雅・処

好きな俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

『クライマーズ・ハイ』 美中年達のせめぎ合い

長いとも短いとも言えなくなった自分の人生の中で、いつの間にか”歴史的大事件”と言われるニュースを幾つか静観してきました。中でも、日航機墜落事故は学生だった夏の衝撃的な出来事の一つでした。


あの悲惨すぎる現場空撮の映像にかじりついていたことを、汗ばむ夏に友人と平和真っ只中で語りながら、一方では地獄絵が展開されていた・・・ことを、毎年夏が来る度に思い出させられます。


そんな日航機事故を地方新聞社の視点から描いた映画『クライマーズ・ハイ』が公開されることを、「めざましテレビ」で知りました。かつて、読売新聞を舞台にした『誘拐報道』という映画がとても面白かったことから、新聞社の視点で描いた男臭い骨太の映画というのが、結構好きだと実感したもので二匹目のドジョウを期待して。しかし、見る決め手となったのは、「めざまし」で流れた予告の中の堺雅人*1さんの刺すような瞳、でした。


ドラマで目にするたびにその「微笑の貴公子」*2とでも呼びたくなる涼しい瞳と奥に光る理知的な眼差し、穏やかさの合間に見せる切れ味の鋭い台詞回しなど、このところ見る度に魅力を感じていた役者さんです。そんな堺さんの激昂する演技は、初めて見るもので新鮮に映りました。事故現場に真っ先に駆けつけた記者役とのこと、興味が膨らみます。

【ヤケドしそうに熱い男達】


この映画、単純に日航機墜落のドキュメント物と思っていたのですが、さにあらず、それを題材に群馬の地元新聞社の人間模様がスピーディに描かれていきます。墜落現場の判明〜生存者発見といった山場は、冒頭20分くらいで終わってしまい、ちょっと肩透かしをくらいました。題名に絡んで、山登りのシーンも合間に挟まれており、展開には少し戸惑いもあり。小さなエピソードの積み重ねも多いのでやや散漫、台詞を噛み締める暇があまりありません。


それでも、「全権ディスク」として報道に使命感を燃やす主役・悠木役の堤真一さんには目が離せません。『三丁目の夕日』『地下鉄に乗って』と意外と堤さん出演の映画を見ているのですが、文句ナシにこの映画では圧倒的な迫力を感じました。完璧なヒーローではなく、とても人間臭い男です。


激しい熱意で吼えまくる悠木とは正反対に、積み重ねた経験を武器に壮絶な現場で取材をする佐山役に堺さん。携帯電話のない時代に(無線も支給されず)駆けずり回って電話を借り、締切直前に口伝えで記事を語る佐山。その精魂込めた”現場雑感”は、くだらない社内の足の引っ張り合い?の前に印刷に間に合わず、初日のスクープ記事から落とされます。


ボロボロに汚れたシャツと疲れ切った体を引きずるようにして社に戻った佐山は、その事実を知らされ、悠木へ鋭い批判の目を向けます。これが前述の目の演技。スクリーンに映るその言葉無き怒りの「目」には、心底シビレました。やはり堺雅人はタダモノではない、と実感。


その後も暑苦しいくらい濃い中年・壮年の役者達が汗水たらして、ぶつかり合う様があちこちで見られます。大声で怒鳴りあったり、シニカルに引いてみたり、その駆け引きとえげつなさの具合がサラリーマン社会の縮図でもあるのですが、違うのは彼らの”使命感の強さ”でしょうか。良い記事やどこよりも早いスクープのためなら、敵対関係も一時休戦、気持ちを切り替えて協力し合うこともあり。


この映画、どこか「裏プロジェクトX」(笑)のような物語なのですが、中でも等々力部長(遠藤憲一)と悠木の丁々発止のシーンは、凄かった。とうとう私も美中年に目覚めたか・・・(笑)、いえ実は、美形はあまり登場しません(失礼)。が、どのオトコも一本筋が通ってて、妙にカッコよい。実力派俳優2人の睨み合いや張り詰めた緊張感には、目を奪われました。ヒトクセもフタクセもある新聞社のメンツも印象的。


いやはや実生活では、会社の人間関係なんて煩わしいことこの上ない、とナナメに構えている私が、意外にもこういう濃厚な人間同士のぶつかり合いに惹かれてしまうことが摩訶不思議に思えた映画でした。それにしても堺さんのあの目、もう一度見たい・・・。


クライマーズ・ハイ (文春文庫)

クライマーズ・ハイ (文春文庫)


原作本です。改めて読みたいと思います。


誘拐報道 (新潮文庫)

誘拐報道 (新潮文庫)


こちらは、犯人は被害者(小学生の男の子)の同級生の父親だった、という実話を元にしただけに迫力あります。

*1:まだファンと言えるだけ知ってるわけではありませんが、今最も注目している役者さんは、堺さんと瑛太君かもしれません。

*2:ふと和製ヨン様?!かと思ったり