最近、テレビで『誰も知らない泣ける歌』という番組が放送されています。私も先日見てみたのですが、数曲紹介する合間にスタジオにゲストを呼んで合間にいろいろと感想を聞く、という(よく見かける形式の)番組で、なかなか飽きないで見ることができました。一曲の歌が生まれるまでの再現ドラマなんかもあって、手堅い内容です。
番組では、この「泣ける曲」というテーマでのコンピレーションアルバムも多数発売されている、と紹介していましたが、確かにCD店でその手のアルバムが多数売られております。昔のように全国民が口づさめたような歌謡曲も激減し、世代間を越え、時代を代表するような曲がほとんどなくなってしまった昨今らしいなあ、と思います。
泣ける歌で、私が思い出す曲も結構あるものです。最近でも感動的な歌はいっぱい生まれているのでしょうが、どうしても子ども時代や若かりし頃に出会った歌の印象が強烈です。ちっとも子どもらしからぬ(笑)歌に感動していたものですが、懐かしく今でも変わらず泣ける歌を挙げてみようと思います。(書いてる時にもふと涙してしまって疲れました。)
【学生時代編】
学生時代の淡い恋の思い出。誰にでも少しは思い当たるようなテーマですね。叶わない思い出だからこそ美しい、そして圧倒的に女性から男性への想いを歌ってるものが多いようです。
「思秋期」岩崎宏美
♪青春はこわれもの 愛しても傷つき
青春は忘れもの 過ぎてから気がつく♪
岩崎宏美さんが20歳前に歌っていた曲ですね。タイムラグがあって、歌ってた当時より数年後にLPの中で聞いて良さを実感しました。高校時代の甘酸っぱい初恋と別れを偲んで歌った曲。王道バラードですが、あくまで清らかではかない恋をロマンチックに描いてて切なさを残します。
「卒業」キャンディーズ
♪卒業式を境に二人離れ離れ
今頃不自然 好きと言いだせば・・・♪
当時、大人気だった「みごろ食べごろ笑いごろ」というTV番組の中で、「美しき伝説」というチープな青春ドラマ(別項で紹介)が挿入されていました。その主題歌です。片想いの少女の後悔の歌なのですが、'70年代テイストの生真面目さを感じます。歌詞に「慕情」とか出てくるところもスゴイ(笑)。
キャンディーズ ⇒ id:sugiee:20070203
「春なのに」柏原芳恵/SHOWTA
♪春なのにお別れですか 春なのに涙がこぼれます
春なのに春なのに ため息またひとつ♪
今でも卒業式定番ソングかもしれませんね。リバイバルで聞いてもやっぱりしんみりくる良い曲です。今では花粉症で憂鬱さを運んでくる季節ですが、ピンクの桜と淡い陽だまりが心地良くて、そんな中での別れ&出会いは絵になります。
「友達の詩」中村中
♪手を繋ぐくらいでいい 並んで歩くくらいでいい
それすら危ういから 大切な人は友達くらいでいい♪
中村さんが紅白歌合戦で歌って感銘を受けた曲です。”性同一性障害”という立場で作られた歌詞ということで重みが違って感じられます。但し、友達以上を望むことで失いたくない絆、という意味では、理解できるごく自然な感情だと思います。小難しい歌詞でないのに、充分胸を打ちます。
【母賛歌編】
母は偉大です。意外と男性が”母”を歌うことが多い気がしますね。
「無縁坂」さだまさし(グレープ)
♪運がいいとか悪いとか人は時々口にするけど
そういうことってたしかにあるとあなたを見ててそう思う
忍ぶ忍ばず無縁坂 かみしめるような
ささやかな僕の母の人生♪
リアルタイムで知ったのではなく、「チビッコ歌まね」という番組でピアノ弾き語りで歌う少年によって知った歌。さださん特有のほのぼのとした中にドキっとさせる歌詞が散りばめてあり、苦労をした母親へのいたわりの気持ちをを、ただあるがままに込めているところにグッときます。
♪こんな小春日和の穏やかな日は
もう少し貴方の子どもでいさせてください♪
これまたさださんの歌詞で、百恵ちゃんが歌ってヒット曲になりました。当時出来た曲に「キーが高くて歌いづらい」と語っていた彼女ですが、結婚(引退)間際には情感を込めて大事に歌っていました。もうすぐ嫁ぐ一人娘にどこまでも優しい愛を注ぐ母親、への感謝の歌です。
【恋愛編】
やはり別れ歌は定番ですね。ハッピーな恋愛じゃ泣けませんって(笑)。
♪若かったあの頃 何も怖くなかった
ただ貴方のやさしさが 怖かった♪
