雅・処

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スタジオライフ ’09『LILIES』観劇記

トリプル・キャストは大変

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6月26、27日の両日に紀伊国屋ホールで「LILIES」を観劇してきました。いやあ、あの重厚な話を連続で見るのはどれだけ大変だろうか、と思いましたが、そこは大好きな作品ということで、集中力を落とさず楽しめてしまいました。


どのキャストも長所と短所はありますが、役者が総替わりというのはなかなかに発見も多く面白く、そして見せ場ではやはり涙が勝手に溢れてしまいました。


劇場入口をくぐった途端、スモークが立ち込めていてまるで霧の中のよう。聖歌隊の音楽が異次元空間を感じさせますが、中央ではグッズ販売がいつものように静かに行われているところがいかにもライフの光景です。今回は、台本、囚人バッグ*1、ストラップといつになく買いまくってしまいました。そこは、LILIESということで、特別出血大サービスの衝動買いです。


セットは、'03年の再演とほぼ同じだと思います。小道具の十字架入りの椅子は、初演以来ずっと使われていて懐かしさを覚えました。演出が少し変わっていたところもありましたが、大部分は変わらなかったのでホッとしました。まあその分、役者の演技が個性によって全然違っていたので、そこが最大の違いですね。それどころか芝居を見ながら、前回までのキャストが亡霊のように見えてくる時が度々ありましたが(汗)。


【勝手にキャスティング】


どのチームもそれなりのまとまりがありますが、なかなかにベストと言えるチームがない。ならばしょうがない。私が独断と偏見で選んだベスト・キャストはこれだ!ということで、下記に挙げます。今回出演のメンバーのみで作りました。ああ、「LILIES」にも、オールスター公演があると良いのに・・・。

配 役 選抜 次点
シモン 岩崎大(S) 新納慎也(F)
ヴァリエ 松本慎也(F)  
ビロドー 奥田努(S)  
伯爵夫人 カサノボー晃(S)
ディアンヌ 新納慎也(S) 吉田隆太(T)
老シモン 石飛幸治(F) 倉本徹(T)
老ビロドー 藤原啓児(T)
ミシェル神父 牧島進一(T)  
ユー男爵 船戸慎士(F)  
ユー男爵夫人 篠田仁志(T)  

 ※()内は、チーム名


やっぱりシモンは、ちゃん。どこか高根シモンを踏襲するような人物像でしたが、予想よりずっと抑制が効いた、大人のシモンになっていたのに驚きました。村上ヴァリエへ向ける笑顔もとても優しい。一番期待していたのが、ヴァリエを振るシーン。本当はヴァリエを好きでたまらないのに、嘘をつかなければならない時の苦しくてたまらない表情。決め手はコレでした。やっぱり私の”好きなタイプ”のシモンです。


新納君のシモンはもっともっと優しくて、松本ヴァリエを愛しすぎてて、「辛すぎて吐きそうになった」発言がこれかあ、と納得です。Fチームの二人は、とにかく一番濃厚にラブシーンも演じてて、そんなにチュッチュしなくても・・・(笑)と思ったほど。*2まあ、マツシンが可愛すぎるから仕方がないですけど。


仲原シモンも予想以上の頑張りを見せてくれました。最近、仲原君は大抜擢が続きますが、それが何故なのか少し分かった気がします。彼は、とてもストレートで混ざり気のない体当たりの演技を見せてくれます。苦悩するシモンですが、本当に”苦悩”が強く現れていました。そして意外に男っぽい。色気はこれからかな。


ヴァリエは、カワイコちゃん度ナンバー1のマツシンで。新納君があれだけ言ってただけあって、あの微笑からは逃げられません。(まさに麗しいカップルそのもの)演技も的確。お手本のようなヴァリエ、でした。三上君は、美少年さは負けていないし、伯爵夫人との関係での「思いやりある息子」ぶりがとても良かったのですが、いつも思うのは、匂い立つような”色気”(または繊細さ)を武器に出来たら怖いもの無し。


村上さんのヴァリエについては、うーん、可もなく不可もなく、かな。もっとシモンにどーんとぶつかっていけばいいのに、奥ゆかしいんですよね、愛情表現が。ま、こういうの慣れていないから仕方ないかな。慣れないづくしの中、頑張ってると思います。もともとヴァリエはなかなかに難しい役なので、今回の3人とも山本芳樹君の牙城を崩せず・・・なんです。(スイマセン)


伯爵夫人は、とにかくパワーのあったカサノボーさんがダントツでした。歌が上手で、キャリアのある方ですから、芝居の勘は高いかも、と密かに期待していたのですが第一声で魅了されました。台詞自体が聞きやすくて分かりやすい、歌うように耳に心地良く響いてきてその上、ちゃんと説得力がある。年季があるだけに母の慈愛も滲み出ていて、見ていて本当に楽しかったです。ライフとは違う”新しい”伯爵夫人でした。


”生粋のライフ的”伯爵夫人は、舟見ちゃん。今回は声音も変えて、年上の女性像を演じておりました。やや背伸びしてる感じは否めず・・・。白い衣装が美しく高貴な夫人に見えるのに感心したので、数年後には、力量を上げて見せてくれそうです。


