雅・処

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スタジオライフ『はみだしっ子』観劇記

久しぶりに原点に帰った作品

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先週、無事公演終了となった『はみだしっ子』ですが、すっかり感想をアップするのが遅れました。かなり久々に3日間で4公演も見てしまったところ、その疲れがずっと尾を引いてしまい、なかなか落ち着いて振り返れなかったのです。さすがに歳を実感する今日この頃。


私が子供の頃、1番読み返した最愛のコミックだっただけにあまり期待をしないで見よう、と思っていました。ところがどっこい、嬉しい誤算でこれがなかなか楽しめました。グレアム、アンジー、サーニン、マックスの4人が舞台に登場し、彼らを愛してくれる”恋人”を待ってレディ・ローズに拾われるところから物語が始まります。


倉田さんが欲張らずに、場面を絞ってコミックの初期の部分にまとめたのが功を奏し、アンジーの過去、グレアムの過去に焦点を合わせたところで見せ場も十分に生かしてくれました。何度も読んだとはいえ、ここ何年かはゆっくり作品を読み返す時間を持たなかったのですが、その長いブランクも越えるほど原作への愛は強かったことを再認識。


アンジーの「だからボクは旗を振るの!」という台詞が役者より先に鮮烈に浮かび上がったり、ドラマが展開されると同時にコミックでのキャラクターの表情やコマがバッと目の前に出てくるようで、その衝撃が大きかったです。原作漫画の実写化というパターンをここまでリアルに感じたのは初めて。


台詞の一つ一つも原作にかなり忠実なのが分かります。本当は1ケタ年齢の幼い少年達の物語なのですが、年齢を語らせないので違和感がほとんどありませんでした。それに「はみだしっ子」の少年達は、「こども」ではない。大人の情感を持ち合わせた、傷つきやすくて繊細な少年たち、だから子役が演じてもその魅力はかえって伝わらない、と思いました。


原作には、あまりに感動的なストーリーが多いので、パート2、パート3などが出てきたら嬉しいです。千葉君が倉田さんに「芝居にしないのですか?」と聞いたという「カッコウ(クークー)の鳴く森」という作品は私も真っ先に考えたパートでしたし。はみだしっ子最大の悲劇・雪山事件や、養父母ジャック&パムとの出会いや裁判といった深みのある話がまだまだ続くので。

トリプルキャストで一番の好みは・・・


仲原グレアム、松本アンジー、千葉サーニン、伊藤マックスのTBC(タバコ)チームでした。グレアムは岩崎大ちゃんも久保君もいずれも本人の個性を生かした3人3様の良さがありました。宇佐見アンジーもヒネクれつつも愛情を求めている感じで可愛らしいし、鳥の死に衝撃を受ける澤井サーニンも印象的でした。他には、二役での出演で松本エイダがもうシビレるほど(笑)の良さ。


にもかかわらずトータルで安定感やはみだしっ子のキャラを体現していたのはTBCチームだったと思います。松本アンジーが美しくて繊細で、口が悪くても憎めないアンジーを文句なしに演じてましたし、千葉サーニンがまるで原作から抜け出たような姿で感情移入しまくり。もっと見せ場があったら良かったのに…。


フレッシュ伊藤君は、舞台出演がライフ以外を含めて3回目ということで、未完成の原石のような魅力を感じました。でも声の通りも良いですし、見た目もすごく可愛いですし、期待の新人ですね。仲原グレアムに腕を組んでる様なんて、お兄さんたちを手玉にとるラブリーさを見せつけていて、「キミなかなかやるな」って感じで。このまま成長していつか「トーマの心臓」のエーリク役をやれるようになって欲しいな*1


仲原君は感情を抑制した優等生なグレアムを演じてました。仲原君はもう少し違うアプローチでも良かったかも。基本的になんでもできる役者なのですが、役によって”すごく良い時”と”やや普通”な時が出てしまう人なので、そこがちょっともったいないかも。ハンバーガーショップの女店員のほうが、今回は良かったですねえ。


圧巻の適役は、レディローズの曽世さん。なんでこんなに上手なのか、本当毎回脱帽です。ああいう寂しい女性いそう。そう言えば、三原順さんの描く”自立した女性達”ってどこか皆、悲しみを背負っていて、屈折している人が多い。少女漫画にしては、女性の描き方がワンパターンでなくて、感情を吐露するときに胸をえぐってくるところがあります。だから余計に好きになったのかもしれません。


グレアムを徹底的に追い詰めていくエイダについては、”嫌われ役”になるところですが、背後に母親の愛をグレアムに奪われた哀しみがあったから、という免罪符を与えていて、それをちゃんと芝居にも見せていて、こういうところは倉田さんの外さないセンスを感じます。


ちょっと残念だったところは、回想シーンが登場人物が棒立ちで語り掛ける朗読風になっていたことかな。これも倉田さん独特の演出なのですが、ちょっと多用しすぎる傾向が。ちゃんと躍動的な芝居で見せて欲しいのだけど…と思いました。音楽も主宰時代のムードを感じさせて、まさにスタジオライフ原点回帰な一作となった気がします。

千秋楽挨拶に思うこと


今回、久しぶりに見ることができた前楽と千秋楽。劇団員挨拶で船戸さんや芳樹君が「続編や再演も期待する声もありますし・・・」と言っていたのが珍しいなあ、と感じました。役者達にも、それだけの手応えがあったでしょう。ここ数年の作品は淡々と過ぎていった感が多かっただけに、物足りなさばかりを感じていたのですが、こういう感じは久しぶりです。


劇団一のはみだしっ子ファンになってしまったという久保君、「ボクが一番グッズを買いました!」とスピーチしてました。千葉も「こういう役との一体感みたいな感じは初めて」と語っていて、千葉君こそが一番サーニンに適役だ、と配役発表のときから確信していただけに、我がことのように嬉しかったです。


曽世さんは、「4人を見送るのも最後かと思うとなんだか胸がいっぱいになってね。でも僕、今回はトリプルキャストなので12人見送ったわけですけど。」なんて語ってましたね。宇佐見君は、「劇団も、はみだしっ子が乗ろうとした一つの船のようなもの。」なんて船に例えていました。


舞台挨拶の時に、「是非アンケートをお願いします!」と力説していた藤原さん。文化振興なんちゃらの公演だったからなのか、劇団運営にそれなりの危機感を持っているためか、分かりませんけれど、お客様の声を受け止めて、基本に立ち返ろうとしている証なのでしょうか。


今回の舞台は、DVD発売が決まっていて、三原さんサイドからよく発売の許可が下りたなあ~とビックリしましたが、「公演は終わってしまいましたが、是非DVDをお手元に置いて・・・」なんて語る劇団員の宣伝もすごかったです。でも、これは確かに買って損はない。はみだしっ子ファンの方にも、是非見て欲しい芝居になってると思います。


昔は、スタジオライフの公演には、結構こういう良い意味での熱があったんですよね。良い芝居は、公演後に次の日以降のチケットが売れ、グッズも売れ、アンケートも増え、何より会場の熱気が高まっていくのが肌で感じられました。役者達も、その喜びを舞台上でとつとつと語ってくれたものですし、何よりカーテンコールの笑顔の輝きが違っていました。


最後に一言、はみだしっ子グッズ私も買いたかったよ~(涙)。(全品売り切れで悲しかったのです。)

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miyabi2013.hatenablog.com

*1:どうか劇団員を辞めないでね~祈