雅・処

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スタジオライフ『LILIES ’13』観劇記(4)

印象に残った役者(ベテラン編)

前回の若者編に比べるとベテラン陣の感想は、ややシンプルになりそうです。長年演技を見てるので、良くも悪くも慣れてしまっているので驚きが少ない、といいますか。それだけに特に印象に残った部分を列記します。カッコ内は、チーム名です。

【見ごたえあった、女優対決】


まずは、曽世ディアンヌ(S)。今回、最も印象に残りました。もう一度、曽世リディアンヌに会いたい!と思ったほど、ホントに素敵で驚きの存在感でした。曽世さんの女役は、私の中では格別の存在です。それこそ「SONS」のマギーの頃から大好きで、'10年の「トーマの心臓」の時のユーリ母・シェリーにも感嘆しました。


「LILIES」再演の曽世さんの伯爵夫人も見てますが、伯爵夫人はやはりライフ屈指の名女優、楢原さん&さんという双璧がいるだけに、ビジュアル面は良かったものの、やや物足りなく思っていました。本人の持ち味からしても、同じ女性役ならリディアンヌのほうがピッタリの予感。しかし、フタを開けてみると、予想と全然違って、とても自然体で繊細さも持ち合わせている女性に仕上がっていました。


トークショーでも自らが語られてましたが、「台本を読んでみるとリディアンヌは、エキセントリックな女性というわけではなく、本当に”普通の女性”なんだなあ、という感じでしたね。」だからこそ、シモンに裏切られた曽世リディアンヌの怒りや悲しみがスッと気持ちに入ってきたのです。客席で見ていながら、とても共感できる、お友達になれそうな(笑)リディアンヌでした。こんなにも魅力的なリディを作り出してくれて嬉しかったです。


そして、伝説の楢原伯爵夫人(M)が満を持しての復活。幾分、歳を重ねてきた年輪のようなものを感じさせましたが、演技のほうは、10年のブランクを感じさせないほどの素晴らしさ。もう楢原伯爵夫人が登場した時から、言葉を発する度に、ヴァーっと過去の思い出が甦って大変でした。まるで高貴な音楽のような耳障りの良いセリフ回し。


ヴァリエ詩の朗読シーンなんて、楢原さんの声が響いただけで涙が止まらず。今回は、ヴァリエが若返った分、実の””のような包容力で受け止めているのが感じられました。きっとこの演技に誘われて、松村ヴァリエや藤森ヴァリエが怒涛の涙を流せたのではないか、とすら思いました。劇団を離れた数年間に、味わったいろいろな体験が投影されて役の深みに繋がっていた気がします。


私としては、曽世リディアンヌVS楢原伯爵夫人という組み合わせで、見たかったです。これぞ名女優対決となったでしょうし、この2人だったら、もう何度でも見たいです。女役ついで、と言ってはなんですが、青木伯爵夫人にも、新鮮な驚きがありました。

【伸びしろのある女優陣】


少年ビロドー役、老ビロドー役で「LILIES」全出演をしている青木君の初めての伯爵夫人役。少女のまま大人になってしまったような、夢の世界に生きているような女性像で果敢に役作りをしていて感慨深かったです。過去に、あらゆる役者の演じた伯爵夫人を見ているのに、ちゃんと自分独自のイメージを作り上げているところに脱帽。


とりわけ「泣くのはおよしなさい、自分の運命を嘆くのはやめて。」「演じるのです、ヴァリエ、演じなさい!」の強い信念を感じさせる台詞が圧巻でした。青木君は、入団したての頃からスタジオライフが育て上げた、”スタジオライフの申し子”的な役者*1なので、今でも驚かされることが多いです。どの役者よりも感性で役を作り上げてるような、独特のキレが半端ないです。


そして牧島君のリディアンヌ。登場した時から、「牧島君にしては、らしくないなあ。ちょっと緊張しているのかな?」と、どことなく自信なさげで揺らいでるように感じました。リディアンヌが、ごく普通の”優しくて女らしい女性”に見えてくるんです。それが牧島君の持ってるリディアンヌ像かな、と思いつつも、まだイメージが確立しきっていないところが見え隠れして、台詞を語る口元にも緊張が見えてました。


牧島君にとっても「LILIES」は、スタジオライフに入団するきっかけとなった作品であるだけに、まっさらな思いで演じるのがかえって難しかったのかもしれませんね。「普段は、自分とかけ離れているだけに、女役のほうが演じやすい。男役だと自分を通してしまって、かえって悩んでしまう。」というマッキー。彼のブログにもありましたが、今回は、かなり役作りに試行錯誤、悩み抜いていたようです。


青木君も牧島君も、今回の公演ではまだ完璧に自分の役を真っ当した、とは言えないかもしれません。迷い闘い葛藤しながら、舞台で出来る限りの姿を見せている、それが尊く美しい一瞬だなあ、と感じました。

【個性が際立つ男優陣】


老シモン役では、倉本さん(E)、笠原さん(S)、芳樹君(M)という布陣。意外と、と言ったら失礼ですが、倉本シモンに一番泣かされました。「俺の愛すべき親父さんだ。」という言葉がピッタリで、愛してるが故の処置により、シモンに恨まれる、というやるせなさが最高。さすがは年の功、というか、倉本さんの芝居はいつでも、独特の魂が宿っていて好きです。


