再演ですが私にとってはお初のこの芝居を、8月の終わりに見てきました。前楽ということで、非常に盛り上がりましたし、多少ストーリーに「何故そうなるの?」的な目茶苦茶さはありましたが、めっぽう楽しい芝居でした。シェイクスピアの喜劇にもこんなに楽しいものがあるのね、と目からウロコ状態。
今回も、男優オンリーの「男達のシェイクスピアシリーズ」ですが、今回は主役に今をときめく小栗旬君と成宮寛貴君というゴールデンコンビ。もうこれだけで大変な目の保養(笑)。更に本来のご贔屓役者である、月川悠貴君も存分に活躍されていて、目のやり場に困る楽しさです。
まずは小栗君、この芝居の最中にもTVの連ドラに出演し、映画の公開や秋の舞台も控えてる・・・というノリにノッテイる役者さん。華奢で細く締まった身体のどこにそんなパワーがあるのか、不思議になります。イズミティ21という劇場は、2階がなく1階後方が反り上がってるため、階段部分がやけに長い。夏の終わりの暑さもあって役者達は汗だくで駆け上がっていきましたが、その中でも小栗君は涼しい顔でこなしていました。見た目以上にタフネスです。
その昔、蜷川さん演出の『ハムレット』を見た時から思っていましたが、小栗君の発声や演技は、藤原竜也君を思い出させます。竜也君ファンの友人も「言われてみれば・・・」と納得してくれましたが、同世代ということもあるのかやけに共通項が多そうな二人。
竜也君がどちらかというと自己陶酔気味に芝居に没頭し、他の介入を許さない演技をする(そこが魅力でもある)とすれば、小栗君はもう少し大らかに周りをちゃんと見渡して演技している気がします。また小顔で、爽やかすぎる目鼻立ちからか、どんなときも小動物のような愛らしさを感じて、嫌な感じを与えないのです。最近では、目に力があり、どこに居ても自信が表情に表れているなあ、と感じます。
【女役の愉しみ方】
対する成宮君のロザリンド。最初の第一声を聞いて、
うーむ、こりゃニューハーフだわ。。。
成宮君の場合は、以前にもTVの中継で『魔界転生』の天草四郎役を見た時に、物凄い違和感を感じたので、ちょっぴり心配だったのです。何せ”美少年”系を期待していた天草四郎が、”ネットリと絡みつく”魔性の女になっていて、成宮君が台詞を話す度にゾゾッと悪寒が走ってしまいました。
もちろん彼も外見は充分にお綺麗なので、女装が似合わないわけではないのですが、何故にそんなに”シナ”を作って媚を売るんだ、君は!手馴れてるんだか(笑)、そうでないんだかよく分かりませんが、成宮君の場合、もう少し一歩引いて自分を客観的に観察したほうがいいのかも・・・。”女役”っていうのは、ただそれっぽく演じるだけでは、逆に粗が見えるものだし。
それでも、愛する小栗オーランドーに男装して近づきながら、なかなか自分と気付いてもらえないもどかしさでキリキリしちゃうサマはとても愛らしく、何度も笑わされました。成宮君の場合は、きっと人柄の素朴さが役に反映しているんだろうなあ、シッカリしてそうで”甘えたさん”な感じ(ちょっと気まぐれっぽいけど)が滲み出てきました。
女役といえばその若さに似合わず、「姫」モード全開で演じるは月川悠貴君。ロザリンドの親友シーリア役として、成宮君と常にペアで舞台に立っていました。こんなに出番が多い!なんて嬉しい限りでしたが、これならもう1回追加すれば良かった、と逆に後悔もあったり。同行の友人にも「女にしか見えなかった。」という誉め言葉をいただき、我がことのように嬉しかったです。
彼の持ち味はどんな時でもマイペース、優雅にゆったりと、落ち着いて。時に恋に我を失うロザリンドをいなしながら、ちょっぴり”アネゴ”モードでひっぱっています。ロザリンドに勢いよく掴まれて、ずれたスカートを余裕の表情でゆっくり直したり、ところどころで、意外に思い切りのよい演技で笑わせたり、舞台役者特有の”間”を生かした演技で酔わせてくれました。
困難なことが起こってもいつも冷静で、泣き言を言わずに突き進んでいく逞しさを持ったシーリア。男装のロザリンドと並ぶと充分にカップルに見えちゃうのが可笑しい。やはり、まだまだ月川君の芳しい姫ぶりと、めっぽう高貴な喋り方には飽きることはないです。
【見るもの全てが楽しい】
他にもオジサンぽいけど(笑)娘役達がとてもラブリーで、気に入っていました。顔の各パーツが大きい迫力の娘役、花組芝居の山下さんの演じるフィービーもなかなか。たとえキモカワイイ系でも、芸がキッチリ生きてる男性の女役は、やっぱりイイです。(単に私がそういうシュミなだけかな?)
出番はちょっとでしたが、二人の少年子役のハーモニーもなかなか綺麗で心が洗われました。そして、セットの「森」は半端でない出来栄え。本物の太陽光のようにライトが煌いていて、異世界に誘ってもらえました。
カーテンコールはノリノリで盛り上がりましたが、盛り上がりついでにウェディングドレスを勢い良くまくり、真っ白なボクサーパンツ(?)を見せてはしゃぐ成宮君が目に焼きついてます。演じている時よりもずっとお茶目で可愛かったですね。
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11/7に「恋の骨折り損」と2枚組でDVDが発売されるそうです。「お気に召すまま」は初演バージョン。月川君はどちらも出演だけに、これは買わねば!
- アーティスト: リベラ,マイケル・ホーンキャッスル,ベン・クローリー,コナー・オドヌゥ,ジェイムス・ヴェライケン,トム・カリー,エドワード・デイ,ジョゼフ・プラット,ジョセフ・サンダース=ワイルド,クリストファー・ロブソン,ジョシュア・マディン
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ラストで流れる美しいメロディは、リベラの「sanctus」。芝居で流れるのを聞いたのは二度目。やはり、人気ですね。
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劇場版です。成宮版天草四郎は、ジュリーほどの大人の色気はありませんが、ちょっと胸ヤケしそうなアブナイ青年ぶりが強烈です。