雅・処

好きなアイドル・俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

2014 『トーマの心臓』観劇記(3)

中堅とベテランの魅力

若手の次は、中堅どころからベテランへ、と続きます。お初組の仲原オスカー。全体的に、すごく軽やかで若々しい(笑)オスカーで、いつものごとくよどみのない台詞が気持ちよく響いてきました。ユーリと同級生(ホントに若いの)というのが自然に感じられましたし、とても優しくて面倒見が良いオスカーなんですね。


そこは確かに間違いはないのですが、オスカーに”生徒たち全員の庇護者”的なイメージを抱き続けていたので、「爽やかすぎてちょっと色気不足かも、貫禄ないなあ~。」と少し不足に見えてしまったのが残念。やっぱり、数年後に2度目のオスカーを演じてくれたら丁度いいのかもしれません。*1曽世さん演じるミュラー校長とは、本当に父と息子のように見えましたし、マツシンと並んでも麗しくて本当にカッコイイんですけどね。


松本ユーリが激しく熱い分、クールなタイプに見える仲原君が対になっていた良かったのかもしれませんが、歴代オスカーに比べると印象が薄いのが残念。あえて「仲原君なら、もっともっとできるはずなのに」という期待値で語っております。もう一人、「もっとできるはずなのに」と残念に思ったのが、原田君のバッカス


意外とバッカスって難しい役なのかもしれないなあ、と原田君を見ていて思いました。ユーリ、オスカー、エーリクという主要人物とは別に、スタジオライフ版「トーマの心臓」の面白いところは、バッカス、レトヴィ、アンテ、サイフリートという個性派キャストがいてそれぞれに異なる魅力を持っているところです。何度見ても飽きないのは、全ての登場人物がキャラ立ちしているから。


そしてバッカス役も曽世さん、鶴田さん(退団)、船戸さん、牧島君が魅力的に演じてきた役だけに、登場するだけでワクワクしてしまうのです。出番はさほど多くないものの、バッカスは印象的なシーンに登場してますし、なかなかに人目を引く良い役だと思います。前回の『少年十字軍』で、遅咲きながらも成長ぶりを見せてくれた原田君はどうか、といいますと・・・。


うーん、なんか見えないプレッシャーと格闘していて、自分の”バッカス”を確立できていないように見えました。少し不安そうに確かめながら台詞を喋ってるというか、普通すぎてもったいない、の一言。バッカスは、いろんなタイプの演じ方があって、考えすぎると難しいのかもしれませんね。


いつも学生たちの喧騒を達観して見ているような優等生、かと思えば、オスカーとつるんでちゃっかり遊んでるようなラフさもありますし。私的には、牧島君のバッカスが超ステキ!と偏愛しておりますが、同期と比べても下積み期間が長かっただけに原田君にも頑張って欲しいなあ、と思ってしまいます。


続いて、これまた期待の青木サイフリート。初登場シーンから、原作に近い、サラサラのロン毛に目を奪われました。派手なスタイルが目に飛び込んできますが、意外と抑えた感じ声音でちょっと意外。「もっとクレイジーにやってくれ!」と内心思ってしまったりもするのですが(笑)、あまり乱れるとサイフリート像が変わってきてしまうからなのかもしれませんね。


でも公演が進んだら、青木サイフリートはもっと狂気に目覚めてくれそうで、見たい感が高まります。最近また2010年のNHK放送版を見返しているのですが、青木ユーリも何か秘めた熱情があっただけに同一人物が全く正反対の役を演じているのが面白いです。それにしても、メガネを外した青木サイフリートは美人!女顔というか、本当に綺麗で怪しさよりもその美貌に驚きました。


関戸レトヴィ。初回に、ド真正面で見たので4年前との違いが鮮明に分かりました。一つ一つの表情が、以前よりももっと細かく深いのです。セッキーのレトヴィもとても好きな役どころなのですが、もう全て自分のものにして確固たるものを作り出している、そして以前よりアイメイクがしっかりしていて可愛かった(笑)です。


松本ユーリと対峙するときの関戸レトヴィには、また今までにはない独特の空気が流れているのが分かりました。目で会話をしあってるような2人なのです。同期同志、長く歩みを続けてきたあ・うんの呼吸とでもいいますか。セッキーがラストでユーリに本を渡す時の慈愛に満ちた瞳にも感動でした。


