雅・処

好きな俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

激動の渦に翻弄される麗しき主人公達、『オルフェウスの窓』

オルフェウスの窓』は、「ベルばら」の作家でお馴染みの池田理代子さんの長編コミックです。途中、一時連載が中断され、筆致も大いに研ぎ澄まされた頃に、苦しみながら描きあげた?と思われるこの作品には、やはり作者の並々ならぬ情熱を感じます。私は、最初にこの「オルフェウス」を読んでから「ベルばら」を読んだため、ベルばらが”お子様向け”と感じてしまったほど。


主人公は、3人。大富豪アーレンスマイヤ家の莫大な財産を相続するために男性として育てられた金髪美人のユリウス*1。ピアニストを目指す、真面目な音楽青年イザーク。そしてロシア出身の謎の青年クラウス。彼らを中心に、陰謀や激しい愛の世界が繰り広げられます。

【重なり合う3人の悲劇と悲恋】


更に物語は大きく3つに分かれています。テーマ1は、タイトルの「オルフェウスの窓」の伝説を中心に置いたユリウス編。レーゲンスブルクの音楽学校で3人の登場人物達が出会い、お互いに惹かれあう場面がとても印象的。少年合唱ファンならレーゲンスブルク大聖堂聖歌隊(←ここも古くからの音楽学校です。)を即、思い浮かべるでしょう(笑)。


3人が通う、古い学院にある”オルフェウスの窓”と呼ばれる窓。そこから下界を見下ろして目と目が合った男女は、激しい恋に落ちるが必ず悲恋に終わる、という言い伝えが残っていました。そしてそこでユリウス&イザーク、ユリウス&クラウスという悲恋の組み合わせが生まれてしまいます。青春時代の爽やかな学園生活の描写と、その一方でアーレンスマイヤ家の遺産相続をめぐって、次々と殺人事件が起こる、サスペンス要素の高い部分が交錯する章です。


テーマ2は、イザーク編。ピアニストとして成功への道をまっしぐらだったイザークが、やがて挫折し、貧しい生活の中で新たな希望を見つけていく。少年から青年、そして大人へと歯を食いしばって成長するイザークの姿が続きます。私自身は、イザークのカタブツな性格がどうにも受け入れにくく、のたうちまわる様も痛々しすぎて、あまり好きではないのですが・・・。


テーマ3は、クラウス編。大きく作品が大転換し、ロシア革命の荒波に襲われます(笑)。実のところ私は、このテーマが一番好きです。フランス革命を華々しく描き出した「ベルばら」とはまた違った意味で、壮大なロシア革命の激しい動乱期を追体験できるのです。この漫画のおかげで、ボリシェビキ・メンシェビキなんて教科書で習って以来だった単語の意味も分かりましたし、ロシア革命について芽生えたささやかな興味は未だに残っているほどです。

【最愛の人は、ユスーポフ侯爵!?】


そして革命家となったクラウスの生い立ちと、彼を追ってドイツからロシアへ旅するユリウスとの悲しい愛の世界が見どころのこのテーマ。中でも、私を魅了してやまないのは、軍人として最後までロシア皇帝に忠実に仕えるユスーポフ侯爵。彼は、あの怪僧ラスプーチンを殺した実在の人物として有名です。


そのユスーポフ侯爵は、黒髪に軍服姿も麗しい、魅惑の超美形(笑)に描かれています。当然、漫画のほうではだいぶ脚色もあるでしょうが、実物もなかなかのハンサムだったようです。そのユスーポフ候、偶然助けた謎の美女ユリウスへ、仄かな恋情を持ち始めていきます。しかし、彼は己の本心を奥底に隠しながら、ユリウスの最愛の人クラウスとある時は敵として対峙し、ある時は義理から助けたり・・・と男同士の駆け引きを見せ、そのクールでストイックな中に時折見える情熱の火花がたまらない魅力なのです。


ユリウスは男装はしているものの、芯のところは女っぽい性分で、時折苛立ちを覚えてしまいます。どうやら私の好みではないようです(笑)。結局、読み返して分かったことは、命をかけて戦った同志達の悲劇の死に涙するクラウスの姿や、皇帝への信義に生きてどうにか困難を打開しようとするユスーポフ侯爵の強くも男らしい潔さに惹かれたのかもしれません。武士道好きの私の好みに不思議にマッチしてしまってました。


しかもロシア宮廷に巣食う怪物ラスプーチンや死の病を持つ皇太子アレクセイなど、たかだか100年前の世界に生きていた実在の人物の生きざまが反映されいて、非常にドラマチックで最後まで飽きさせません。とにかく人が沢山死んでいく・・・*2という意味では重い漫画ではありますが、それを感じさせないくらいの圧倒的な面白さで大・大好きなコミックです。


オルフェウスの窓 1 (集英社文庫―コミック版)

オルフェウスの窓 1 (集英社文庫―コミック版)


 文庫で手に入りますが、私は中央公論社版の豪華本がお気に入りです。

オルフェウスの窓大事典 (愛蔵版コミックス)

オルフェウスの窓大事典 (愛蔵版コミックス)


 この本も面白そうですね。
 
ニコライ二世とアレクサンドラ皇后―ロシア最後の皇帝一家の悲劇

ニコライ二世とアレクサンドラ皇后―ロシア最後の皇帝一家の悲劇


 最近、購入しました。まだ読み終わってませんが、とても興味深い本です。

*1:この設定はさすがにベルばらの影響を受けていると思われます。

*2:一体何人の屍が?