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雅・処

好きな俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

「堕天使の涙/タランテラ」観劇記(1) まさに本領発揮のサヨナラ公演

宝塚

宝塚ファンを忘れていたようなこの1ヶ月、むしろ距離的に離れてしまって寂しい・・・のと日々に忙殺されて夢の世界に浸ることができないのもありました。またどこかしら思い出すのが怖かったのもあるかもしれません。


何度か諦めようと思ったコムちゃん(朝海ひかる)の『堕天使の涙/タランテラ』公演。友人のありがたいお誘いのおかげで東京宝塚劇場へ”初”遠征*1成就です。実は、私が骨の髄まで侵されてしまっている「荻田浩一先生のショー」という抗いがたい誘惑こそが、今回一番のタランテラ〜恋の罠♪でありました。


ともあれまずは芝居です。「堕天使の恋」について、見る前はこのサヨナラ公演について賛否両論、という噂を聞きました。しかし、蓋を開けてみれば嬉しい誤算(というかどこかで予期していた通り)私の中ではホームラン!でした。この6年間で見たサヨナラ公演の中で、一番気に入ってしまったかも。芝居もショーも独特の暗いムードが繋がっていて、「魔物チック」なコムちゃん炸裂!凡そ宝塚らしい明るさとは一線を画す作品群でした。


とらえどころない、つまり解釈もいろいろとつけられる、そんなところが観客の戸惑いを誘うのかもしれません。一般のお客さんもかなり戸惑ってるようでした。普段ならバウホールの演目になりそうなお芝居とも思いました。しかし、難解なのは、この芝居よりも相変わらず独特のオギーワールドが展開されたショーのほうかもしれません。

【勝手に演出家を語ってみる】


「神が愛する人間」に嫉妬する堕天使ルシファが、天才ダンサーとして人間界に現れ、そこで知り合った振付師や音楽家、ダンサーの人生を操り狂わす。彼らに思い通りに苦悩を与え、悲劇に突き落とし、その無様な様を嘲笑しているルシファ。しかし、その不完全な人間達が持つ清らかな愛の世界を知り、少しずつ変化を起こしていく堕天使の心・・・。


とっても短絡的に受け取った(汗)かもしれませんが、あらすじはこんなところでしょうか?演出家の植田景子先生の世界は、一見難解そうに見えても根っこの部分は意外とシンプルで単純化されている、と思っています。堕天使も「人間への’神’の愛が知りたい」を連発してますが、そこにルシファの過去の経緯や本当の苦悩が描きこまれていないので分かりにくくなってしまってるかも。


推測ですが植田先生は、人間のもつ”闇の部分”に非常な憧れを持っている気がします。独特のお耽美路線を築こうとされてるようですが、まだちょっと先走ってしまっててツメが甘い・・・ところが惜しい。でもプロローグから最後までちょっとしたゾクゾク感があって、それは植田先生の持ち味が、私の趣味とも相容れるものがあるせいだなあ、と思いました。


それもそのはず、彼女にはどこか劇団スタジオライフの演出家・倉田淳さんに似てるところを感じるのです。そのため結果的に好きな作品が多くなるのでしょう。「堕天使」を見ながら倉田さんだったらどう料理するだろうか?と何度か考えてしまいました。最後に、ボロボロに泣かせて心に楔を打つ技量は年の功か、倉田さんのほうがかなり上だと思いますが、植田先生にはどんどんワザを磨いていただきたいものです。


また一方で、植田先生の作品は、登場人物の個性を浮き上がらせて、彼らの苦悩をストレートにぶつけるところに特徴があります。メリハリも効いてますし、随所に女性的な細やかさが溢れているので、グッとくることが多いと思います。今回も登場人物一人一人の個性や性格がキッチリ浮き上がってきて(男役としても一段と映えるように)、それぞれにちゃんと舞台の上で光を放っていたところに大変惹き付けられました。

【魅力溢れる登場人物】


堕天使役のコムちゃんは、もうすっかり人間ならぬ魔界のモノとなっていて、傲慢で魅惑的なルシファを作り上げていました。やっぱりこういう役どころが板につくのは彼女の持つ、中性的な魅力が大きい。華奢な体から密かに匂い立つ色香と無表情の奥に時折見せる狡猾な眼差し、これだけで後はもう完全に流れに乗って、高みに行ってしまってる。


舞台の上であんなにもどっしりと揺るぎなく立っている、迷いのないコムちゃんを見たのは初めてです。トップスターのサヨナラ公演というのは、独特の神々しさが漂うものですが、コムちゃんも後光が差して拝みたくなる(笑)ような一瞬がありました。また金髪長髪がとても似合うこと、今回もたまりません。オスカルも良かったけれど、そこで終わらなくて良かった、朝海ひかる集大成を存分に見られて大満足です。あますところなく踊りまくるその勇姿にも心の奥で拍手喝采です。


また今回、2番手としてガッシリ組んだ次期トップスターのミズさん(水夏希)は、これまで以上に”猛烈なカッコ良さ”で、グイグイと酔わせてくれました。雪組に異動してきて、ちょっと”借り物状態”の痛々しい感じが印象的だっただけに*2、ようやく地に足をつけて、トップのコムちゃんを支えつつも、自分の持ち味を存分に出しているなあ〜と感心しきりでした。


全く対照的な個性でありながら、トップと2番手がほどよく溶け合っててなかなかのコンビネーションを見せてくれました。これは想像ですが、短い期間に好敵手としても仲間としても接近して、お互いを認め合って信頼している、そんな2人の作り出す空気にシビレました。


 水夏希、もはや「女」ではない・・・
 朝海ひかる、もはや「人間」ではない・・・

なーんてくだらないことを思いながら見入っておりました。いけない、また長くなっちゃったわ(汗)。


宝塚GRAPH (グラフ) 2006年 12月号 [雑誌]

宝塚GRAPH (グラフ) 2006年 12月号 [雑誌]


朝海ひかるちゃんの退団特集です。

*1:東京に住んでいたときとはまたちょっと気分が違いました。

*2:とっくに独り立ちされていたとは思いますが、しばし成長を見てなかったので。