雅・処

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『ベルばら2006』フェルゼン編(貴城けいオスカル)観劇記

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宝塚大劇場に実に5年ぶりにベルばらが帰ってきた!ということですが、何の因果か私が大劇場に出向いたのも丁度5年ぶりだったのです。自分の中で長らく封印(=自制)していた*1この遠征の目的は、世を騒がせた”オスカル役替わり”という実に単純な理由でした。まあ、現実なんてそんなもんです(笑)。


早速ですが、初見の感想を。まずは幕開きから自分の中では”混乱状態”でした。配役については既知のため、もちろん何の驚きもないはずなのですが、ブルーの軍服に身を包んだカシゲちゃん(貴城けい)のオスカルが登場した途端、頭のネジが吹っ飛んでしまいました。「ベルばらで今更どうして!?」と焦るものの、勝手に電撃ショックを受けてしまい。。。


よく考えてみると『ベルばら2001』の星組&宙組の観劇では、当時私が好きだったジェンヌさん数名は全く関与しておらず、非常に第三者的に冷静に見ておりました。それ以前となるとビデオで見返して「やはり昔のトップさんは素晴らしいなあ〜」と感心したりするということで、今回の星組バージョンでメインキャストがことごとく好きな人ばかり、というのが初めての体験。


全ツや韓国公演を経て星組でのベルばらは3度目で、もうすっかり頭に焼き付いていたのですが、それでもそのバージョンとは、すっかり変わってしまった構成*2になかなか気持ちがついていけません。まさに心の準備が出来てないところへきてカシゲちゃんのオスカルです。当然異常なテンションに襲われ、もう何を見てるんだか・・・(汗)。


ということでかなりレロレロな観劇状態となってました。目は必死に追うものの、カシゲオスカルが台詞を喋る度にふーっと意識が遠のくような、魔の状態。本日2回目*3を見てようやく全体の理解が出来たのでホッとしました。

【 フェルゼン&オスカル編?! 】


なぜここまで動揺したかというとまず、カシゲちゃんのオスカルが漫画の世界そのもののビジュアルだったから。かと言って原作にピッタリか?というといまひとつ分かりませんが、ともすると野暮ったく見える宝塚の軍服が想像以上にキマリすぎててますます惚れました(笑)。いや参った、降参!という感じです。


ところがオスカルの扮装でも、中身はどこからどう見てもカシゲちゃんです。(→そりゃそうだわ。)芸風はいつもの如く、颯爽と澱みない凛々しい男役そのものの姿。「できるな、オヌシ」というくらい、役目に忠実でさぞかし敏腕な男(女)だろう、と思わせます。それがたまにヨロメキのポーズをとる時、脚が「私は、実は女なの・・・」というカタチになったりすると冷や汗タラーリ。さすがにカール・ハインツの時の見事な開脚(男座りが凄かった)は見せられませんが、うーん見慣れないものを見ると人間驚くものです。


実はカシゲちゃん、稽古の時に(愛する)フェルゼンを呼びとめようとするシーンで、いつもの男役そのままに「フェルゼン!」と厳しい目つきで睨みつけてしまったようで、演出の谷先生に「女を忘れるな。お前は女なんだぞ!」とダメ出しを貰ったそうです。(夜のパーティで本人自ら再現してくれた時は、大爆笑の渦でした。)それで「女って、どうやるんだっけ?!」と自問自答していたとか。やはり男役の癖というのは、無意識で出ちゃうものなんですね。


それを聞いて観劇2回目の時は、「オスカルはオンナ、そう女なんだ」ともう一度自分に言い聞かせながら見たので微妙な女っぽさ(汗)をなんとか感じ取ることができました。口は普段の男らしさそのままですが、カシゲちゃんの眼差しがフェルゼンへ切なくも強い”愛してる”光線を放っていて、秘めた恋慕が理解できます。むしろ、フェルゼン>アンドレを思わせる描写が多くなったので、アンドレが割りを食ってるような・・・(汗)。


