男性だけの聖なる空間へ
『1999年の夏休み』と異なり、原作の舞台版として『トーマの心臓』を成功させたのが劇団スタジオライフです。それも劇団の演出家兼脚本家である倉田淳さんの熱意の賜物に他なりませんが、2次元の世界を3次元化するのは至難の業だったと思います。
しかし、再演を重ねるごとに飛躍的に観客を増やしていき、この作品は間違いなくスタジオライフの宝ともなっています。NHK・BS2で過去3回放送された2000年版の公演は、私がスタジオライフのトーマに出会った、記念すべき公演でした。(以来、1番のご贔屓劇団になっております。)
スタジオライフは男性のみの劇団で、巷では耽美系だとか美形だとか形容詞がついてる劇団ですが、役者達はどちらかというと味のある雰囲気美形(笑)だと思います。
当時の劇場は、新宿御苑前駅近くのシアター・サンモール。300席程度の劇場は、洒落たマンションの地下に位置し、非常にムードのある劇場です。一歩足を踏み入れると、制服姿の劇団員に「シュロッターベッツへようこそ!」と声をかけられビックリ。徹底したサービス精神?に驚いておりましたが、そんなことは序の口でした。
『訪問者』『トーマの心臓』の連鎖公演となったこの年は私にとっても忘れられない思い出の年となり、”巡礼”の如く、気付いたら通いまくっておりました。(ある時は、点滴まで打ちながら・・・)まさにここで、萩尾望都さんの物語世界に彷徨いこんだ気分でした。
【「トーマの心臓」を”体験”】
芝居が始まるとそこはすでにドイツのギムナジウムの図書館。冒頭でレトヴィ*1が、トーマの詩を暗誦します。バックに流れるカッチーニの「アヴェマリア」の旋律を聴いた瞬間、まさに震えるような感動が体を駆け抜けました。
最初こそ、すっかりオトナのお兄さん達(汗)が演じるオスカーやユーリを受け止めるのが精一杯だったものの、エーリクを演じた及川健さん*2の漫画から抜け出たような姿態に一気に物語世界に入り込みました。
新人の劇団員が危なっかしい(汗)演技力で生徒役を元気良く演じるのを除けば、ほとんど原作通りです。しかも、シンプルな舞台装置やわずかな小道具で少年達のナイーブな世界を描き出し、演出や物語に無駄なデフォルメがほとんどありません。
何より演じる役者達が次第に夢のように美しく見えてくるのです。少年達の愛のみならず、親子愛も濃厚に描き出し、「トーマの心臓ってこんなに美しい物話だったのか」と再確認させるほどに素晴らしい出来栄えでした。
非常に勘違いのされやすい?タイプの劇団*3ですが、倉田さんの独特の美の世界と劇団員達のナイーブな感性が癖になっております。個性派の(男性演じる)”女優さん”も多いですし(笑)、少年合唱などの美しい挿入曲も毎度お楽しみとなってます。
もうすぐ萩尾望都さんの『メッシュ』が初のお目見え。どんなことになるやら、不安と期待でワクワクしてます。
Studio Life ビジュアルブック Troubadour(トゥルバドール)
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