雅・処

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スタジオライフ『LILIES ’13』観劇記(3)

キャスト考(若者編)

「LILIES」も終盤に差し掛かって、役者の熱いコメントを公式サイトで読むとまた見たくなってきます。きっとこの数日間でも、皆どんどん進化していってるんでしょうね。私が見たのは、11月末の時点ですので、多少の時差があります。その分、ちょっとキツめの感想もありますので、お許し下さい。まずは、若者編。


今回は、Jr.9以下の若手がメインどころに参加しておりました。配役を聞いた当初はどうなることか・・・と不安いっぱいでした。そしてその予想が的中した部分と、良い意味で裏切られた部分が拮抗していて、素直に良かった、と味わえない複雑な印象です。正直言えば、「LILIES」は、初演・再演の時のように中堅以上のメンバー構成で見たい作品だと一層実感してしまいました。


今回、あの重厚な世界へ投げ出された若手・新人の役者達には、先輩達の公演が一巡し、芝居の内容をちゃんと理解してから今の役に巡り逢えたならかなり違っていただろうな、と思いました。ただ劇団の今後を考えたところ、もうそろそろ若手に勢いが欲しいところではあるわけで、その試金石になる公演というか、スパルタ教育(笑)の一貫かも、とさえ感じました。

【若手起用は、まさに悲喜こもごも】


もともと「LILIES」は、あまりにも完成度の高い戯曲なので、生半可な覚悟では太刀打ちできない作品の筈なんです。だからこそ過去に一度でも参加して”地獄を見ている”役者達は意気込みが違いますし、紛れもなく劇団の代表作だけに、この独特の世界観を初体験する若手達にはまだまだハードルが高かったと感じました。


そして、力量不足が如実に出てしまったのが、シモン役の鈴木翔音君。すいません、最初から地雷を踏んでしまいました(汗)。いや、彼の演技や外見が好きとか嫌いとかの好みの以前に、シモン役を自分のものにできていないまま舞台に上がってしまったなあ、というのが、客席に伝わってしまっていたので、あまりにも痛々しくて見ていて辛かったのです。


「シモンは、もう下手でも全身全霊でぶつかっていけ!」「とにかくヴァリエを愛せ!」なんです。そこが肝、なのですが、ヴァリエへの愛がほとんど伝わってこなかった、ところであちゃ~な感じ。おそらく全てにおいて経験不足で、頭でなんとか理解しようとしても、どうやって演技していいのかまだ分からないのでしょう。相手が大物すぎて料理しきれないまま、ジタバタしてるところに、周りが輪をかけて演技巧者揃いで、誤魔化しきれない、という残酷さ。


翔音君については、あまりまだ良く知りませんが、とても真面目で優等生な印象です。立ってるだけで清々しい青年*1ですし、意外と劇団内にいそうでいない貴重なキャラクターでもあるので、今後の成長を祈るまでですが、本当に今回は、選ばれた時が悪かった、としか言えません。千秋楽まで、どこまで彼はヴァリエを愛せるのか・・・。


むしろ今回は、順当に堀川君がシモンで良かったのではないかな・・・と思ったり。同期コンビに拘っての話題作りは分かりますが、残念ながら時期尚早ではないかと。


ヴァリエ役の藤森陽太君については、よく頑張ったね、とギリギリ甘めの及第点。ビジュアル的な美しさもあって*2、西洋絵画から抜け出てきたような感じでした。とりわけ伯爵夫人役、楢原さんの前では、泣き顔の健気さが際立ちましたね。綺麗な顔立ちと飛びぬけて白い肌も強みでした。(う~ん、でも何かやっぱり足りないんだよなあ。)


この2人に不足しているのは、やはり経験と演技力、そして想像力なんでしょうね。(客演組はともかくとして)歴代のシモンとヴァリエのコンビは、ある程度キャリアを積んでから演じていました。2年やそこらの経験では、余程のことがない限り難しいと思います。こんな激しい激情は、同性愛という特殊な関係性でなく、たとえ男女間であっても現代ではなかなか体験することはできないでしょうし。数年後、是非リベンジをして欲しいです。

【さすがは先輩!】


対するSチームの仲原シモン&松村ヴァリエ。仲原君にとって2度目となる今回のシモンには、本当に驚かされました。想像以上に熱い、まさに地獄の炎が身体の中で燃えたぎってるようなシモン。こういうシモン像も、新鮮でしたね。どちらかというと高根シモンや岩崎シモンの路線に近いかもしれないですけど、彼らよりもエネルギー量が多く、青春まっただ中のようなとにかく熱い演技でした。


松村君は、その熱い仲原シモンを頑張ってどうにかこうにか受けとめていましたね。誰も止められない(笑)仲原シモンでしたから、無理もないですけど。ヴァリエという役も、ただ単純な”ウケ”タイプではないだけに、実はかなり難しいんです。13歳の時から、いろんな差別や偏見と闘い働いていた少年。夢の世界に籠って演じ続けている母親を文字通り「食わせていた」わけですから、芯はシモン以上に強いのでしょう。