そして「オスカルってこんなに出番が多かったかな?」と驚いたのがもう一つ。過去の作品を、よくよく見るとそうだったかもしれませんが、今回はオスカルがよく出てくるな〜ということで目が離せず、第一幕はまるで[フェルゼン&オスカル編]という印象。やはり各組トップ&2番手役替わりを意識してなのかもしれません。
オープニングなんて最たるもので、銀橋でフェルゼン&オスカルが絡み、王妃は盆で廻ってるし(笑)。「えーっ!ホントにこれでいいんですか!?」とビックリ仰天したものです。

【 変貌するベルばら】


芝居の中身のほうもかなり大胆にアレンジされてて、全く見たことのない台詞&場面がいくつかありますし、あとは過去のシーンを再編集して見ていて新鮮さを出していたり、お馴染みの名シーンを大胆にカットしたり、と2001と見比べてもかなり変貌してます。おかげでいつになく飽きずに楽しめましたし、いつもネックだった冗長な幕前の説明台詞が減ったこと、アントワネットが子を思い慟哭するシーンなど見所が増えていたのは好感が持てました。

初見で一番驚いたのは、第二幕の冒頭の「そしてジェローデルは見た!・・・一体どこで?」でしょう。オスカルとアンドレの深い愛の瞬間まで雄弁に語るジェローデル。これは見た人のほとんどがツッコむのではないか、と思われます(笑)。


第一幕の終わりに今回新たに追加された王宮の場面が登場しますが、実はこのシーンが一番気に入りました。フェルゼン、ルイ16世、アントワネット、オスカル、アンドレという主要キャストが全員勢揃いして、フェルゼンの出立の挨拶を受けるシーンです。微妙にスウェーデン宮の場が混じってますけど(苦笑)、ルイ16世の「困る・・・王妃が悲しむぞ」のくだりはもともと大好きだったシーンなので、これがパワーアップした上、<フェルゼンを囲む愛の相関図>状態になっているのが面白かったです。その分、当事者のフェルゼンがこれらキャラクター達の心情まで代弁しちゃう(→貴方はそこまでオトナか?フェルゼン)のは、実は奇怪だったりもするのですが、それでもこの場の雰囲気(役者のパワーのなせるワザでしょう)がたまりません。中でもフェルゼンへの想いに内心身悶えしているオスカルを見て、私も一緒に身悶えしてたので(笑)個人的にツボでした。


お馴染みの”今宵一夜”・・・とりあえずここだけ、”元雪組”な空気が流れておりました。濃厚なラブシーンか、と思いきやなんとなく”ラブラブムード”といいますか、大正浪漫っぽいといいますか(笑)。トウコちゃん(安蘭けい)のアンドレがオスカルを想い続けて苦節ン十年・・・という情念が、少ない台詞からも濃〜く滲み出てきてサスガにうまい!と唸る出来ばえ。革命前夜の悲劇的な部分より、やっと心が通じ合った恋人同士の幸福感を味わいました。そして広場〜バスチーユに至るまでそれこそ涙する暇も無し、というくらい一気に駆け抜けていっちゃいました。

【 主要キャストについて 】


湖月わたる君のフェルゼンは、さすがに長い付き合い(?)となったのでわたる君=フェルゼンがすっかり私の脳裏に焼きついてしまってます。”こうであって欲しい、フェルゼン様”を存分に男らしく演じてくれてましたし、念願の『駆けろ!ペガサスのように』も血気盛んで(笑)とても嬉しかったです。どこから見ても包容力の塊、大人の男がすっかり身に付いててなんともウットリ。5人のオスカルに愛されても文句ないです。そしてわたるフェルゼンの持ち歌である『アン・ドゥ・トロア』、初めて聞いたときは何のご冗談か(汗)と思った新曲でしたが、今となればこれが聞きたくて・・・になるのだから面白いものです。


