雅・処

好きなアイドル・俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

スタジオライフ『TAMAGOYAKI』観劇記

伝説の・・・初期作品

洞爺湖サミット厳戒態勢と初夏の東京へ行ってきました。JRの駅界隈はどこもかしこも警官だらけ。ゴミ箱が使えないのはともかく、コインロッカー全封鎖にはほとほと参りました(汗)。めげずに恵比寿エコー劇場へ!地図を片手に、迷わないつもりが、しっかり迷ってしまいました・・・またも汗だく。


さて今回の芝居は、スタジオライフの若手公演です。しかも、原作モノを上演することをウリにしているライフが、今の形になる前の過渡期に作られた、倉田さんのオリジナル脚本。10年ぶり6回目の再演ということで、さすがの私も”お初”にお目にかかります、という作品でした。


特にベテラン~中堅どころの役者達が「伝説の・・・作品」と自ら(自分で言うかい?と思いつつ)修飾語を被せるほどの名作、ということでこれは見逃せない!と思っていたのです。タイムトラベラーものというと、『WHITE』にも似てる部分がありましたが、ファンタジーの要素は少なく、観客の郷愁を誘う作品でした。


あらすじ:研究に明け暮れる博士と助手の稲葉。誤ってタイムマシンのスイッチを押し、過去の次元に飛ばされた稲葉を探す博士は、キャバレーの前で従業員の時男、翔、蟻巣の3人に出会う。やがて3人は、トラブルに巻き込まれ、博士の力で現在から過去へと逃げ出す。記憶の奥にしまいこまれていた「一番懐かしく、幸せだった子供時代」の自分達に再会し、忘れていたある衝撃的な出来事を思い出す。


正直、序盤の研究室~キャバレーのシーンまでは、「どうなることやら・・・」と思って見ていました。なんか笑わせようとしてるようなんだけど、笑っていいのか迷うような展開。時男達が過去の世界へタイムトラベルをしていく辺りから、グングン引き込まれていきます。

【こんな子あんな子、そんな先生、もいたよね】


やんちゃなどこにでもいる悪ガキ3人の前に現れたのは、清楚で優しい百合子先生(吉田隆太)の姿。熱血教師、堤先生(冨士亮太)は、厳しいけれどポエマーで、少年達を溢れる愛情で諭し、憎めない存在。同級生でいつもあいそ笑いを浮かべる真似木(大沼亮吉)は、苛められても3人に付いてくる。


リーダー格の時男は、安定感のある奥田君と若さで突っ走る仲原君が、それぞれの個性で光ってました。翔は、かなりご無沙汰だった小林君。声がかれ気味で心配でしたが、人の良さが滲み出ていました。蟻巣は、ツラが良く(笑)要領も良い、というところで三上君と青木君でオーライ。やや三上君の方が似合いかな。


とにかく青春の汗だ!とばかりに、白シャツをぐっしょり濡らしての演技は、本公演ではなかなか見ることができないだけに新鮮です。フレッシュ(新人)については、もぎりや物販で少し見かけたことはありましたが、ちゃんと演技を見るのは初めてに近い。しかし、『WHITE』をこなしてきてるだけに危なげない演技。”子役”でありながら、ちょっとデカイ子が多かったですけど(笑)。


(役者が演じる)子供達の無邪気にふざける姿を見て、自分の子供時代を思い出した人は多かったのではないでしょうか?私もまさにそうです。懐かしくて笑ったり、切なさに泣いたり。良く思い出してみると、私が子供の頃に出会った”新米先生”は、百合子先生のような優しい女性ではなくて、(むしろベテラン先生より)躾に厳しかったんですが、不思議に懐かしい。


きっと想像で描いている女性教師なんでしょうけど、吉田君のたおやかで品のある佇まいにすっかり魅了されてしまいました。まったくもって一人マドンナ状態です。次に非常に気に入ったのは、堤先生。百合子先生に対しては、どこまでも礼儀正しく、照れながらも笑顔を絶やさず、子供達にはちょっと厳しい熱血漢。子供の頃に必ず一人はいたようなリアルな先生像に、冨士君への好感度がアップ!しまくりでした。


いつも裏方?に隠れて、腕力と凄みを利かせる脇役(→出番が少ないのが気の毒だった)が多かった大沼君も、強引で調子の良いマスター役と、弱虫少年・真似木という2役で活躍してくれて、なんだか我が子(おいおい)の成長を見るような嬉しさがありました。

【ノスタルジックな想いに涙する】


「TAMAGOYAKI」という劇タイトルが意味する素朴な暖かいエピソードで、最初に涙が溢れ、後半の遠足のシーンに到っては、ピュアな少年達の優しさや健気さに泣けて仕方ありませんでした。いかにもドラマとしてはありがちな展開なのに、倉田さんのハートフルな台詞に涙の洪水状態。


「この作品は、”思い”がないとできないの」と自ら語っただけあって、倉田さんの”思い”に共鳴した役者達の演技が、見どころいっぱいです。いつも思うんですよね、舞台の上の彼らは、芝居や演技を見せる”役者”で、私達はそれを見てる観客にすぎないのに、いつしかその境目がなくなって、気付くと同じ思いを共有し合う仲間になってる・・・不思議な感覚。


そしてこの「巻き込んでいく感覚」が強い作品ほど、倉田さんの代表作と呼ばれる由縁なんだろうな、と。役者挨拶では石飛さんが登場し、藤原さんと共にベテラン達の”思い出の『TAMAGOYAKI』”*1を聞かせてくれたのですが、まるで我が子の話でも聞かせるように楽しくてたまらないのっ!!という表情でした。役者自身が今でも忘れずに温め続けている役柄&作品は、それ自体が生きてるようなものですね。


また10年くらい経って今の若手達が自分達の『TAMAGOYAKI』を熱く語る日が見られるのでしょうか。本公演でも、こういう勢いで飛ばしまくる作品をやればいいのになあ、なんてちょっと思った公演でした。

*1:笠原さんの百合子先生がすごく美しくて、写真を見て吉田君が嫉妬している(笑)とか。その昔、合宿稽古中、毎夜劇団員が酒盛りをして演劇論など熱く語っていたが、ある時酔った倉田さんが全員を一列に並ばせ朝までダメ出し大会を続け、劇団員が泣き崩れて、次の日の稽古に起きてこなかった事件など。