雅・処

好きなアイドル・俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

オタクは海を越える!(2) 世界を廻った1本のビデオテープ

メーリングリストにもだいぶ慣れてきた頃、一つのアイデアが浮かびました。俳優としては、決して出演作が多いワケではなかったTさんの素顔については、海外ファンにとっては伺い知る手段がかなり限定されていたと思います。自分が見た時の役のイメージを大切にするのはもちろんですが、やはりファンならば普段の性格や話しぶりなどに興味がないはずがない。


半分以上おせっかいに近いのですが、ふと撮り溜めたTV番組をレンタルもどきで海外のファンに見てもらえたらいいな、と思ったのです。そんなことを恐る恐る書き込んでみると案の定・・・というか想像以上の反響がありました。いろんな国の人達がリアクションをしてくれてあっという間に「そりゃもう大騒ぎさ」のイベント状態になりました。


盛り上がるのは嬉しいことですが反面、その反響に戸惑ったのも事実。はてさて、ど素人の私が何ができる?!といろいろ考えてみたものの、予算と時間の関係上、何本ものビデオを世界中に送るなんてことは至極無理なこと。あくまで1本に編集したものを送ろう、と決めて伝えました。


その次に「ではいったいどうやって見てもらう?」とこれまた壁にぶつかってしまったので、「えーい面倒だ、皆に任せた!良い案出してね!」とメーリングリストにアイデア募集を呼びかけました。これが功を奏し、数日間、あらゆるメンバーが手順や経路などをアイデア出しあって 詰めていってくれました。最終的には、1本のビデオを最初の人に送ったら、その人から次の人へと、どんどんと中継してもらうことになったのです。


骨子が決まればあとは早い。気が付けば、アメリカブロック、南太平洋ブロック、アジアブロックとそれぞれの中でリーダーを選出してもらい、彼らから所属するエリアの各メンバーへのルートをそれぞれ決めてもらいました。私自身は最初に一人のリーダーに送るだけで、あとは野となれ山となれ。。。


但し、折角そこまでしてくれた皆の熱意に多少なりとも奮起したのも事実。Tさんのゲスト出演したTV番組はもちろんのこと、CMなども出来る限り無駄なく1本に編集し、我ながらなかなかの自信作に仕上げました。しかし、言葉の通じない国に映像だけではきっと不便だよな〜と思い、無謀にも20頁にわたる英語の翻訳*1をしてワープロ打ちしました。


この時から、(金銭的にはなんの足しにもならない)道楽に情熱を傾けるクセは変わらずかもしれません。いやそれにしても人生で一番、英語を書いた時でしたね。英作文なんてちっとも好きではありませんが、やっぱり「伝えたい!」と熱望する時は、ものすごいパワーが出るもんだな、と自覚した一件でした。

【ビデオテープの帰還】


1本のビデオテープは、その後無事に最初のリーダーの手に渡り、その後、長い旅路の果て約1年後に無事、私の元に帰ってきました。どこかで失われたり、壊れたりしても仕方ないだろうな、と思っていたのですが、無傷で奇跡的な生還?を果たして、再び我が手に戻ってきた時は、さすがに感慨深かったです。


もちろんその間、メーリングリストを通じて「ビデオの旅路」は見も知らない海の向こうのファン達から伝えられ、喜びの声と共にダイレクトに届いていました。更に、全く予想もしなかったのですが、皆からお礼のプレゼントまで送ってもらって、身に余る光栄とはこのこと、という気持ちでした。


プレゼントの中には、シングルマザーで一人息子を育てているお母さんの写真&手紙がありました。またアメリカの音楽業界で働いている女性がインディーズレーベルのサンプルCDを何枚も送ってくれたり、別の人からは民芸品のコイン入れや花の形の香水など、多種多様なものを頂きました。どれも心の篭った素敵な贈り物ばかりで、結局、私の方が沢山のものを貰ってしまったのです。


今では、動画ファイルが薄くて小さなDVDやメモリに入って出回っていますし、ソフトやツールを使って転送で一瞬のうちに映像を送ったり、オークションやダウンロードなどで欲しいものは以前よりも容易く手に入る便利な世の中になっていると思います。


ただ大変だった分だけ、手に入れた時の喜びや感動というのは何物にも変えがたい魅力がありましたし、大切にする気持ちは一層大きかったと思います。モノだけでなくて、国や言葉が違えど人間の真心というのは通じ合うものなんだなあ、と実感した出来事でした。


それにしても今の私、この頃のマメさと無駄な情熱は、随分失われてしまった・・・と懐かしく振り返るのみでございます(笑)。

*1:自己流なのでかなり出来は怪しかったでしょう(汗)。