本当に素敵な胸キュンが詰まった作品
少し前から気になっていたお芝居「美しいこと」のDVDを昨夜見ました。この作品は、木原音瀬*1さん原作のBL小説を舞台化したもので、2010年初演、2011年再演で2回とも舞台化、DVD化されています。あまり前知識もなく、主演の俳優2人についても全く無知で、真っ白な状態で見ました。
大体において、特典映像で主演二人が「ボーイズラブ!」と話していたことに「これってBLだったの・・・?」と逆に驚いたくらい、2人の織り成す純愛にドップリ状態でした。男同士の愛という直球で無理やり感が漂う(笑)大方のBL作品とは異なり、地味な日常のどこかに、ふと、こぼれ落ちてしまってそうなくらい切ない愛の行方にときめきまくりでした。
私の苦手なサラリーマン同士、しかも部署違いの同僚、という(汗)カップリングではありますが、そんなことすら全く気にならなくなるのが不思議。松岡役の与那嶺圭太君の存在がそれを許しているのかもしれませんね。ちょうど、この公演中*2に28歳を迎えて、肉体も結構鍛え上げている”オトナ”な彼なんですが、どこか少年性がにじみ出ている表情が魅力的なんです。
物語は、(ストレス発散のため)女装を趣味にしていた松岡の窮地を、偶然救ったことから、彼を「女」として愛してしまった寛末との関係性を中心に、2人の愛に焦点を集中させ、ブレずに追いかけていきます。
何事にも不器用で、要領が悪いけれど心優しい寛末。そんな彼に次第に惹かれていく松岡。寛末に男とバレるのが怖くて、「口のきけない、葉子という女性」という”嘘”をつき続け、「こんな関係は良くない」と気付きながらも、完全に別れることができない松岡。結果的に松岡の同情とも愛情ともとれる不可解な行動に翻弄され、美しい”彼女”にどんどん想いを募らせてしまう寛末。
【繊細な心の揺らぎの連続に目が離せない】
いやあ、「人生こういうことってあるよね」と思いながら、この嘘がバレてしまった後の2人を想像して見ている間じゅう、目が離せずドキドキが止まりませんでした。やがて、男同士という、どうしようもない事実に打ちのめされ、苦しみ抜く2人の男達。その頃には、すっかりハートに火をつけられた状態の松岡が、どうにかして元の関係を修復したいと願い、寛末に追いすがって慟哭する姿に釘づけに。
また松岡役の圭太君の熱演ぶりが半端なくて、うるんだ瞳に体を震わせている姿を見て、愛おしさがこみ上げてきます。寛末を演じる井坂俊哉さんもまたすごく役にハマっていて、自分の気持ちを制御できずにあたふたする姿が、真に迫っていて実によろしいのです。この2人のベクトルが追いつ追われつで、なかなかに触れ合えないでいるところがまあ、たまりません(笑)。
久しぶりに”純愛”というか、傷つき傷つけ合いながら激しく求め合う、不器用な愛の形を直球で見せられて、見終わった後は、虚脱感と「ああ、もっともっと見ていたい!」という想いが充満して、フラフラになってしまいました。なんて素敵な疲労感♪
2人の脇で絡んでくる女性キャスト達も、ドラマの中では”緩衝材”としてなかなかに機能していて、ストーリー構成の上手さを引きたててました。私のように、男だけ、女だけの単性劇団の芝居が好きな人間としては、異性の存在は邪魔で仕方ないことも多い(ましてBL物ならば尚更)のですが、この芝居ではそれが全然気になりませんでした。
むしろ今まで当たり前(男女間の恋愛)と思ってきた道徳観と折り合いが取れなくなって、自分の心をコントロールできなくなっている寛末と松岡を効果的に見せてくれるのです。お互いを深く求め合っていながら、なかなか正直に一歩が踏み出せない・・・このもどかしさこそが、恋愛モノの究極の面白さです。それを思い出させてもらった舞台でした。
再々演があったら、是非見たいものです。小劇場で少人数の俳優で作り出す、息づかいまで伝わってきそうな熱のあるお芝居、いいなあ。最近は、BLですら比較的”慣れ”も出てきて安っぽいものが増えてきてるだけに、原点に立ち返るようなピュアな作品が出てきて嬉しいです。で、今週末ももう一度、見返そっと!
◆2014.7.24追記:原作もBL小説界・屈指の人気作!と言われるだけある面白さで、(この飽き性の私が珍しく)何度も読み返してしまいました。いやあ、寛末×松岡のカップリング最高だわ~。精神的には、攻な松岡が肉体的には受だったり、もはや鈍感さが罪レベルの憎い男!と、イライラ悶えさせられる寛末(続編「愛しいこと」で、主役となる)に、惚れてしまいました。
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