関戸君は、当初の不安が的中。想像よりもずっと綺麗で台詞回しもしっかりとしていましたが、あまりにも難役にトライしたため、彼自身の持つ美点が活かしきれてない。最後まで正常で揺らぎの無い女性に感じてしまうのです。恐らく関戸君自身が、まだ「LILIES」という作品にピンときてないんじゃないのかな。


千秋楽までに何かを掴めればそれで良し、くらいなもので、あと3~5年後に演じさせてあげたかった。これまでの人生経験や修養を積んだかどうか(ひいてはある種の地獄を見たことがあるかどうか)がこの伯爵夫人役には、一番現れやすいので怖い。倉田さんも酷なキャスティングをするなあ、と。


一番違いが面白かったのは、リディアンヌ役。ライファーとして、そして吉田ファンとして、吉田君のリディは愛おしくて素敵で、成長した喜びも大きかったです。作品に対する愛情もちゃんと現れていましたし。ですがあえて、これは(本人がやる気満々だった)シモン役以上に、感動を与えた新納リディを!!


行動的で芯は女らしい大富豪のパリジェンヌとしての揺らぎない魅力と、小道具を巧みに操る様(特に手に動きが美しかった)、ベタ惚れしちゃいました。もともと彼は、昔から女役が断然面白い、と思っていたのですが、今回は決定的でした。どこで身につけたのでしょう、あれだけのワザを。


伯爵夫人VSリディアンヌの対決、というのがキッチリ描かれていると、この作品は俄然面白いんだなあ、と今回開眼しました。カサノボーさんと新納君、舟見ちゃんと吉田君、どちらも女の闘いでグッときました。

【本音で語ってしまいます】


残る芳樹リディアンヌですが・・・。最初から嫌な予感的中。台詞を喋り始めて頭を抱えました。「うわあ、これって篠井さんの真似じゃない?」と*3。彼は、ちょっと前に『サド侯爵夫人』で篠井英介さんと共演してるので、その芸を知ってか知らずか模倣してしまったようです。独特の台詞の繋ぎ方・抑揚のつけ方など、普段の芳樹君の演技とはかけ離れていて、持ち味のまま挑戦して欲しかった(涙)、と思いました。


別な意味でさんのビロドーもイタかった。なんで無理に笑いをとろうとするのか、と。まあこれだけ深刻な芝居で笑いを取ろうとできるだけでも相当度胸がいると思いますが、完全裏目に出てました。役作り自体、根暗っぽい少年ぶりが、以前のアンテを思い出しましたね。真っ当にやれば上手い人なんですが、今更の”少年ビロドー”がよっぽど難しかったのでしょう。


芳樹君にせよ、林さんにせよ、「アナタ達、自分達の代表作をめちゃめちゃにしないでちょうだい!」と思ってしまった・・・。良く言えば今までと違う作品にしたい、裏を返せば(必要以上に)存在感を出したい(目立ちたい)という欲望が出ちゃったのでしょうか。本当は二人とも大ファン(→これ本当)だけに、辛辣で申し訳ないと思いつつも、今回のワースト1、2です。もちろん、サスガ上手!というシーンもあるんですが、たまにぶち壊しが甚だしかったのが残念。


フレッシュからの大抜擢、石井君のビロドーは、良く頑張ったね賞。Tチームは、新人公演なので(←おいおい)役者の成長を温かく見守りたい・・・というところでの配役なのでしょう。演技も素直すぎて、ビロドーが何故、シモンを追っかけているか理解不能なのが、ちょっと。。。かえってストーカーチックな怖さが無くは無いのですが。


この中では奥田君がどうしても貫禄で、ビロドーに見えてしまいます。というか久しぶりに再会できて嬉しかったよ、と友人のような感覚だったりして(笑)。慣れてるだけでなく、ちゃんとパワーアップしてるのが嬉しかったですね。長くなってきたので、あとは短めに。


老ビロドーの青木君もどう考えてもミス・キャスト?と思われる中で、己の持てる力を尽くして前向きに頑張ってるのが分かりました。ラストのビロドーの長台詞が一番心に迫ってきたのは青木君でした。ただし、老ビロドーはやっぱり老け専(失礼)でお願いしたいかな。倉本さんの老シモン、愛嬌あるオヤジぶりが素敵で、これまた感心。ダンディな石飛シモンが大好きなのですが、婚約パーティでの倉本シモンには、文句ナシ。いつだって倉本さんの演技は、染み入るような愛情が格別です。


なんだかんだ好き勝手書いてしまいました。キャストだけでもいろいろと思うところがありすぎでしたが、それでも誰が演じても好きなもんは好き、です。やっぱいいなあ、LILIESって(笑)。

◇ゲネ囲み取材:スタジオライフ代表作『LILIES(リリーズ)』囲み取材&舞台稽古 2009年6月 | 情報紙 ターミナル
 → ブシャールさんのコメント付

*1:紺とグレーの2色ですが、囚人ナンバーがシモン・ヴァリエ・ビロドーの3種類有、選ぶのに悩みました。

*2:演出が変わったのかしら?と思ったらSチームは淡白でした(笑)。

*3:篠井さんの芝居を知ってる友人・知人も見た瞬間、気付いたそうです。