初演・再演でヴァリエを演じた山本芳樹君がこのあたりの演じ分けが素晴らしかったんです。前回公演でヴァリエを演じた松本慎也君も、やはり細い体に絶対に譲らないほどの神々しい強さを感じさせてくれました。松村君のヴァリエはとても素直で自然体で演じていた感じです。なので、もう少し強い個性が感じられたらもっと良くなっただろうなあ、と思いました。仲原シモン×松本ヴァリエだったら、もっと愛の物語に没頭できだろう、と思いました。


もう一人、Eチームのヴァリエは、新人の久保君。今まで全く未見のフレッシュなので興味ありましたが、評判はどうだったのでしょうか。とにかく、今回はシモンとヴァリエの物語部分が弱かった気がして、2人の愛のシーンが好きな私には残念な出来でした。いっそ新人公演と切り離して、数回だけで良かったんではないでしょうか。

【ビロドー対決、3人共、大当たり!】


シモン&ヴァリエとの対比で、目を瞠ったのはビロドー役の鈴木智君、宇佐見輝君、千葉健玖君。この三者三様がものすごく面白く、今回最大の見どころでした。とりわけ”すーさん”こと智久君のビロドーは、衝撃的な完成度で感動を覚えました。こんなにできる役者だったのか!と「カリオストロ伯爵夫人」に続いて、ただ脱帽でした。


まず台詞回しがよどみなく、とても軽やか。そして、空間に気持ち良く響く明瞭な声。エキセントリックに走りがちなビロドー少年を、どこにでもいそうな身近な感じでありながら、”ストーカーチックなやばさ”(笑)も滲ませて、鮮烈な印象を残しました。今回、司教となった老ビロドーがかなり比重が高かった分、少年ビロドーの存在感も大きくなっていたのですが、ビロドー役については熟練と言っていい船戸さんに負けない迫力。ホント、只者ではない。


ダンスも得意なだけあって身体の使い方も軽やかで無駄がないし、以前、とあるイベントでお話したときは、「どこか醒めてて、イマドキのお兄ちゃんだなあ・・・。」としか思わなかったのが嘘のような役への真剣さ。舞台の上では豹変するんですね。これからのすーさんはホント目が離せませんよ。ライファーとしての、怒涛の予感があります。きっとこの数年でかなりの重要人物になってくると思います。


そして、ご贔屓の宇佐見君。最近はなかなかの人気ぶりだそう。今回も手堅い演技をしてくれました。宇佐見君のビロドーは、身近にいる、ちょっと癇癪の強い少年という感じ。「どこかで間違っちゃったんだろうな、この子」と同情を寄せてしまいそうになりました。諸先輩方にも愛される素朴さやまっすぐさが、憎々しいビロドー役にも微かにまとわりついて漂ってる感じがしました。


それにしても今回物販で初めて間近で宇佐見君を見たのですが、想像以上に可憐な美少年でたじろぎました。ひょっとして、ヴァリエも充分出来たのではないかしら?というのは、ファンの贔屓目なんですけど(笑)。次回作では、ヒロイン?のようですし、女役としても期待の進化を見せてくれそうです。しばらくは宇佐見君見たさにライフに通いそうです。


最後に見たのがMチームの千葉ビロドー。前述の二人に比べて入団して半年というキャリアで、かなり荒削り感はありましたが、ビロドーと一体化してるかのようにのめり込んだ切迫した表情に気圧されました。がんばりが伝わってくるのです。舞台を見ていて、顔立ちが退団した舟見君に似てるなあ、と何度も思いました。まだ新人でありながらも、ライフ役者としての独特の個性を感じました。藤原さんがスカウト(?)しただけのことはありますね。


最後になりましたが、Jr.9にも少し触れておきます。堀川ディアンヌ、色気は足りなかったけど(汗)、なかなか良かったです。変に考えすぎない演技がかえって好感もてました。曽世さんや牧島くんとトリプルですから、分が悪いんですけど、ちゃんと堀川君の魅力は出ていたと思います。そして原田君のユー男爵、出番は決して多くありませんが、落ち着いた大人の男性をちゃんと演じられるようになっていて、想像以上に良かったです。


ミシェル神父役の神野君。今回は、ちょっと役作りに迷ってる感じでしたね。直球の役どころが多かったので、この役はちょっととっつきにくかったのかもしれません。Wの藤波君の神父も新人らしからぬ落ち着きぶりが印象的で悪くはないのですが、やっぱりもうちょっと個性(アク)が・・・欲しいかな。


ああ、想像以上に長くなってしまいました。ちょこっとトークショーにも触れたかったのですが、次回に廻します。かなり辛口の感想もあり、ファンの方にはすいません。まあ、あくまで今回の演目に関する一過性の感想ですので、今後いくらでもリベンジのチャンス有ります(→何度も経験済)ので、お気になさらずに・・・お願いしたいです。

*1:むしろ役者よりも会社員のほうが似合う印象ですね。

*2:本当にハーフみたいな顔立ちでヴァリエ役には似合っていましたね。