雅・処

好きなアイドル・俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

スタジオライフ ’10『トーマの心臓』観劇記

甘美なる夢の世界

早いもので、劇団スタジオライフの「トーマの心臓」の東京公演ももう千秋楽とのこと。私が見たのは公演が始まってまもない6,7日のことですから、すでに2週間も前になります。今月に入って、猛烈な仕事の忙しさで頭が”ウニ”状態だったため、全然感想をまとめることができませんでした。「本当に見てきたのか?」と思ってしまうほど、夢のようなひとときでした。


見る前に古くからのライファー友と会って、「今回のトーマはどう?」という話になりました。私の初トーマは、10年前の連鎖公演。あまりの衝撃にスタジオライフに大ハマリ、挙句は通いすぎてダウン、点滴を打ってまで駆けつけたというおバカな思い出があります。以来、再演は4回目を迎え、新鮮味はやや薄れたものの、劇団の一番の代表作だけに興味は尽きません。


一番違いがあったのは、カットされた台詞が多い、ということでした。今や役者よりも台詞を覚えてるんじゃないか?(笑)という私達。上演時間を短くするためか削られた台詞がかなりあり、ときにはその場面が一体何なのか分からなくなってました。*1とりわけ冒頭の舎監室、芳樹ユーリと曽世オスカーがまるで早口言葉のように台詞を捲し上げてて、「もうちょっと間をもたせて!」と言いたくなりました。


かといってフェンシングのシーンなどは無駄に長くなってるし。うーん、もう少し時間調整を考えて欲しいかな。一番ショックだったのは、中盤の見せどころで、レトヴィの朗読のシーンがカットされていたところ。歴代レトヴィ(石飛さん、さん)のファンだっただけにこれだけは復活を強く望みたいです。この朗読のシーンは、重要な泣きどころなんですから。。。


観客の中には、意外と「トーマ」を初めて見られる方が多いようで、客席から聞こえてくる会話が面白かったですね。原作が有名なだけに”淡い期待感”のようなものが感じられて、こちらもワクワクしてきました。舞台セットは、基本的な構造は変わらず。さすがに数多い再演を繰り返してきただけあって、展開にも無駄がありません。階段に初めて踊り場が出来ていたのが「おおっ」と思ったところでした(笑)。


ど真ん中に位置する図書館と菩提樹はどちらも大好きで、現れるたびに「またここに帰ってきた」という気分に浸れます。物販の「ルネッサンスヒューマニズム」のレプリカ(システム手帳)が売っており、マニアックだけれど、めちゃめちゃ”ツボ”な商品でした。いっそ本だったら尚のこと嬉しかったです。


劇中で使用された本の表紙は、林さんが皮にタイトルを刻印して作った代物。トーマの手紙も、彼の自筆で流麗な文字で書かれてます。このコピーがパンフレットに挟まっていたりして、胸が温まりました。

【キャストの感想1:ユーリ】


もはや私にとっては、誰が演じても「トーマの心臓」は、泣ける名作。音楽と美しい台詞、それだけで体が先り見逃しましたが(汗)、どうやらBL特集の一環ということで、いかにもなシーンばかり取り上げられていたそうな。


 トーマの心臓」をBLって言われたら、いくら私でも怒ります。


キスシーンばかり(?)取り上げられたり、イロモノ扱いされることには諦めもありますが、作品を読みもせず、知ったような顔で「BLでしょ」と言われると、どうにも抵抗感があります。別にBLは嫌いじゃないけど、まだそういう言葉も生まれてない時代ですからねえ、「少年愛」って言って欲しいものです。それに少年達の、愛とさえハッキリ定義できないような相手に向かう気持ちであったり、背後の深い家族愛も投影されているだけに残念です。


劇団員達がずっと家族愛について言及してきたのは、そういう誤解や偏見の目を向けられることが多かったかもしれません。実際、よくよく考えてみれば泣かせどころは、家族愛の部分がすごく多くて、トーマの”無償の愛”についてはいつもいつも確実に”分かる”わけではないのです。役者の演技だけじゃなくて、自分の精神状態もあるので、見えざる神の手か何かがあったとき、啓示のように降り注ぎます。


そして不定期に、そういう神々しい瞬間があるからこそ、トーマはやめられません。私はおそらく、純真で優しい人ではないけれど、この客席に座ってる瞬間だけは、浄化され一番素直で無垢な心でいられるだろう・・・と思ったり。


今、知ったのですが、近々「トーマの心臓」がNHK-BSで放映される可能性があるようです。TV収録が入ってたらしく、日付を見るとBlauチームのほうですね。Grauチームでないのがちょっと残念。10年前にも同じNHK-BSで放映されただけに、期待大です。「訪問者」も残して欲しいですが・・・。


トーマの心臓 (小学館叢書)

トーマの心臓 (小学館叢書)

文庫も愛蔵版も出てますが、この表紙の愛蔵本が一番気に入ってます。

*1:例えば、5人組が休日に外出許可をもらい、女の子に会うために精一杯のオシャレをしてるシーンとか