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雅・処

好きな俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

大番狂わせ ’08世界フィギュア男子

今年の世界選手権フィギュア男子フリーの試合は、生中継ということで久しぶりにドキドキ、心臓に悪いほどの緊張感がありました。最終グループに残った6人の顔ぶれはまさに「オールスター大集合」。いざ並ぶと豪華すぎて圧倒されたほど。


高橋大輔選手に日本のカメラが集中するのは当然のことですが、奥には勇名トラのトマシュ・ベルネルがいることにまたくらくら。。。昨年の覇者ブライアン・ジュベールも1年ぶりに(日本のテレビに)姿を見せてくれましたし、ジェフリー・バトル、ジョニー・ウィア、ステファン・ランビエール・・・もう鼻血もの(笑)です。

【優勝候補 総くずれ】


トップバッターのトマシュは、最初に氷上に立ってアップになったとき、顔がこわばって見えました。そして、得意の4回転の失敗から、ほとんどのジャンプがおりれないほどの乱れよう。私も、初めてこんな彼を見ました。あんなにも安定感のあるジャンプを悠々と飛ぶ人が(しかもSPの調子も良いのに)、これほどまでに動揺するとは!


考えてみればオールスターの最終グループ先頭バッターです。只ならぬ重く張り詰めた空気と大観衆が固唾を呑んで見つめる中に、さすがの彼も「若造ぶり」を露呈してしまったよう。大胆な演技とチャーミングな表情が魅力のトマシュ、でも案外に繊細なハートを持ってたんですね(そこが好き、と再認識)。


いやしかし、ボロボロで立て直せないフリープログラムを見るのは辛い。黒いデビルが彼のカラダ全体をがんじがらめにしているようで、もがいてももがいても取り除けない。本人が一番苦しく、それでも演技をやめることはできない、と地獄の責め苦を味わってるように見えました。キス&クライでも、いつもの元気モリモリぶりは見る影も無く、青ざめてゲッソリし、頭を抱えてて痛々しい。嗚呼、これぞ世界の大舞台の非情さ、恐ろしさよ。。。


重い空気がリンク全体を覆ったままの中、ジョニー・ウィアの滑りで幾分、正常に戻るか、と期待したのですが、高橋大輔ランビエールまで、それは晴れることはありませんでした。大輔君については、自己ベストな演技ができるようテレビの前で手を合わせていたのですが、ジャンプの失敗以上に得意のステップにいつもの元気とキレがなかったのが痛い。


今回のフリープログラムで、こんなに硬くて本領発揮できない大輔君を初めて見ました。コンビネーションの失敗を補うために即席で追加した(?)トリプル&ダブルが裏目に出て逆に得点を失う・・・という状態だったのでよほど、本人も動揺が大きかったのでしょう。丁寧に内訳を説明してくれる本田武史君の解説が切ない。


多少のジャンプは失っても、やはり要所では芸術性を余すところ無く見せてくれるランビエールにしても、得意のスピンが「あれれ、いつもより遅くないですか?」とビックリ*1。大輔君のメダル無しも悲しいけれど、ランビエールのメダル無しは別の意味でショックでした。ファンであるとかないとかより、「どうしても上位に居て欲しい大物」という位置づけだったので。

【古株 復権】


実は、直前の私のシロウト予想では、はからずしも自滅してしまった上記3選手がベスト3に入るのでは、と思っていました。ジュベールは体調不良で永らく表舞台に出てない分、予想がつけにくかったのもあり、大幅に順位を落とすのでは?と思っていましたし。


ジェフリー・バトルやジョニー・ウィアも人気だけでなく、実力ある選手ではありますが、このところ4〜6位あたりにつけていたのもあって、私の中では起爆力とか派手なパフォーマンスには遠い「王子様系」という印象。甘いマスク、フォームやビジュアルの美しいスケーターの印象が強かったからです。ただ、ウィアが王子様系コスチュームに身をつつみつつも、今までよりもずっと凛々しい男っぷりを見せていたのは、ちょっと驚きでした。


荒川静香さんが冷静に分析していた通り、「メダルへの欲を持っていた選手」が負け、「完璧な演技をした選手」が勝った、まさにそれですね。そういう意味では一番メダルに手が届きそうだった選手達が、自他のプレッシャーに負けてしまった。世界選手権にもやはり魔物は住んでいたか。


本命が自滅していく中で、自分の実力を見せつけて高得点を叩き出し、「おいおいイイトコどりですかい?!」と思わず呟いたのがジュベール。とはいえ、今季の彼は健康面も悪かったようですから、あの猛烈な喜びも頷けます。芸術性の面でも、やっぱり”王者はダテじゃない”という感じです。しかし、彼が優勝を意識した矢先、本物の伏兵が登場します。


最終グループの最終滑走を運悪く2年連続で引き当ててしまったジェフリー・バトル。リンクで呼吸を整える彼を見ていて「去年の二の舞は絶対しない」という囁き声が聞こえたような気がしました。自分を信じて、渾身の演技をする姿は神々しさを感じたほどで、バトルのテクニカルの高得点が表示されたとき、不思議と心のどこかで「めでたしめでたし」と思ってしまったのです。


辛酸を舐めて何年も苦しみ闘い続けた選手に、神様は最高の舞台で最高のご褒美を与えた、そんな感じです。もちろん、どの選手も比べられないほど努力しているはず。でもその努力に加えて、過去の苦しい経験で体得したものの有無が、明暗を分けたのかもしれません。(まあコンディションなり、勝負運(滑走順など)もあるとは思いますが。)


そうであればトマシュや大輔君も次回は、本当にこの辛い経験が花開くだろう、と思った次第です。いや、そうでなければ困るんですけど(笑)。実力伯仲・混戦模様の男子フィギュア、ベテラン陣の復活劇もあり、”個性派役者”も揃ってる。まだまだ激動のドラマはつづく・・・と、つくづく思った大会でした。

*1:ファンブログを読んで、ランビエールは怪我していたと知りました。