たな見所でした。


入団し立ての頃から見ていて「あんな小さかった子がこんなに立派になっちゃって・・・」というような超個人的な感動もあったのですが、やはりまだちょっとチンピラ風情なのは惜しいです。


曽世海児さんのミロンは、想像通り原作から抜け出たような青年でした。彼主体のエピソードがあればもっと芝居が締まっただろうなあ。それから今回、船戸慎二さんのアレクス役は”さりげない男の色気”が感じられて一番ときめきました。


原作とは見てくれが大いに違うのに、ポール役の牧島進一君は何をやらせても安定してて素敵だったし、新人とは思えないほどにチャーミングな女役を演じる吉田隆太君と関戸博一君、子役の松本慎也君や三上俊君も本当に可愛いです。


演技達者でいぶし銀の山崎康一林勇コンビは、笑い部門担当でとにかく出てくるだけで可笑しかったですし、石飛幸治さんのサムソンはダンディなオヤジで敵役なのにウットリしちゃいました(笑)。


劇団としても20周年の節目の年。そして7年ぶりの萩尾望都さんの作品ということで、役者達の気合の入り方はなかなかなものでした。ライフの美点というのは、律儀というか奥ゆかしい部分があって、人との出会いをとても大事にしているところです。『トーマの心臓』上演以来、萩尾さんへの信奉と尊敬ぶりは並ではなく、年長の劇団員などはことあるごとに”心からの感謝のお言葉”を述べてます。


今回の『メッシュ』でも、「萩尾先生の作品だからやっぱり気合入るよね」と語る劇団員達の姿勢には何か心が洗われる想いがしました。そしてこういう真面目な姿勢が芝居にも如実に顕れてて、ちゃんと心に届いてくるのです。ということで私本人は、なかなか観劇数が減らないという悩み(笑)にぶつかってます。


■追加情報 
 毎回、音楽も話題になりますが(選曲が良いのが劇団の特色です)、今回の公演では映画『コーラス』のサウンドトラックから4曲ほど挿入曲として使われてました。メッシュが幼少期に寄宿舎に居たからかな。
※曲名は、全て耳で判断してます。万が一、違っていたらすいません。


メッシュ 2 (白泉社文庫)

メッシュ 2 (白泉社文庫)


オリジナル・サウンドトラック コーラス

オリジナル・サウンドトラック コーラス


萩尾望都イラスト集 残酷な神が支配する

萩尾望都イラスト集 残酷な神が支配する

 萩尾先生のこの作品は、ライフで見てみたい作品でもあります。「トーマの心臓」再演の時も、劇場で販売されていましたが、劇団員の方は、これ読まれたんでしょうか(汗)?

*1:スタジオライフは、ダブルキャストが基本です。劇団員は40名近いので配役の幸不幸も結構あります。

*2:美形でプライドが高く、両性具有的な妖しい魅力を持つ不良少年・メッシュ。

*3:過去に主役で演じた作品の中で皆川博子作『死の泉 (ハヤカワ文庫JA)』のマルガレーテ以来かも。