雅・処

好きな俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

スタジオライフ 『トーマの心臓』2016 観劇記

トーマの心臓」公演20周年 不思議なアニバーサリーキャスト

3月5日と6日に東京遠征を行い、『トーマ』『訪問者』『湖畔にて』3作品を一気に見てきました。勢いのまま、感想も書ければ良かったのですが、なんだかはっきりしない気持ちでだいぶ日にちが過ぎてしまいました。


遠征直前にも個人的に事件*1が起こったり、急にメガネが壊れたり、なんだか心がワサワサしたまま、芝居を見てしまって、どこか視点が定まらない感じでした。


更に、たった1回だけの観劇のチャンスだというのに、キャストも脚本も2000年の連鎖公演を思わせて、異常に懐かしいけど、妙に新しいセットの空間とか往年のキャストの衝撃が大きすぎて、なかなか物語に集中できないまま過ぎてしまった、という残念な結果に・・・。やっぱりもう1,2回追加しないとなんとも言えないところですね。


セットはそれこそ大改編で、字幕上映スペースはかなり高くなってしまいましたし、ベッドは方向が垂直になり、場所も今までずっと定位置だった左手から、舞台ど真ん中に置かれているし、ここまで変わると慣れなさに少し居心地が悪く感じてしまう、という。


公演が始まる前は、内心「おっさんトーマ」と揶揄していたのですが、演劇版「トーマの心臓」創成期を支えた初期メンバーが揃い、恐ろしい完成度と安定感を見せ付ける内容。確かに”アニバーサリー”というか”オールスター”というか。山本ユーリはもちろんのこと、笠原オスカー、石飛レトヴィ、曽世バッカス青木イグーに、少し懐かしい松本エーリク、関戸ヘルベルトは圧巻の陣営でした。


楢原さんのシドだけは、昔とほとんど変わらない姿で登場し、全く違和感がなく、逆に驚きました。また冒頭から石飛さんの髪型が、”レトヴィ仕様”の内巻きストレートヘア、ということに軽く衝撃を受けたり、笠原オスカーの貫禄ありまくりの”ボス”的存在感に圧倒されたり。芳樹君はいつも落ち着きぶりから、周りよりも年上の風格がありますが、笠原さんの庇護のもと、少しだけ若々しくか弱く見えましたね。


どんな時にも元気印のエーリクは、マツシンの安定感に救われました。とても2年前、苦悩に満ちたユリスモールを好演していたとは思えないほど、いつもの屈託ないエーリクでしたね。曽世さんのバッカスも一度だけ2003年の名古屋公演で見ていましたが、その時より”素の曽世さん”本体に近かった印象です。誰もが言ってますが、笠原さんとの親友っぷりがそのまま伝わってくる。


共演シーンは、二人とも嬉しそうにじゃれ合っているのが、目に楽しかったです。5人組は、青木イグーが復活ですが、さすがに昔の純粋でとっぽい役作りでは、バランスが悪かったのか、オトボケぶりは少し押さえめで自然に演じようとしていました。関戸ヘルベルトも、過去のレトヴィ役を全く思い出させないほど、役にハマッていて素晴らしいの一言。


私の中では、懐かしくてたまらない2003年までの黄金キャストよりもいつの間にか、Jr.7以降のキャストのほうがしっくりくるようになっていたのかな、となんだか複雑な気分です。何せ笠原オスカー、芳樹ユーリの台詞の掛け合い、まるで流れるように、を超越して歌うようにスラスラ早口で出てくる。この2人、本気で歌いだすんじゃないか(笑)とたじろぐほど、ミュージカルのような「トーマの心臓」でしたもの。

【新しさと懐かしさが入り乱れ】


私的には、一番楽しみだった石飛レトヴィ。ああ、この重厚感なんだよなあ~。と見ながら過去を思い出してました。元々、関戸レトヴィも大好きなんですが、石飛レトヴィは人生を背負ってるような重苦しさを全身に滲ませています。それが主要登場人物3名と別次元で、同じ比重を感じさせてくれる。


というか2000年連鎖公演では、通い続けるうちに石飛レトヴィと高根サイフリートが、最大の楽しみになっていた瞬間もあったくらいだったので、私にとっては大きな存在でした。2階部分の高さから、エーリクにトーマの詩を読み上げる名場面が復活していたのは、大変嬉しかったです。(もう少し感情移入をしたかったのですが、近くに座っていたお客さんが、レトヴィの台詞になるとガサガサ雑音を入れてくる、という最悪さでかなり半減したのが残念。)


笠原オスカーと病床のミュラー校長との見せ場シーンは、いつもは2階部分で演じられるのですが、今回は1階にドドーンとベッドが置かれていてかなりびっくり。最大限のプレゼントだったのかもしれませんが、ちょっと驚きが大きかったですねえ。


初めての顔ぶれである、仲原サイフリート。歴代サイフリートの中で、一番勉強ができそうな(笑)彼でした。図書館にいるのが似合いすぎる。それだけ”悪”を表出する、異常さや怖さが不足していた気がします。仲原君は、性格的に善良で生真面目なタイプなので、悪役が意外と不得意なような・・・私の印象ですけど。


そして2年前、キャリアの少ない頃に、エーリクという大役を演じていた田中君が今回はアンテに役代わり。ユリスモールを大好きなエーリク、の情感の乏しさに物足りなさを感じたあの頃とは、別にオスカーへ一途な想いを寄せるアンテを好演。いやあ、嬉しい収穫でした。もう少し先に、またエーリクで帰ってきた時、初演よりもっと良いエーリクになれるかもしれません。


最後に宇佐見君のユーリママは少女のような愛らしさで、心が浄化されました。とても芳樹ユーリを産んだとは思えないほど可愛らしいのですが、どこか間違って母親になってしまったような女性で、息子の苦悩を深くは知らない・・・という感じで、なかなか新鮮でしたね。


終わってみると、新旧のキャストの個性のぶつかり合いがかなり激しい中、スタジオライフの王道の「トーマの心臓」の歴史を自然と味わされる不思議な公演でしたね。もう一度、このアニバーサリーキャストで見ることは叶わないでしょうが、昔のビデオやDVDを見返して、その世界観に再び浸りたくなりました。なにせ今回の芝居は、あまりにキャストが詰まり過ぎていて、とても作品世界に浸る余裕なかった(笑)ですから。


トーマの心臓 (小学館文庫)

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萩尾望都 少女マンガ界の偉大なる母(文藝別冊)

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大人の少女マンガ手帖 偏愛! 美少年の世界 (TJMOOK)

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大人向けの24年組、BL黎明期関連本も静かなブームのようですね。

*1:長らく鬱々していた現実に強引にカタをつけるような出来事