雅・処

好きなアイドル・俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

20周年記念のミステリー『白夜行』が残した残像

果たしてこれは・・・?

劇団スタジオライフ(Studio Life)の記念すべき20周年に劇団初の二部作として上演された東野圭吾作のミステリー作品『白夜行』。9月に第一部、続いて12月には第二部を観に行きました。


第二部の東京公演は、まだ始まったばかりですが(11日が千秋楽)、現在両キャストを1回ずつ観終わりました。実は第一部を観終わった後、今まで味わったことのないほどの”後味の悪さ”にどうしても感想を書くことができず、頭を抱えてしまいました。


作品の出来が例えようも無く酷い、というわけではなく、むしろ配役はなかなかの適役揃いでしたし、心配した日本物(笑)というのもかなりしっくりしており、一度観ただけで目が離せなくなるようなストーリー展開で強烈なインパクトもありました。3ヶ月も間が空いたのにストーリーや人物を細かく記憶できていたのがそれを物語っていると思います。唯一つの大きなネックは、


「これは、私が本当にスタジオライフで観たかった作品なのだろうか?」


ということに尽きました。第一部を観て感じた”後味の悪さ”というのは、今までのスタジオライフの作風からかなり離れたものだったのと、新分野へのチャレンジ精神は分かるものの、どうも納得のいかないものを感じてしまったからでしょう。第二部ラストのクライマックスシーンを見た時に、脚本家の倉田さんが描きたかったものがハッキリと掴めた気がします。

【 物語の大筋 】


物語は、雪穂と亮司という二人の主人公の小学生時代から始まります。亮司の父親が殺されたことをきっかけに、この二人の周りで起こる不可解な事件の数々。更に昭和から平成へと移り変わる世相を反映しながら、二人に関わった人々がどんどん不幸に巻き込まれていく様が描き出されていきます。雪穂がどんどんと成功していく陰に必ず寄り添うように亮司の姿があり、この二人の関係が最後の最後に明らかになっていきます。


第一部では、二人の少年少女時代~青年期までを描いてますが、これがなかなかの駆け足ぶり。今までの倉田作品にありがちな散漫さはあまり感じられませんが、とにかくストーリーを追うだけで忙しい。また、次々と登場人物が無残に殺されていきます。その間、”ライフ名物”の心理描写はほとんど無きに等しい、ただ淡々と事件が進んでいくのです。私自身、(どんな作品であっても)意味も無く人が殺されていく展開は好きではないですし、女性の登場人物は、ことごとく性的暴行をネタにされているのが、実はかなり拒否感が強かった部分です。


たとえ二人の幼少期にあのような秘密が隠されていたとしても、それが免罪符になるかどうかはまた別の話で、全く主人公に感情移入ができない、のがモヤモヤとした気持ちに繋がったのかもしれません。小説の原作は未読ですが、場面描写が多く心理描写はかなり控えめという話を聞きました。なので小説の舞台化としては、正攻法だったのでしょう。惜しむらくは、この物語こそ連鎖公演にするべきだったと感じたところ。そのほうが、見てるほうの緊張感と味わいをもっと高められた気がします。


第二部では、雪穂に焦点が当てられ、結婚生活の破綻から女性経営者として成功していく姿が描かれていきます。その彼女が初めて自分の抱えてきた「闇」を言葉に出すシーンからラストのクライマックスへと怒濤の如く流れていく20分ほどがまさにスタジオライフの世界そのものでした。小説には書かれていない場面を、残酷なほどの美しさと、痛ましくも感動的なタッチで描き出しています。


倉田さん自身が「嫉妬を覚えるほどに憧れた」雪穂と亮司の絆の深さ、それがここにはありました。これから見る方、是非ハンカチを忘れずに(笑)。少年合唱の清らかな響きと共に、滝のように涙が溢れ出してしまいましたから。


今まで少女漫画や耽美系小説?を題材にすることの多かったスタジオライフが役者の実年齢と近い役どころで、しかも日本を舞台にしたミステリー作品ということでどうなることやら?と思ったのですが、それについてはむしろ成功だったと思いました。


また若手ジュニ7のがんばりが特に印象的でした。「いつの間にこんなに可愛い娘役が多くなったのかしら(笑)」と嬉しい発見もあり。もちろん、シニアから中堅メンバーまで全員緊張感を保って演技をしていたと思います。


 

白夜行 (集英社文庫)

白夜行 (集英社文庫)

白夜行記者会見 
  ⇒ StudioLife『白夜行』製作発表 - 2005年8月 - 演劇ニュース - 演劇ポータルサイト/シアターガイド

[Studio Life][ボーイソプラノ・Treble] 曲紹介

最後に今回使用されていた曲についても。パンフレットで読んだ時に主宰の河内さんが「少年合唱との出会い」を書かれていたので「さあ、どれでくるか?」(笑)と思ったら、とてもストレート?にリベラ*1でした。


かつて『訪問者』ではボーイズエアクワイアーも使用されていたので、主宰とはなかなか趣味が合いそうです(笑)。Sanctusは、ミサ曲で用いられる楽節なので(曲は多様)、魂の浄化を示す、というのもこの辺りにあるのでしょう。
 ※曲名は、全て耳で判断してます。万が一、違っていたらすいません。 


Visions

Visions

 
・挿入歌:リベラ「VISIONS」より
 3曲目) AVE MARIA → 雪穂が夏美へ語るシーン
 1曲目)LOCUS ISTE(Sanctus)→ クライマックスの回想シーン


miyabi2013.hatenablog.com

*1:今年4月と10月に来日コンサートを見ておりました。