雅・処

好きなアイドル・俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

『世にも奇妙な物語』エキストラ参加(2)

その日は、少々蒸し暑いくらいの良い天気でした。郊外のとある建物の一角に集められた50人ほどの素人エキストラ集団には、特に大掛かりな説明などはありません。


その都度、指示があった場所に移動するという程度のものでした。なんせ通行人役、ただ歩けばいいのです。まあ、変に目立つようなことをしなければ規則正しく決められた方角へ歩いていけばいいだけですから、難しいことはありません。参加者もスーツを着込んだ20代以上の人達なので、結構真面目な雰囲気でした。


午前中、確か9時くらいから撮影が始まったのでこの時、まだ武田真治君は来ていませんでした。武田君と絡むエキストラは、さすがにちゃんとエキストラ事務所から派遣されてきたらしく、黒いスーツと白いスーツを着た20人程度の人達(チェスチーム)が私達からかなり離れた撮影スタッフ寄りに居ました。素人エキストラ達が2つに分かれて斜めに交差する形に歩くのですが、その奥でチェスチームが少し遅れて隊列で歩き出す、という段取りだったと思います。


監督の号令がかかって「カット!」となるまで何度か歩きました。それでも汗ばむ程度で、疲れるほどではありません。しばらくすると、主役の武田君が登場。白いスーツ姿です。チェスチームに挟まれるような体勢だったのでこちらからはかなり離れていましたが、小柄で華奢な体つきの武田君はイメージ通りの姿でした。


チェスチームに挟みうちされそうになってキョロキョロ焦ってるさまや、彼らに向かってジグザグに走りこんだり、と幾つかのパターンを演じてました。なかなか敏捷な動きです。台詞はほとんどなし。更にチェスチームの一人がナイフを刺されるシーンの撮影。驚愕した武田君が刺された男を抱えるシーンを撮っていました。

【 撮影はまだまだ続くよ 】


そうこうするうちに私達の短い”出番”は終わりました。休憩の合図と「お疲れさまでした!」の声が飛びました。こんな出番でも、ちゃんとお弁当とお茶などを渡されて木陰で昼食タイム。涼風が心地良く、なんだか異世界にいる気分です。やがて自由解散となり、素人エキストラ達はどんどん去って行きました。幕切れはとてもあっけいもの。”日常の中の非日常”に浸りたい気分の私はなんとなく立ち去りがたいムードでその場に居ました。まだ、武田君の出番もあるようなので、それも見届けたい気分でしたし。


やがて建物の中から武田君がフラフラと広場を歩いているのが見えました。役者の仲間もいるわけでなし、彼もヒマなのでしょう(笑)。どうするのかなーとひそかにウォッチング。すると木陰の下に程よい空間があったようでそこに寝そべり始めました。ん?と思ってたら、実に自然にお昼寝し始めました。スタッフやチェスチームの人など、あまり一般人がいない環境とはいえ、なかなか大胆。*1なんとなくせっかくだから・・・(おいおい)という感じで、3mくらいそばまでにじり寄って行き、ボーっと観察してしまいました。


とはいえ本人はスヤスヤと気持ちよく睡眠中なので、無粋なことはいたしません。「武田君の足、可愛いなあ。」とか、なんだかあまりに無防備で「襲えちゃいそう(笑)。」とか馬鹿なことばかり考えてウロウロしながら、だいぶ長いこと見ていました。本当にのどかすぎる1日でしたが、思えばこんな撮影でも1日がかりなのですから、「役者の待ち時間の長さ、というのはコレだったのかー」と改めて実感するものがありました。


やがて後半スタート。チェスチームの刺された男と武田君の絡みを重点的に撮影しています。武田君にも監督からいろいろと指示があり、午前中とは違って、クレーンに乗ったカメラマンが武田君にあらゆる角度から近づきます。ハンディカメラは、斜め下から武田君のアップ狙いで撮影をしていました。それぞれ1カットごと、いろいろな角度のカメラを前に同じシーンを演じていくのです。武田君の表情もとても真剣で、監督の指示を受けて「ハイ、ハイ」と頷き、動きを確認しながら丁寧に演じていました。


バラエティなどで演じてるのか素なのか分からないお茶目ぶりを見せる武田君も、こういうマジメな姿を見ると、つくづく「役者ってカッコいいもんだなあ。」と再確認してしまいます。反面、スタッフや見物人がどれだけいようとラブシーンなども演じなければいけないというのは、想像以上に大変なことでしょう。ちなみにこの日の夕方まで、延べ7時間程度の撮影時間でした。、そして映画で登場したこのシーンは、ものの30秒もなかったような短さ。素人エキストラの通行人シーンは、数秒という状態で自分の姿など到底映ってませんでした。


束の間でしたが貴重な経験をして、映画自体や役者さんを見る目が変わったような気がします。そして、また凝りもせず(笑)、柏原崇稲盛いずみさんの撮影でのエキストラ参加もしてしまうのですが、こちらはまたの機会に。

*1:お昼寝に気が付いてソバを笑って通り過ぎる女性も居ましたね。