雅・処

好きな俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

演ずる人 『Le Tempsで琉譚~ものがたり~』

3/3の『Le Tempsで琉譚 ~ものがたり~』で、林勇輔さんのお店でのソロライブを初めて見ることが出来ました。小さな芝居小屋では何度かパフォーマンスを見てますが、30人に満たない、人が通るのもやっとの狭い空間で、後ろ髪から流れる汗までくっきり見えるほどの近さで演技を見るというのは、初めての体験でした。


林氏オリジナルのショートストーリーを2編と歌を3曲*1ほどご披露してもらいました。心の無い美少女と醜い化け物の恋の話。その少女の流した涙から生まれた少年とちょうちょの話。劇団の世界とは、ちょっとかけ離れたエログロっぽい内容で、一瞬ウツツに戻った瞬間に「ひとまずここまで、気分悪くなった方いらっしゃいません?出るなら今が最後のチャンスですよ。(爆笑)」「さすが皆様、大人でいらっしゃる。」とたたみかける絶妙さ。


ストーリーの内容そのものについては、あまり言及できません。それが上手いのか下手なのか、文芸センスに乏しい私には分かりません。だから、彼の醸し出すカオスのような世界観を胸いっぱい吸い込んで、「ああ、彼はこういうことがずっとやりたかったのか。」なんておぼろげに分かった気になっていました。ただ一人の”演じる人”になっている林氏を見られること、の幸せを感じておりました。


途中、用意していた白バラの頭の部分が飛んでいってしまったり小さなハプニングがあったのですが、それにも動ぜずラストまで演じきって、「やはり役者というのはすごいなあ」と単純に感動してしまいました。自分のファンがほとんどとはいえ、見知らぬ人達の中で歌ったり演じたり、というのは、極度のアガリ症の自分には信じがたい技能ですもの。


ピアノ伴奏のおおくぼけいさんにも驚きましたね。出てきた時から、「もしや”彼”かな?そのミチのお方?」と思ったのですが、話をするまでは、まるでお人形のような中性的な美貌と時折浮かぶアルカイックスマイルに目が入ってしまいました。この方も宇野亜喜良さんのイラストで埋め尽くされたお店に、異界の空間を作り上げる手助けをしていました。


本当にそこは地上とは隔離された空間でした。林氏がかけた魔法にすっかり魂を奪われた女人達、という秘密の隠れ家のような・・・。そういえば、この日の演目で披露されたお話は、一見エログロな話に見えるけれど、ピュアな魂とかそういう乙女チックな部分も同時に感じさせます。


男のギラギラした欲望を言葉やリアクションに乗せていること、チャップリンの時代のようなシックな風貌に髭面という出で立ちで現れて、日ごろの中性的な役どころから離れたところにいるようであっても、演じてる本質ってそうは変わらないものなんだな、と実感できました。


単純に嫌じゃない、ずっと見ていても飽きないし、役者としても普通の男としても、その堺がどこにあっても、たとえ翻弄され続けても「ずっとファンでいられるかも」となんとなく共鳴した部分があった夜でした。決してオンリーワンと追っかけていたわけではないし、気まぐれで好き勝手なことばっかり吐いてる私ですが、そりゃなんだかんだで10年以上は見続けてるわけですから、やっぱり演者としての彼には魅了されているんでしょう。


完成した圧倒的な役者としてではなくて、揺れ動いてて、実体が掴みきれないミステリアス(というか、ぐっちゃぐちゃな(笑))な貴方がいいんです。今はそれがいい。それでいい。なんて思いながら、夜道をトコトコと歩いてきました。あの新宿の夜景と気分をきっと一生忘れないと思います。

*1:ラストの曲は、「薔薇色の人生」だったかな?