笠原さんのシモンは、お手本通りというか、ダンディでした。若くて魅力的だったシモンがそのまま歳をとった、というイメージ。「LILIES」に初参加というのが嘘のように馴染んでおりましたが、私の中では、あまりインパクトは強くありませんでした。見ていると、石飛シモンが、時折甦ってきてふっと寂しくなったり。


癖の強いキャラとなったのは、芳樹君。もともと、芳樹君の老け役は苦手なので、今回もごめんなさい、という感じでした。無理に声をつぶしたような発声をするのが耳障りで、好きではないんです。あと10年くらい歳をとったら印象が変わるかもしれませんが、まだひょっとしたら青年ヴァリエも演じられるんじゃないか(笑)くらいの若々しさが残っているので、まだ老シモンは早すぎる感じでした。


バスタブシーンでは身をよじって、思い出に苦しんでいた芳樹シモン。バスタブシーンは、私も思い入れがあるので、なんか冷静に見られない感じでした。スポットライトを浴びてお湯につかっているシモン&ヴァリエに、過去の芳樹&高根コンビがオーバーラップして、なんか前を見ても後ろを見ても芳樹君、みたいな。まあ配役はどうであれ、全4回に出演しているのは芳樹君は、紛れもなく「LILIES役者」であり、ずっと居て欲しい、と思いましたね。


老ビロドー役に、藤原さん(E)、船戸さん(S)、曽世さん(M)。藤原さんと船戸さんは、もう前回までで、ある程度、役が固まっているので安心して見ていられました。もう個人的に船戸さんのビロドー神父は鉄板で、悲劇の張本人と憎むどころか、なんかそこにいるだけで嬉しい、妙に好き(笑)、みたいな。藤原さんも、「LILIES」初演から、この芝居を愛して下さっているのが分かるだけに、身内みたいな気分ですし。


その分、曽世さんのビロドー神父は新鮮でしたね。「君を愛するがゆえに君の心をこなごなに壊してしまいたかった。」の愛憎が最も突き刺さってきて、さすが、と感動を覚えました。一番、シモンに執着していそうな(笑)ビロドー神父で、なぜここまでのことをしてシモンを陥れたか、すっと理解が進むんです。老いてなお、ビロドーが未だに強くシモンを求め続け愛しているのでは・・・と思わせてしまう、そんな曽世ビロドーでした。

【倉田さん司会のトークショー


どうにも思いは尽きませんが、最後にちょこっとだけ、Sチームのトークショーで印象に残ったことを追記しておきます。愛のある毒舌が冴えわたる演出家、倉田さんの質問。稽古場の状況もほわっと浮かび上がってきて、なかなか面白かったです。


幼い頃からミッション系の幼稚園や学校に通っていてキリスト的な思考に若干造詣があり、意外と「LILIES」世界に入りやすかった、と語る鈴木智君。倉田さん的には、老ビロドーを睨む鋭い目つきの理由を、何度も鈴木君に尋ねておりましたが、本人は「あまり意識していない」という回答で、倉田さん自身が少し諦めきれない感じでしたね。


「LILIESイベントの時から神父役を掴むため、教会に行ってみる、と言ってましたが、実現しましたか?」の質問に、家の近所の教会に本当のミサを見に行ったものの、聖書も読んだことがなく、全く信者でもないため、かなりの場違い感を感じたという神野君。


「(芝居中に)他の役者の手を触ったり、という演技は自分で考えたの?」の質問には、「おそらくミシェル神父は、ソッチ系(同性愛)の人ですよね?」と恐る恐る聞いて、「間違いなくそうです。」と倉田さんに即答されいて、会場笑。


松村君には、倉田さん自身「彼はスロースターターで、幕が開くだろうか、と本当に冷や冷やしました。」と演出家目線での発言がありました。発言内容はあまり覚えていないのですが、松村君がかなりマイペースな人というのはなんか分かりますね。


仲原君は、今回3人のヴァリエと絡むので、毎回「元彼を忘れるのが大変」と語り、爆笑をよんでいました。'09年の「LILIES」では、当時、劇団でも若手の多いTチームで4回しか公演がなかったため*2にすごい結束力と劇団内でも話題にされていました。その時は毎回同じテンションで芝居をすることができない、という反省があったそうです。


しかし、その時のメンバーで唯一劇団に残ったのが仲原君と牧島君だけで、「あんなに鍛えてやったのに!」と藤原さん(倉本さんだったかも)が嘆いていて爆笑。確かに、たった4年の間に次々と辞めていってしまったんですね。そう考えると先輩達の嘆きも分かります。私も最近知りましたが、制作に残った元Jr.7の吉田君もスタジオライフを去って、(演劇の世界ではありますが)とある方のマネージャー業に就かれたそうです。


同じ作品を何度も上演していますが、全く同じ配役はあり得ませんし、どんどん役者は入れ替わっていくんですよね。「トーマの心臓」と「LILIES」を上演する限り、何があっても私は劇団スタジオライフを追い続けていけると思いますが、贔屓の役者が抜ければ当然、熱が下がるのは分かります。そうやって長い間、新陳代謝を続けながら、劇団を存続するのってかなり大変なことなんだろうなあ、と実感する昨今です。

*1:きっと他の演劇集団では役者として成功できなかったのではないか、と思うほど。

*2:しかも、初回稽古で本読み途中で時間終了となり、メンバーが相当青くなったという。