ライフ初の”歌う”シェイクスピア劇
昨日、ようやくスタジオライフの『夏の夜の夢』を見てきました。6月に新作案内を聴いた時は非常に複雑な思いに駆られたこの演目。
何といっても軽やかに書かれた「歌うスタジオライフ」というキャッチコピーにうすら寒い思いがこみ上げて「う、歌うんですか、本当に?!」とチラシに問いかける有様。心配の源は、当然のことながら大半の劇団員がカラオケレベルの歌唱力、と認識していたからです。
100年の恋も一気に醒めるような、そんな歌シーンが続出したら・・・どうしよ~う。いえ、これは冗談ではなく、真剣に心配したのです。もともと舞台を見る前の私は、ミュージカルや音楽劇というものは、「歌の上手な人」がやるものだ、という先入観がありました。しかし、どうも昨今はそうとも言えないらしく、歌を生業にしていない役者も果敢にチャレンジしてるらしいのです。(ひとまず、ここ日本限定の話ですが)
挑戦としては意義深いことですが、一歩間違えると幻滅の坂道を転げ落ちる・・・その怖さがありました。まして今回は、本公演。ファンを前にしたラフな催しとはわけが違う。倉田さん、ホントに大丈夫なんですか?と開幕前まで半信半疑で落ち着かず。
しかし、馴染みのシアターサンモールのロビーには、若手”妖精”君達が派手な色つき鬘をつけて、元気にスタンバイしており、なんとなく観客達もいつもよりも、浮かれムードな気がしました。
【抱腹絶倒!?素直に楽しい舞台】
シェイクスピア原作の「夏の夜の夢」は有名作品ですが、本でも芝居でもちゃんと見るのは全くの初めての体験で、オリジナルに忠実なのかどうかもよく分かりませんでしたが、総じてちゃんとお芝居になっていたのでホッとしました。また、ちゃんと笑いまくりの見せ場もあって、ライフでこんなコメディ芝居を見るなんて新鮮!と。
舞台セットは白い箱が並べられ、簡素ながらもちょっと幻想的な雰囲気。星空の下、小野健太郎君のハッチャけたパックが前口上を述べて引っ込むと、石飛幸治さん扮するオーベロンが、いつもより一際お腹に響くようなバリトンボイスで語り出します。最初の歌はこの老舗の美声を持つ石飛さんからスタート。
そしてまもなく登場せしは、林勇輔ティターニア&妖精軍団(三上、荒木、政宗、冨士)。私にとってお馴染みの、大胆かつ華麗で、著しく高慢ちきな”女王様”林ティターニアは最大の見モノ。
予想に違わず、見事な脚線美?を見せ付けるかのように裾を持ち上げ*1、クネクネと体をクネラセながら、誘う眼差しを飛ばしてます。得意の毒舌は尚一層磨きがかかり、まさに林節全開。そこから頬が緩みっぱなしです。いつもより厚化粧なのに微妙にかーわいい~。 → どっちが変態?
しかし、彼がひとたび歌い出せば、(エロエロなその動きとは別に)劇団随一の歌手、と言っても過言ではない透明感たっぷりな美声が、心地良く耳元をくすぐるのです。
さすがは私が惚れこんだ男だわ~(ホレボレ)
と、結局のところ、元の鞘に収まるかのごとく酔いしれてしまいました。いつもこれだけ圧倒的に”女”を見せびらかしておきながら、トークでは「そろそろズボンが履きたい(男役をしたい)。」と口癖のように繰り返している林氏*2。
「あの不本意ながらも女役をやらされている・・・ところが、たまらないのよ~。」と、のたまう友人の言葉に影響されて、私もまさに倒錯的な喜びを感じてしまってる昨今です。
アダルティな石飛&林夫婦の後ろに控えて、4人の妖精達のコーラス隊は爽やかなアイドルイメージそのもの。特に、ピンクの鬘をつけ、綺麗な細い足を光らせてシナを作って踊る三上俊一君の確信犯的な可愛らしさをチラ見しながら、芝居の始めから至福の時でした。
※画像は、ライフでは珍しいハードカバーのパンフレット(羽がくり抜かれてパズルのようにはめられます。)とグッズのピースペンダント。鳩の足跡印をモチーフにしてます。
(まだまだつづく)
- 作者: シェイクスピア,William Shakespeare,福田恒存
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