雅・処

好きなアイドル・俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

人生で一番感動したアニメ『家なき子』

今でも漫画は好きなのですが、アニメとなると小学生の頃見ていた世界名作劇場やスポ根もの、あたりで成長が止まってる私です。現代的で美しいデザインが売り、のアーティスティックな作品や可愛いキャラクターものも多数ありますが、やはり2次元より3次元の映像の方が自分にとっては面白い。それでも大好きだったアニメはあります。


その昔、地元で2年に1度は毎回再放送されていた『アルプスの少女ハイジ』や、ラストシーンがあまりに可哀想過ぎる『フランダースの犬』、ほんのわずかな短編を一大巨編に膨らませた『母を訪ねて三千里』とか。ちょっと毛色は違いますが、そこはかとなく道徳的だった『キャンディキャンディ』のロマンスもいいですよね。今でも、アンソニーという名前は王子様キャラでなければ勝手に使わないで!と思ってしまう(笑)。


そんな沢山の子供向きアニメーションの中で、私が今でも譲れない最高傑作!と思うのは、'77年*1から日本テレビ系で放送された『家なき子』でした。フランスの児童文学でそれまでも、本やアニメ映画などで原作を知っていたのですが、子供心にも耳慣れない世界初の立体アニメというふれこみに、ワクワクして放映を待ったことを覚えています。


このアニメの立体映像というのは、背景と人物がちょうど複数に重なり合った切り絵のような構造でそれらが前・中・後と別々の速度で(反対側にも)動きあうために奥行きに感じられるようになってるのです。肉眼でも80%程度は判別できるが、特殊な黒っぽいセロファンの立体メガネをかけるとそれが100%立体と分かる、という触れ込みでした。


まあ結局のところ、あまり「わあ、すごい立体だ!飛び出て見える」と感動することはなかったのですが(笑)、制作側の途方も無い”意気込み”を感じました。(当時としては破格の制作費だったそうです。)そしてこのアニメの優れたところは、子供向けとは思えないほど充実したストーリーライン、ダイナミックな人物描写と構成の巧みさ、です。

【孤児レミの成長物語】


(物語はあまりにも有名でもはや説明の必要がないでしょうが)シャバノン村で貧しいけれども優しい母と幸せに生活していたレミ少年の元に、酒に溺れ、すさんだ父親が帰ってくるところから始まります。この後、レミは捨て子だったことが分かり、愛する義母と引き離され、旅芸人ビタリスに売られてしまいます。


幼い少年にはあまりにも残酷な仕打ちなのですが、我が身の不幸を嘆く暇もなく、レミはビタリスと果てしない旅に出ることになります。そこで少しずつ、ビタリスの人生教育を受け、”ちっぽけなか弱い少年”から、自分の力で立ちあがる人間へと自立していきます。度重なる試練が彼を襲いますが、歯を食いしばって立ち向かうレミ。苦しみにぶち当たると、ビタリスの


 前へ進めじゃ!(渇)


という強烈な一言がいつも彼を奮い立たせます。人生は辛いことばかり、しかしその中にも心休まるひとときがあります。白鳥号という船に乗って車椅子の一人息子と旅をする美しいミリガン婦人や、ガラは悪いが憎めないバイオリンの天才マチヤ(このキャラクターはホントに大好き!でした。)、口がきけないが優しい村娘リーズなど魅力的な人物によって、新しい愛や友情を知っていくのです。


ビタリスや一緒に芸を披露していた動物との別れのシーンは強烈でした。51話ものの長編アニメの中盤あたりに位置すると思うのですが、ビタリスがどんどん死に近づいていきます。死を美化するのではなく、死の苦しみも悲しみも真正面から逃げずに描いていきます。その容赦ないほどの厳しさときたらすごい。


ビタリスが最後までレミに伝えようとした「何があっても前を向いて生きなければいけない」という苛烈なメッセージ、それこそが全編を通してこの作品を支えてる気がします。そして残されたレミは、悲しみに打ちひしがれながらも仲間である動物達と旅を続けていくのですが、そこでも次々と悲劇は襲いかかります。


「もうどうしてそんなに神様はイジワルなの〜!」と筋は分かってるのに(笑)、また大泣きの連続で、何度も涙腺壊れるか、と思いました。絵柄はまことにもって可愛いらしく綺麗なのですが、コワイくらい人間描写にスキがない。そのため、何度思い起こしても大河ドラマだな、と思わせられます。


日本ではその重厚さのせいかあまりヒットしなかった(?)ようですが、その後、オランダかデンマークで放映され、視聴率80%を記録した、という報道を聞きました。もうだいぶ前から日本製アニメは世界中に輸出されて現地の子供達に愛されているという話を聞きますが、ヨーロッパで生まれた物語を膨らませるだけでなく、どこかしら日本的な道徳心などとドッキングさせて作り出すのがうまいんだろうな、とこのアニメを見ても思います。


このアニメを多感な少年少女時代に見たら、「自殺しよう」なんて軽はずみなことは思わないような気がします。理屈じゃなくて感性にインプットされるんじゃないかな、と。私も打たれ弱く、へこたれ体質ですので、また久しぶりにこのアニメを見返そうかな、と思いました。完全収録DVDも発売されることですし。。。

参考サイト:http://www.kanazawa-bidai.ac.jp/~hangyo/naisei/remi.htm
 → やはりファンが一番熱い!気持ち分かるなあ、と思いながら見ました。



オープニングだけで泣けてくる・・・(笑)。海外バージョンは、全く違うものに改変されているものもありますが、これはオリジナルに近いですね。おじいさんが亡くなった後は、オープニングもマチヤ&リーズバージョンに変わりました。


家なき子 DVD-BOX (期間限定生産)

家なき子 DVD-BOX (期間限定生産)


再販で少し安くなったし、やはり完全保存版は、欲しいなあ〜。いつものオトナ買い(汗)でしょうか。おまけに各国で放送されたオープニングがついてるそうです。YouTubeでも見られるのですが、日本の主題歌をそのまま吹き替えて使う国と、背景も再編集し曲も全く変えるバージョンなんかがあるんですね。

*1:記憶が定かでないのでデータから引っ張りました。地方によって放映時期が多少ズレるかもしれません。