白羽ゆりちゃんの王妃マリーアントワネット。これは全ツとは比べ物にならないほど進化してました。もうすっかり王妃の風格が漂っていて、安心して見ていられます。台詞の一つ一つが心に染み入るほどに良くなっていて、特にルイ16世とのさりげない会話など夫婦の安らぎが漂ってかなり良かったです。英真なおき組長のルイ16世は、とても可愛らしく、素敵なおじ様だったのでほのぼの見られました。


トウコちゃんのアンドレは、フェルゼンとはまた違って意味で”大人”です。憂いを帯びた瞳でオスカルを見つめていると、精神年齢は10歳も年上じゃないか、と思うくらい、いぶし銀の魅力。良い意味で”昭和のスター”に通じるくらい独特の風格がありました。銀橋での『白ばらのひと』のソロはあまりの上手さにこんなに名曲だったんだー、と新鮮な驚きを感じました。今回の「ベルばら」再演で一番落ち着いて演技を見せていたのはトウコちゃんかもしれません。見せ場がもっとあったら、と思うととても惜しいです。


そして出番は少なかったものの、柚希礼音ちゃんのアランにも舌を巻きました。彼女は、このところめきめき上達しており、むしろ安心して見ていられるくらいですが、”荒くれ男アラン”あの少ない台詞でよくぞ、と思うほど魅力的に演じていました。願わくば「オスカル編」でアランをたっぷり演じてくれたらどんなにか良かっただろうなー、と思いました。


シッシーナ夫人の高央りおさんは、男役のドスの効いた台詞で笑いを誘っていましたし、専科の出雲綾さんも2001の頃のやりすぎな(汗)アドリブ部分が今のところ幾分抑え目でした。出雲さんは、エトワールでジックリ聞いてみると本当に綺麗な歌声だったので驚きました。

【 フィナーレ 】


フィナーレは、宙組の2001とほぼ同一でした。その合間に平成花組で披露されていた「小雨降る径」という男役同士のデュエットダンスがついたのが今回の見せ場。青のピッタリとしたツナギを着たわたる君とそれに負けじと男らしい(笑)スカート姿のカシゲちゃん。2人ともとても強烈で色っぽく、個性のぶつかり合いでオーバーヒートしそうでした。カシゲちゃんのカツラは4パターン。毎回変えていたそうで、私も2種類がちゃんと見られてうれしかったです。どちらもストレートヘアなのがまた嬉しかったですし。


衣装合わせでは、コムちゃん(朝海ひかる)が着たドレスを見て「短っ!」と思いつつ、着てみたらそんなんでもないだろう、とタカをくくっていたカシゲちゃん。着てみて「うわっ、短っ!」ともっと驚いたそうです。そういえば男役達の女装は幾度か見てますが、カシゲちゃんのはあまり見た記憶がありません。もちろんドレス姿が似合ってて綺麗なんですけど、全体的なムードが逞しくてちょっとだけオソロシイ気もしないではない・・・(失礼)

それにしてもこれは役替わり5人全て見たいシーンですね。特にコムちゃんは、わたる君を眼で誘いそうなので、想像すると鼻血ものです。水(夏希)さんやユウヒ君(大空祐飛)のなかなか見れない女っぷりも楽しそうですし。


また「薔薇のタンゴ」は、本当に楽しかったです。古いナンバーでもこういう威勢の良く、何より出演者達が楽しそうでたまらないシーンはどんどんやってもらいたいものです。


小耳に挟んだ話では初日のカシゲちゃんは、猛烈に緊張していたようで声も震えていたようだったとか。終わってからの舞台挨拶ではわたる君に「大緊張のカシゲちゃんでした」と紹介されていたようです。そんなウブウブなカシゲちゃんもとても見たかったです。
ということで怒涛の観劇レポ、もっともっといっぱい書きたいことはありますが、まとまらないまま(汗)ひとまずピリオドといたしませう。楽しい”ベルばら祭り”でした。

*1:ここらへんは、番外編ででも改めて書きたいな、と。

*2:フェルゼン編としては過去のシーンが沢山出てきますが。

*3:記念すべき1500回記念にあたりました。