雅・処

好きなアイドル・俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

今こそ、不完全で野心的な面白い日本映画が見たい!

アニメと漫画実写と女子高生ばかりの日本映画、一体なんだ、この体たらくは!

まあ、タイトルからしてかなり喧嘩越しなのですが、去年くらいからまた邦画を楽しんできて、ちょっと盛り上がってきたのに、劇場で興味をそそられる面白い映画が全然ない、という状況にがっかりの日々。楽しみというほどではないのですが、9/9からの是枝監督最新作『三度目の殺人』だけ前売券を購入して、公開を待っているところです。


もともと是枝監督は、2作目の『ワンダフルライフ』と2004年の『誰も知らない』で決定的にファンになっておりました。ただ、『そして父になる』はまあまあでしたが、ここ最近は若干ぬるい作品が多くなった気がして、「もっと昔の作品ような、切れ味のある作品を作って欲しい」と思っていたところです。


世界的に「家族映画の巨匠」的な言われ方をされていますし、それは間違いではないのでしょうが、それだけではない社会に向ける鋭い視線も持っている方なので、もっともっと違う面を見たいのです。それは監督自身も実感しているようですが、現在の日本映画の厳しい制作環境(低予算ばかり、企画で冒険ができない)を考えると、闘いなのでしょう。


さて以前のネットインタビュー記事で、是枝監督の「女子高生とタイムスリップという題材からはそろそろ離れないといけないのではないか、と思います。」という言葉がちょっと話題になりましたが、今年のラインナップを見ているとまさに言言えて妙、という感じです。「三月のライオン」「銀魂」「ジョジョ」「東京喰種」「亜人」等、公開未公開問わず漫画の実写化多数。

邦画大ヒットの年に是枝裕和監督が「日本映画への危機感」を抱く理由(立田 敦子) | 現代ビジネス | 講談社(1/2)



確かに今年に限らず、数年前からこういう流れは出来ていましたが、今年は輪をかけて目立つような。そして昨年の「君の名は。」大ヒットでますます拍車がかかっているアニメ映画、更には手を変え品を変え、タイムスリップ(1日前~10年前に戻るとか、昔よりも時間幅が小規模ですが)と、青春恋愛映画も腐るほど目にします。


エログロでない、大人のための良質な映画はどこへ行った!!いやもうさすがにうんざりなんですよ、お子様向け題材の映画は。もちろん、ちゃんと棲み分けできてればいいのです。かといってジジババ系の松竹映画にも食指はわかないし、ああ、本当にもうなんかないのでしょうかね、もっと大人の鑑賞に堪える映画ってのは。


いや、決して高尚な映画を求めてるわけではないのです。どちらかというと、趣味の偏ったワタクシ、今までハマった映画というのもかなり間口の狭い変な映画か、どっか欠けていて、完璧でない作品が多かった。昔からLGBT系やBL映画も好きですし、最近では『武曲』のすさんだ綾野剛に魂持っていかれていた(笑)のですから、お世辞にも”売れ線”映画が好きというわけではない。


私が昔見た映画で印象的なのは、『誘拐報道』『未完の対局』などの社会派ドラマ、さらに大衆娯楽大作でハマったのは『里見八犬伝』(薬師丸ひろ子真田広之主演)くらいでしょうか。どちらかというと実験作だったのに予想外にプチヒットした『櫻の園』('90年作)も好きでしたね。これは無名の女子高生達が主人公でしたが、青春恋愛映画ではなく(百合系の匂いくらい)、いわゆる男性目線のあざとさは薄かった、と思いますし。


若い少女は出てくるけれど、ブラックユーモア満載の『下妻物語』とか、同じ中島哲也監督の『告白』とか、初めて目にするドキドキ感いっぱいな映画というのもめっきり少なくなりました。作り手の「このくらいの”ギャラ安め”の若手人気俳優集めて、ある程度の人気原作で、ほどほどにヒットを目指す。」みたいな予告見ただけで、裏が読めちゃうような映画が増えてしまって失望感が大きいのです。


それから毒々しめの漫画原作は、判を押したようにブルーバックの背景(青みがかった映像処理のことを、こう読んでます)で処理するのももう止めませんか?この手の作品は、映画が始まったときから、すでに駄作の香りが甚だしいのです。どうして素人でも分かるような単調な映像表現しかできないのだろう?


どこぞの映画人が言っていたように、「日本映画は、半径10メートル以内で起こった事象しか題材にしていない。」「社会性も政治性も含まれていない。」という言葉が突き刺さります。いや別に、日本人が楽しむものだからそれでいいならいいのですが、監督の名前で味わう作品というのも全然なくなってきて、それが寂しいのです。


たぶん、映画人とか関係者、ある程度のキャリアを積んだ役者達は危機感を抱いているとは思いますが、どうにもできない事情があるのかもしれません。昔からお金をかけるほど駄作になる、という日本映画のジンクスは生きてますし。でも、こんな金太郎飴のように似たような映画ばかりで、作り手の信念もまるきり感じない映画ばかり公開になってるとさすがに、「死に瀕してるなあ、日本映画」と思ってしまいます。


10年後、どうなってるんだろう?いやはや、もっとワイルドでハチャメチャでハートがあって、不完全燃焼でもいいからズドーンと心に突き刺さってくる映画、誰か作ってくださいよ!って声を上げたいです。


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