先月末よりやっと地元でも上映が始まったゲキシネ『蛮幽鬼』。これまた少々遠いシネコンで、日に1回だけの上映で、めぐり会えたね、な気分。ゲキシネ体験は『黒執事』に続き2度目ですが、こういう催しは今後もどんどん増えていきそうです。*1
『蛮幽鬼』は、劇団新感線の芝居です。私は残念ながらナマの舞台は一度も見たことがありませんが、素人演劇ファンにもその名はとどろいていました。この作品の上演は昨年。ただでさえ超人気の劇団なのに、名だたる有名俳優も参加してコラボる舞台が多く、チラシを見るたびに毎回派手な怖メークでおどろおどろしさとか殺気を感じさせます。今回は、単純に言えば、大復讐劇。
あらすじ:主人公伊達土門(上川隆也)は、同僚2人の悪巧みにより、人殺しという無実の罪を押し付けられ監獄島に10年間も投獄される。土門は、鬼のような形相になりながらも激しい復讐心をたぎらせているが、地底に閉じ込められたサジ(堺雅人)という悪魔のように強い暗殺者の助けで脱獄を成功。やがて自分を陥れた同僚と、自分を裏切った許婚・美古都(稲森いずみ)への復讐をはかるが、そこには想像を絶する真実が隠されていた・・・。
「モンテ・クリスト伯」という有名な作品をモチーフにしているだけあって、ギリシア悲劇とかシェークスピアに通じるような悲劇的な色彩のある物語でした。暗そうだなあ、と予想はしていたのですが、芝居が始まると最後の最後まで全く飽きる瞬間がない、一大スペクタクル巨編に感心しきり。想像以上の面白さでした。映像も凝ってて、舞台空間というハコの中の動きをチープさを全く感じさせないアングルで撮影しているし、衣装の美しさも表情の移ろいも見事にフィルムに焼き付けてました。
また”ゲキシネ”が作り出す巨大スクリーンと大音響で、ドアップの応酬(笑)に「こりゃあ、ナマの舞台より面白いかも。」とさえ思わされました。まあ、なんだかんだ言って、私は堺雅人さんのサジがお目当てだったのですが、他の出演者にも好感持ちまくりでした。相変わらず存在だけで可笑しい山内圭哉さんが懐かしかったし、すっかり青年に成長した早乙女太一君の美剣士ぶりとか、目の保養の連続。ラストの見せ場では、クールな?稲森さんもこんな演技が出来るんだ〜とビックリしたり。
【サジが怖いけど素敵で】
ゲキシネを見る前は、この芝居も堺さん演ずるサジが重要人物であるということは、うすうす知っておりましたが、実は上川さんとW主演の扱いだということにエンドロールで気付きました。ずっと出っ放しではないのですが、ちょいちょい出てくるときの満面の笑みが怖い、空恐ろしい、気持ち悪い(笑)。
最初は、「舞台の堺さんだ、わーいわーい」と喜んでいたものの、サジが登場する度に人が死ぬ、という展開に「いやまだ来ないで、来ちゃダメよ!」という気になってしまって、密かに葛藤状態。堺さんと早乙女君との闘いなんて、どっちを見て応援して良いか分からなくなってましたよ。それでいて激しい殺陣シーンを見ながら、「”体育2”の堺さんが、全身湿布だらけになりながら習得した動きなんだなあ。」(by上川さん)と感慨深くなる瞬間も結構ありました。
全編笑いっぱなしのサジですが、土門に向けるいたずらっ子のような薄笑いと時折キラッと光る”邪悪”な微笑みがとてもイケてました。堺雅人の冷酷・残忍極まりない面の数々、これは笑顔爆弾に勝るとも劣らない武器です。少なくとも私はたまらなく好き、です。華麗な太刀裁き?よりも実は1番の悩殺のポイントはそこでしたね。惜春爺に仕掛けた時のサジの表情が一番忘れられません。
ゲキシネ用パンフレットも1000円にて買いました。キャストインタビューは、ゲキシネを実際に見ての感想で、あんだけ”濃い”芝居を演じる自分を大画面で見せられて、戸惑ったり、率直に凄い、と感じたりする役者達のコメントが面白かったです。堺さんはやはり殺陣の習得に苦労したことを実感させる内容でした。彼が根っからの役者でなければ、この試練を超えるのは困難だったでしょうね。
ゲキシネで見られて本当に良かった、そんな作品です。3時間半近いお芝居なので、DVD視聴だったらこんなに集中して見られないかもしれません。ストーリーの救いの無さは見ていて痛々しく切ないだけに、「大好き!」「何度でも見たい!」っていうのとは違いますね。サジのところだけはリフレインしたいけど、なんか憎々しい役だからなあ(笑)・・・。
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