雅・処

好きなアイドル・俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

「堕天使の涙/タランテラ」観劇記(2) ”贅沢”な雪組

めくるめく余韻に浸りつつも、たった2日前のことなのに、もう夢うつつの気分です。ディテールはだいぶあやしくなってしまってるので、ロクな感想はかけませんが、ひとまず続きを。「堕天使」のほうで今回一番感心したのは、リリス役まーちゃん(舞風りら)の使い方でした。


ミズ(水夏希)さん演じるジャン=ポールの双子の妹で、放浪の果てに力尽きてしまう盲目の女性という役どころでしたが、登場場面が少ないものの、芝居の鍵を握る人物で、とても好演が生きていました。コムちゃん(朝海ひかる)のみならず、まーちゃんの退団公演でもあるこの作品。無理やり二人のラブロマンス、も有り得たでしょうが、思い切って別な展開に持っていったところがとても良かったです。


清楚な佇まいでもしっかりとした表現力を持つまーちゃんの上手さがとても光りました。そしてダンスシーンは、コムちゃんと同様、圧巻で美しかった!風のようにふわりと舞う、全く重みを感じさせないそのボディ・・・やはりこれ以上ないコンビだったのだなあ、とつくづく思いました。


情けなさでピカ一(一応、誉めてます。)のエドモン役の壮一帆君、心優しい好青年セバスチャンの音月桂ちゃんのどちらも得意分野?と思えるような役どころですが、それでもちゃんと見せ場が映える作りになっているため、とても印象に残りました。登場人物に破綻がなく、それぞれの持ち味を最大限に生かしているのです。芝居のまとまりは若干しりきれ気味でしたが最後のクリスマスツリーの場面がとても美しくて、それだけで満たされた気分になります。


ただ一つ、とても気になったのは映像の多用、という点。確かに映像は費用も安く上げられるし、容易に空間に説得力を持たせやすいのですが、あまりそれが多くなると舞台としての面白さが削がれる危険があります。以前は幕にイラスト、が多かったのですが、その安っぽさがまたイマジネーションで楽しむことに繋がっていたので、個人的に映写が多くなるのはあまり好ましいことだとは思えないのです。

【ひかる蜘蛛に惑わされ・・・】


変わって、待ちに待った荻田先生(通称:オギー)のショーです。彼のショーを一際注目するようになってからいくつか見返して大体の流れやクセは掴んでいるものの、毎回斬新さで酔わせてくれます。今回の『タランテラ』は、ムードは星組『バビロン』に似てるなあ、と思いました。のっけから”蜘蛛の巣”のセットに「うぎゃ!」とのけぞりながらも*1、筋書きのないストーリーに引き込まれました。


オープニング、紫の羽を背負って笑顔で登場するコムちゃん、その横にピンクのまーちゃん、ブルーのミズさんがなんともゴージャスに並ぶのですが、ふと横を見ると”顔で踊る”壮君が目に入ります。実は、コムちゃんの蜘蛛に追われている設定で、必死に逃げようとする悲壮感を演じていたそうなのですが、なんだか目を奪われてしまうのです。持ち前のほとばしり出る過剰な表情、が前面に出る壮君に、ついつい可笑しさを感じてクスリ。まったくもってそんなアナタが大好きよ、ということで(笑)。


シビさん(矢代鴻)を始め、雪組の豪華歌い手陣をあますところなく使っての贅沢すぎるメドレーにも圧倒されまくりでした。まるでコムちゃんに「あなたは踊りの全てを皆さんにお見せしてればいいのよ。」と語るかのごとくです。更に銀橋でのマタドール姿でキメるコム&ミズコンビの麗しさに目眩を覚え、ひたすら恍惚の中に・・・。


全編踊り倒してるコムちゃんのスタミナには、とにかく脱帽です。このショー、数え切れないほど足上げもしていましたし、踊りは半端じゃない量なんですが、コムちゃんがあまりにも余裕しゃくしゃくな顔をしているのでかなり驚きました。もう悟りを開いて、一人どこか遠い世界へ行ってしまったか、というような涼しい表情なのです。銀橋で客席に背を向けて立ち止まり、楽しげに踊る雪組生達を見ている彼女の姿も残像がまだ目に焼きついてます。


これらは「全て思い残すことなくやり遂げた人の表情なんだな」と思うと、こちらまで感無量となってしまいました。トップスターというのはダテじゃない、就任直後はあんなにか細くて頼りなげで心配させた人をこれほどまでに成長させてしまうのだもの。。。いろいろと過去を思い起こしながらも、もっともっと細部にわたるまで見て楽しみたかったショーでした。また一段とオギー病が進行してしまった気がします。


写真は、宝塚劇場限定販売の「萩の月」特別パッケージです。裏は御馴染みのイラストとなっており、コムちゃんのお披露目の時も登場したそうですが、アジな真似をして下さる。おかげでいつでも食べられるシロモノなのに、買ってしまったではないかいな(笑)。

*1:何せ大の蜘蛛の巣嫌いなので。