雅・処

好きな俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

天使か堕天使か?少年の顔を持つ男役 〜朝海ひかる〜

2006年の正月から宝塚にて再演が始まる『ベルサイユのばら』では、オスカル役に雪組のトップ男役、コムちゃん(朝海ひかる)が決まってます。もっとも星組「フェルゼン&マリーアントワネット編」にはオスカル特出ということで、オスカルが役代わりなのでコムちゃんはトップバッターとして3日間だけの出演、その後の雪組「オスカル編」で主役となります。私は大劇場にカシゲちゃん(貴城けい)バージョンのオスカル編を観に行く予定なのですが、実のところ、オスカル役を最も期待しているのはコムちゃんです。


歌劇団がだいぶ以前からコムちゃんに「オスカルを演じさせたい」と思っていたのではないか、と今に至っては推察できるのですが、これほど娘役を演じた男役もなかなかいないというくらい彼女は昔から”女”づいてました。確かにロングのカツラも良く似合いますし、”フェアリータイプ”と言われるだけあって、外見もフワフワとした中性的な魅力の持ち主。男なのか、女なのか、いまひとつどちらも似合ってないような(笑)アンバランスさが彼女にはあると思います。


かつてフェアリータイプの代名詞だった(?)涼風真世さんですら、ベルばらのオスカル役について必ずしも代表作ではなかった気がします。歌声も台詞も凛々しさを出して頑張っておられたし、歴代オスカル役の中では一番好きなのですが、それでもオスカルが「女」を意識した途端にどうも微妙にブレてしまうので、この難役をコムちゃんがどう料理してくれるか、楽しみです。彼女の持つ頑ななくらい硬質な個性が出れば案外にスッとはまるではないか、と思います。しかし、蓋を開けてみたら、意外な人が意外な評判・・・ということがあるかもしれないのでそんな楽しみもありますね。


コムちゃんを初めて意識した*1のは、『パッサージュ』というショーの「硝子の空の記憶」のシーン(タイトルが間違っていたらすいません)です。耽美世界を演出させたら宝塚で一二を争うという荻田先生の作品、今思えばこの頃からこの先生の作品には魂を持ってかれてしまってましたね。とにかくこのショーは曲の旋律の素敵さや場面展開の斬新さと面白さ、も忘れられず、大好きな作品です。


コムちゃんは冒頭の白い衣装でのダンスもありましたが、ベージュの衣装を身にまとい、ソロで踊るシーンがとても印象的でした。轟さんの拾い上げたガラスの破片で目を覚ます、”ガラスの精”のような役どころでした。その時のコムちゃんは今よりまだ瑞々しい美しさがあってまさに「天使」を思わせました。踊りもクラシックバレエを意識した振付となっていたので、ステージの広い空間を、まるで飛ぶように軽やかに舞うコムちゃんを見ているとスーッと幻想世界に連れて行かれてました。その時に初めて彼女の他人と違う個性を強く感じました。


対して芝居のほうは、いつでもそこそこで、それ以上でも以下でもない感じ。決して没個性ではないのですが、他人を邪魔しないように遠慮がちに演じている部分があり、そこがアピール不足のようで勿体無く思えました。

【 たぶん一生忘れない名場面 】


トップになってからのコムちゃんの成長ぶりはなかなか目覚しかったと思います。お披露目公演の時には「ホント大丈夫なの・・・?!」とその頼りなさばかりが目に付いたのですが、ちょっと目を離した隙に(笑)いつの間にやら風格さえ漂わせておりました。細身の身体に骨太な声、眼差しキリリと麗しく、垣間見える男らしさも。普段の彼女のトークを見ていると、何も考えないでぼうっとしている(失礼)ようで存外に落ち着きがあって、そのギャップに驚きます。決して自己主張の激しいタイプではないと思いますが、それだけにジワジワと燃焼し続ける、ろうそくのようなしぶとさ(笑)、いやタフさを感じます。


私がコムちゃんで今後も絶対に忘れられない、と思うシーンは2004年の『タカラヅカ・ドリーム・キングダム』のROSSO役です。薔薇の精そのままに、華麗で移り気で薔薇収集家の男主人公(轟悠)を翻弄する役柄でした。薔薇そのもの!のコスチュームもコムちゃんと一体化するほどに似合っていましたし、やはりバレエ特有の動きをたっぷり生かした振付も見事でした。しかし、何よりも魅力的だったのは、コムちゃんの妖しく匂い立つ色気です。これぞまさに耽美!の世界。全身総毛立つほどの尋常でない感動がありまして冒頭10分見終わって1作見たほどの疲労感が襲ってきました。


ROSSOは、見る人それぞれに捉え方が違うかもしれませんが、私にとっては宝塚で初めて感じた「少年美」の世界でした。男でも女でもない、そしてそのどちらでもある。未成熟なのに熟成されたオトナの妖艶さも持ち、漫画の世界でしか見られないような”不完全だからこそ完璧”な美の世界なのです。


いまだに何度も映像で見返す度に心を奪われてしまうほど、ちょっと正気ではいられない大好きなシーンです。銀橋で人差し指を振ったり、薔薇をイメージする手首の回転とか、ソファで手持ち無沙汰に女役のシーンを見つめ帽子の縁を撫でる仕種とか、コムちゃんは妙に手つきや小技が達者です(笑)。もちろん、「キスはまだあげないよ」の焦らしまくり誘惑シーンなんて小憎らしくてサイコー!コムちゃんは進む道を間違えてなかった、と実感した瞬間でした。ダンスが台詞よりも雄弁に語るタイプだからでしょう。*2


このROSSO役は、コムちゃん自身も「こうやってやろう!」という強い野心があったわけではない(あったら逆にコワイ)と想像しております。彼女自身の持つ個性と今まで宝塚で培っていたものの集大成があんな”魔物”を見せてしまったのでしょう。明確な意思が無いからこそ(何も考えてない、という意味ではありませんが)その輝きは一層鮮烈でした。まさに堕天使な少年がコムちゃんに乗り移った瞬間〜全くコムちゃんは自分の中に何を飼っているのやら・・・(笑)。たぶんこれだけ心底魅了される瞬間は今後の宝塚でもないかもしれません。


そんな個人的なシュミ(笑)は置いといて、コムちゃんにはオスカル役を凛々しく、美しく演じてまたビックリさせていただきたいものです。野郎度№1の湖月わたる君とのゴールデンコンビ、とても楽しみです。

 ROSSO役の朝海ひかる
  ENAK SUMiRE STYLE 雪組東京公演
  ENAK SUMiRE STYLE 雪組東京公演
  ENAK SUMiRE STYLE 雪組東京公演
  (連続写真になってます)

*1:「ひかるおねえちゃんが宝塚から帰ってきたよ」by萩の月CM でのけぞったのもこの頃でしょうか。

*2:後半ではカシゲちゃんの「幸福の王子」にヤラレてしまうし、このショーはある意味、最強でしたね。