「なごり雪」もそうですが、未だにフォークソングのベスト盤には必ずランクインするような人気作です。横丁の風呂屋や三畳一間の下宿など、今や死語に近いような情景がたまらなく郷愁を誘います。長らく東京に住んでいて御茶ノ水駅から神田川をよく眺めていたのですが、今なおこの曲の持つような風情が漂ってきました。
→神田川
♪最後のライトは消さないで せめて拍手が終わるまで
恋をすることさえも許されずに 歌い続けてきた私♪
シングルカットはありませんでしたが、百恵ファンなら忘れることができない曲です。「ミュージックフェア」で、曲の主人公に同化して泣きながら歌う百恵ちゃんの映像が脳裏に焼きついています。ステージで歌う女性歌手が、客席の”愛しい男性”へ歌いかける歌。その男性は、結婚を明日に控え恋人と一緒に、歌手である彼女、を見に来ている・・・。あまりに辛すぎて痛みを覚える歌ですが、そんな劇的な状況で歌う”歌手”という仕事に憧れを抱きました。
「うらみます」中島みゆき
♪うらみますうらみます あんたのこと死ぬまで♪
当時、ネタにまでされた、中島みゆきさんの隠れたヒット曲(?)。愛した男に騙され傷ついた思いが恨みとなってジワジワと侵食していくような怖さがあります。今だったら簡単に殺人事件の一つも起きちゃうかもしれませんが、生きて死ぬまで恨む・・・といういう業の深さが何故かリアルに共感できてしまう。しかし、並みの歌い手なら絶対作れない曲であることは間違い無し!です。
【自然・夢】
ちょっと視点を変えて、愛とはまた違う想いを歌った曲たちです。
♪私の心が空ならば 必ず真白な鳥が舞う
鳥よ 鳥よ 鳥たちよ♪
西田敏行主演「池中玄太80キロ」というドラマで子役時代の杉田かおるさんが歌った挿入歌です。ちょっと前にはお騒がせ女優として華麗に?復活を遂げた杉田さんのおかげで、この代表曲がリバイバル発売された時は嬉しかったですね〜。彼女の毒舌は強烈ですが、相対して純白で清らかで澄み切ったこの歌は決して汚されることなく、今でも優しく胸に響いてきます。素朴で飾らない歌声がまたピッタリ合ってます。
「翼をください」赤い鳥
♪いま私の願いごとが叶うならば翼が欲しい♪
すっかり文部省唱歌のようにコーラスで歌われることが多くなった曲。私も小学生の時、授業で歌いました。今は、合唱のコンサートでたまに聞きますが、不覚にも涙が出てきてしまうんで困ります。誰しも大空を鳥のように飛びたい、と願うんじゃないでしょうか。一瞬で子どもに帰る歌ですね。
♪時はめぐり また夏が来て あの日とおなじ七夕祭り
葉ずれさやけき杜の都 あの人はもういない♪
この曲が全国的にヒットする直前、夏の七夕祭りで何度も街中でリフレインされていました。一般公募で選ばれた歌詞に宗さんがメロディーをつけた曲ですが、これほどまでに文学的な香りのする完成度の高い歌詞を他に知りません。そして、実際の仙台がこんなに美しく輝かしい街だとは思わないものの、やはり故郷への感慨を強く感じて感動させられます。
【生きざま編】
「人生いろいろ」島倉千代子
♪人生いろいろ 男もいろいろ 女だっていろいろ咲き乱れるの♪
いろいろなトラブルを乗り越えてきた島倉さんが、ミドルテンポの曲を笑顔で歌って大ヒットした曲。歳を重ねても可愛らしく女の色気も漂わせるおチヨさんが一番輝いて見える曲です。「人生いろいろ」というフレーズに、彼女特有の深みを感じさせてジーンときます。
「愛しき日々」堀内孝雄
♪生まじめすぎたまっすぐな愛 不器用者と笑いますか
もう少し時がたおやかに過ぎたなら♪
日本テレビ系「白虎隊」の主題歌で大ヒットした曲です。戊辰戦争の最中、その短い命を散らせた悲劇の少年達、白虎隊の運命を投影したような歌詞がドラマと相まって泣かせられまくりました。
「シェリー」尾崎豊
♪シェリー 俺はうまく歌えているか
俺はうまく笑えているか♪
尾崎のヒットソングも沢山歌い継がれていますが、この曲は尾崎以外になかなか歌いこなせないと思います。卑屈なぐらい自分への不安を綴っているのですが、あがいたり葛藤したりする様を赤裸々に書いているからこそ、強く胸に響いてくるのだろうと思いました。
♪ナンバー1にならなくてもいい もともと特別なonly One♪
締めはSMAP。この歌は人生の応援歌で癒やし効果も絶大です。競争社会に疲れ、みんな誰かに「ナンバー1にならなくてもいい」と言われたいんじゃないかな、と思いました。単に逃げてるだけ、という非難もありますが、休んだって逃げたっていいじゃん!ただ頑張ることだけがエライわけじゃない、と私的には思うのです。