雅・処

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GWに観劇した作品「レ・ミゼラブル」

大作ミュージカル初観劇

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とうとう私が超有名ミュージカル『レ・ミゼラブル』を初観劇する日が来てしまいました。今までも、それこそ何度もチャンスはありましたし、映画などでも見ようと思えば見られたのですが、何故か頑なななくらい避けてきた(?)作品。というか、芝居やミュージカルをナマの舞台で見るようになった、ということ自体が割と最近のことですから、無理もないかもしれません。


そもそもミュージカルは、チケット代も高く敷居も高く、決して嫌いではないけれどあえて見たいと思うほどでもなく・・・。劇団四季は未だに「食わず嫌い」状態。宝塚歌劇団の”ミュージカルもどき”でもそれなりに満足という、全く本格派とは縁遠い状態でした。私の数少ない観劇経験の中で、あえて挙げるとすればトップ1は『エリザベート』(宝塚版演出)。果たしてそれを『レミゼ』は、凌ぐのかしらん、という興味がありました。


レミゼ』については、25周年という長い歴史があり、有名無名を問わず完全オーディションによる複数キャスト制をとるということ自体が、昔から話題でした。何人もの伝説的スターを生んだ作品で、マニアも相当数おり、時には社会現象なんかも巻き起こしている、というプチ知識なんかが先にあったりする。なんだか見る前から勝手に”超大作”像が膨らんでおりました。


しかし今回直接のきっかけは、アンサンブルのグランテール役で参加する石飛幸治さんがお目当てだったという、まあよくありがちな理由(笑)でした。更には、「レミゼ」自体も25周年記念で、初期からの演出が最後という過渡期にぶつかったことなど、熱いレミゼマニアの友人からあれこれと知識を追加してもらって、新参者の分際で往年のスターを集めたスペシャル公演までチケットを取ってしまうという無謀ぶり。


まさかの帝劇、まさかのレミゼ、とあまりに驚きの連続だったため、勝手にボルテージが上がってチケットを取ってしまいましたが、それだけに楽しめなかったらどうしよう・・・とちょっと構えた部分もありました。何せ友人が目を輝かせて、あれほどまでの情熱で語る作品です。そしてそれでなくても歌唱力のある大勢の出演者の中で、「石飛さん、本当に大丈夫かしら?」という不安もありました。

【キャスト目当てでした】


まずは、初見の印象をさっくりと。ど素人だけに、本当にとっちらかった感想になりそうですが。まずはお目当ての石飛さん。ソロをとるたび、正直ビビリました(汗)。普段、スタジオライフで聴くと、劇団でも一、二を争うくらい上手い印象なのですが、帝劇の舞台では極度の緊張のためか危なげ・・・あり。


恐らくは、音程を外さないように特訓を受けていることでの緊張、小さな芝居小屋とは異なった大舞台で有名すぎるミュージカルに出演していることの緊張、巧くて当たり前な共演者達に囲まれての緊張、普段と違う発声で歌っていることの緊張、歌いながら思いを込めて演技をせねばという緊張、比較的重要な役どころ(アンサンブルの中では)と、どこをとっても金太郎飴のごとく緊張が漲ってる。


見てるほうまで手に汗握ってしまうような緊張が伝わってきちゃいまして、「そりゃあ大変さ」な状態です。落ち着いてやればもっと歌える人なのに、惜しいなあ~、と思うことも多々ありました。でも慣れない環境で、精一杯努力していることは分かるし、何より10年見続けてきた役者さんですから、「そこに貴方がいるだけで嬉しいよ、私は。」という気分でした。


どんなに有名どころが出演していても、誰もお気に入りの役者がいなかったら、やっぱり楽しみは半減してしまうでしょう。*1革命に身を投じる男らしい役どころだったので、普段のちょっとオネエな要素はさすがに見えず、おお化けてる、って(笑)。それでも独特の動きで、遠目でも、照明が暗かろうが分かってしまうのもファンのサガという。


他にも何役か個性的な役を演じていて、場面が変わる度に石飛さんの姿を探しつつ、物語も追っかけていかねばならず、ちょっと疲れました。まあ、ハラハラしながらも次は何が出てくるの、的な愉しみ方ができるのは初見の特権なので満足です。幕間には、ストーリーの解釈はこれでいいのか、という確認と石飛さんの話で友人と大いに盛り上がりました。

レミゼに対する率直な感想】


たった1回の観劇でこの大作ミュージカルの魅力を判ずるのは、さすがに早いな、という感じもあります。ただ、何の混じりけのない素直に思ったことを書けるのは直後の今だけかもしれないので、一応記録しておこうと思います。全くストーリーを知らないで見たので、分かりにくい場面もいくつかあったのですが(革命やら時代背景の部分が特に)、最後まで飽きずに楽しめました。