やっぱり長く再演される作品というのは、素敵なものです。芝居だけではなく、その奥で経過している劇団員の歴史ともシンクロする瞬間があって、まさに奇跡のような美しい一瞬なのです。

【ベテラン達の祭典は、見どころいっぱい】


山本芳樹及川健のゴールデンコンビ。なんと脅威の11年ぶりにタッグを組みましたが、全く違和感がなく、まんま11年前の思い出の通り。デジャブといいますか、懐かしい旧友に会ったような、そんな空気で見ておりました。また及ちゃんのエーリクが、すごく自然体で一段と洗練されていた気がしてビックリしまくりでした。


その及川エーリクが相手役なだけに、芳樹君のユーリもなんだか水を得た魚のような演技といいますか、2人の台詞はどこまでも自然な会話に聞こえてくるのが不思議。今まで、芳樹君のユーリは、苦悩がガーっと出ていたと思うのですが、及ちゃんのエーリクに対してはお互い押して引いてのバランスが良く、息もピッタリ、見ていて負担に感じない気持ち良さに溢れてまくりでした。


2人のコンビはもう、「これぞ、スタジオライフのトーマの心臓だ」という、名人芸を見ているようでした。芳樹君がいつもとまたちょっと違って、ナイーブな瑞々しい演技をしていたり、ということもありましたが、もうあまりに完成形すぎて逆にテンションが下がる部分もありました。2000年と2003年に、山崎ユーリを見ていて思った感覚と似てます。


つまり、もう彼らは”少年ではない”のだ、という寂しさ。もちろん実年齢からしたら、とっくに少年ではないのですが、ライフの舞台では年齢を超えてはるかに長い間、少年であり続けることができていました。(というか「トーマ」は、子供では演じられない作品ですし。)でも、やはり「そろそろ時期なんじゃないかな」と突きつけられた感がありまして。今回の名コンビ復活、ちょっとしたご褒美だったのでしょうね。


岩崎オスカー、これまた思っていた以上に大人の風格にたじろぎました。4年前とそれほど演技は変わっていないと思いますが、なんか風格が漂いすぎててアダルティなの(笑)。Aチームは、これまでのライフ版トーマの心臓を色濃く感じさせてくれて、長らく私が見ていたのはこれなんだ、という思いを呼び起こしました。だからこそ、私の「トーマ」の中の少年達が羽ばたいて遠くに行ってしまったような、一抹の寂しさを感じてしまいました。


他にも楢原さんのシド・シュバルツ氏も懐かし過ぎて涙が溢れまくりでしたし、石飛さんのアデールは一層可愛らしいお母さんになり、主宰の印象が強かったヴェルナー役も山崎さんが渾身で演じてくれましたし、曽世さんのミュラー校長は、語らない深い演技で、さすが、と感じました。かつては学生役で出ていた役者が大人の役をしっかりと演じてくれることで、劇の深みを増してるのが嬉しかったです。


そして、今回ヤングチームの”上級生のお茶会”シーンは、最高のお遊びコーナーとなっていて爆笑させてもらいました。倉田さんも粋なことをなさる。シリアスな「トーマ」をあそこまでハチャメチャに演じきれるのは、歴戦のツワモノ、かつての卒業生達しかありえません。とびきり贅沢な上級生達でした。(笑いを堪えて真面目に演じている原田バッカスが若干気の毒に見えましたけど。)


中でも山崎さんのヘニングには、もう感動を覚えました。得体の知れない”変な先輩”全開で、かつ、カツラのせいもあるのでしょうけど、思いの外、若々しかったのにもビックリ。いっそ、山崎ユーリ復活、でもいいかも、なんて思ってしまったのは私だけではいないのでは?

◇初日観劇レポ:
「名作は時を越え、少年たちは大人になる。」スタジオライフ『トーマの心臓』初日レポートをUP | スマートボーイズ

◇お茶会レポ(制作発表・記者会見):
2014/04/08 劇団スタジオライフ『トーマの心臓』製作発表会見レポート 感激観劇レポ|おけぴネット

◇観劇レポ:
Special! スタジオライフの代表作『トーマの心臓』開幕!(1) | omoshii

◇「キタコレ!」(ネット紙芝居?):
Redirect

◇山本芳樹&松本慎也インタビュー(JPG記事):
20年月号のPICK UP一覧 | Confetti [チケット情報満載]


miyabi2013.hatenablog.com
miyabi2013.hatenablog.com
miyabi2013.hatenablog.com

*1:2度目の「LILIES」シモン役の時のように