主人公ジャン・バルジャン(山口祐一郎)は、カリスマ的な魅力があって物語を引っ張っていましたが、意外と女性の強さ・悲哀が胸に染み入る話でもあり、さまざまな愛の形も印象的でした。立場の違いで対決しなければならない運命の好敵手とか、裏切りや強欲、世俗的なエロスの部分なども強烈で、楽しいミュージカルとは一線を画してます。


トリプルキャストなどが多いため、出演者の数は多いけれど、実際に舞台に立ってる役者の数は思いのほか少なく、アンサンブルが何役も演じ分けているのは、他の演劇と同じなんだなあ、と感じたり。更に舞台セットが想像していたよりシンプルで、そのことにも驚きました。一つだけ革命シーンで使用される巨大な櫓のような舞台装置があってそれは見ごたえがありましたね。一幕の終わり、革命に向かう学生達の列は、宝塚版「ベルばら」のバスチーユを思い出しました(笑)。


虐げられている民衆が主役なので、キンキラキンの派手な衣装もなく、薄暗い照明が全体を覆っていて、陰鬱なムードがあります。こういう特徴なので、このミュージカルの好き嫌いが分かれるところかも。テンポは、初演の時に比べてどうなんでしょう、少しカットされたり変更はあるのかもしれませんが、(おそらくは25年間変わらずの)大作らしい重厚感が支配しており、スペクタクル度はやや低いかも。


演出がオーソドックスですから、場面転換毎の凄さや驚きはあまり感じませんでした。新演出は(映像などを多用して)かなり斬新になるという噂を聞きました。往年のファンにとっては、悲喜こもごもになるかもしれませんね・・・。ミュージカルの歌い方ってオペラに通じるものがあるなあ、と思ったのも発見でした。


手馴れている方々はそれほど感じないのですが、若いメンバーは、やや過剰なほど声を張り上げて歌っていて、その力み具合が耳につきました。おそらく声のコントロールが出来ていれば、感情過多にならなくても、歌心が通じやすくなるのではないかなあ、なんて。あまりにも歌うことに必死すぎる、と見ていても疲れてしまうのです。


私が最も拘ったのは、音楽・メロディーライン。残念ながら、1度聴いただけで夢中になるほどの旋律はありませんでした。劇中、私でも聴いたことがある曲は、フォンテーヌの歌う「夢やぶれて」*2と、エポニーヌ「ON MY OWN」でした。こういうシチュエーションで歌われるのか、と目からウロコでしたね。


タカラジェンヌだというフォンテーヌ役の和音美桜さんがとても魅力的で気に入ってしまい、ラストでフォンテーヌが出てきたら涙が溢れましたし、声も顔もかなり気に入りました。


それらの有名曲や代表曲以外も台詞部分が全て歌となっているミュージカル。その先駆けのミュージカルかもしれませんね。ただ、台詞部分の音楽については、絶妙の旋律を配して途切れることなく五感をシビレさせられた『エリザベート』に比べると、いささか単調で凡庸に思えてしまいました。あるいはフランス・ミュージカルとウィーン・ミュージカルの違いなのか、単に私がシロウトでJ-POPみたいな分かり易いメロディーばかりを好むせいか。。。


もしかしたら、『レミゼ』の一番の魅力は、その長い歴史にあるのかもしれません。数々の有名無名のスターが舞台で全力を尽くし、ある人は道を開き、ある人は消えていく。そういう変遷を繰り返しながら、ファンの記憶に焼きついて、あの時の・あの人の・あの歌は素晴らしかった、あの人の解釈は個性的だった、もう一度見たい、と一つずつ感動や逸話を生み出していく。全く同じキャストというのは、二度と見られないことが多いからこそ、一瞬一瞬が貴重でマニアックな楽しみ方にも繋がります。


自分が名作だと認めて夢中になって追いかけている作品が、何度もキャストを変えて甦るというのはそれだけで魔力があります。そこでお気に入りのキャストを見つけて、いっぱい感動して、そういう思い出の積み重ねが、このミュージカルをただの娯楽作品から、超大作にさせてきたのかもしれません。そんなことを、舞台と友人を見ていて思いました。


次に会うときは、初期メンバーの夢の共演、また全然違う楽しみ方が出来るかもしれません。


miyabi2013.hatenablog.com

*1:有名子役の加藤清史郎君のガブローシュも見れたら良かったなあ、という所詮ミーハーなヤツですが。

*2:スーザン・ボイルが浮かびますね。