雅・処

好きなアイドル・俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

氷上の芸術家、ステファン・ランビエール 激情と芸術的志向が同居する人

先日のNHK杯が終わって10日ほど経ってますが、珍しくフィギュアスケート熱が続いてます。実はその合間に、ちょっとしたイベントもあったのですが、なんとなくそちらに気持ちが集中できず、この3日ほどネット三昧で、ある選手についてインタビュー記事を読みあさっていました。


その人の名は、スイスの貴公子ステファン・ランビエールStephane Lambiel)。実は、まだ22歳という若さでありながら、その名を世界に知られる”スケート界の王子様”です。日本でも富士ゼロックスのCMなどですでに有名ですね。3月の世界選手権後、日本各地でアイスショーが開かれ、荒川静香さんや本田武史君などプロに転向したスケーターと一緒にランビエールも参加していました。


実のところ、これだけの有名選手で海外でも引く手あまただろうに、よく日本のショーに長らく同行するものだ、とちょっと意外に思っていました。もっと気になったのは、TV放送で見たランビエールが、演技が終わった後に祈るように手を合わせて観客席に向けて奥ゆかしく感謝の言葉を述べている姿。インタビューでも、片言の日本語で愛想良く振る舞い、その言動からはお世辞抜きにかなりの「日本びいき」という気がしていました。


そんなランビエールの態度振る舞いに(彼の専売特許となった高速スピンや鬼気迫る表情、世界一級品のワザ以上に)いつの間に惹きつけられていたようです。ナマのランビエールを一度で良いから見てみたい、と思い今年の9月、仙台市体育館アイスショーを見に行きました。


この時が生まれて初めてのスケート観戦だったので、アイスショーの独特の進行や参加者(アクロバットや役者、男二人のペアスケーター(笑)も)やスケーター全員でテーマ毎に滑る時に流れた「ウエストサイドストーリー」のメロディなどに物珍しい演出が多く、個々人を冷静に見られたか、は甚だ自信ありません。


ランビエールも2回ほど登場して、素晴らしいスケーティングや今季の新作SPなどを華麗に見せてくれたのですが、思い出すのはやんちゃな眼差しで、ニコニコ楽しんで滑っている姿などそういうメイン以外のところばかり・・・(汗)。舞い上がっててなんだか本当にナマを見た気がしない、というもったいない状態なのですが、客席への祈るように感謝を捧げていった姿だけは強烈に目に焼きついています。

ランビエール選手の素顔】

お気に入りのトマシュ・ベルネルは、最近一気にメジャーになってきたせいかめぼしい記事は見つからず、その最中ふとランビエールのことを思い出し、インタビュー記事を読み始めたら、段違いのボリュームに圧倒され、波に飲み込まれるように読みふけってしまいました。


彼の個性(アク)の強さは、競技の最中にもひっきりなしに滲み出てきますが、インタビューを読むと人間的な面白さはまた格別です。幸いなことに日本には彼の熱烈なファンが多く、ブログでの翻訳記事やプロ顔負けの詳細かつ読み応えありまくりのレポに感嘆するばかり。皆さん、詳しい、詳しい(溜息)。ひいてはランビエールの公式サイトにも日本語のページがちゃんと用意されています。なんともすごい。


インタビューでは、ランビエール自身の(天国と地獄を行き来するかのように)急上昇・急降下する激しい性分にも驚かされましたが、彼が予想以上にスケーティングに「芸術性」を求めていることに非常に感銘を受けました。ただ競技重視のスケーターではなく、気難しいアーティストという側面にはゾクゾクしちゃいます(笑)。いつだって人々の予測を超える”感性の住人”芸術家は魅力的!→周りは振り回されて大変ですけれども。


そして「スケーター25歳定年説」ではありませんが、あの華やかで美しい世界も、一皮向けばまるで世界残酷物語のごとく、どの選手も怪我と病気で満身創痍状態。プルシェンコは6度目の膝の手術を終え、現役復帰を狙ってるという話もありました。確かに4回転ジャンプ・トリプルアクセル等、高度なワザの数々で体にはこの上なく負担がかかっているはず。


少年時代から厳しい練習にあけくれ、膨大な時間を費やして頭角を現しても世界一でいられる時期はほんのわずか。それだけの短い選手人生でありながら、手にする金額は、見返りになるほど多くはない(らしい)。ランビエールのような一流選手であっても、年間数千万の競技費用を捻出するために日本のアイスショーなどで稼ぐ必要がある、という内容にも驚きました。


一方、選手の日常はどうなのか。日々繰り返される練習にウンザリすることもあると愚痴る発言も有。仕事と同じでやっぱり選手もそうなんですね〜(笑)。更に世界選手権などの大会の裏側。選手達は、ロッカールームでもお互いほとんど会話を交わさず、自分の演技に集中している、というシビアな側面なども余すところ無く語っています。


本当にランビエール君、何でも率直に答えていてある意味気持ち良い人です。もちろん各種インタビューは、本人の調子や競技結果にも、左右されたりもしますが、概ね実に正直者という感じでした。まだ若さでいっぱいな年頃なのに、考え方など非常に老成していることに驚きます。


彼の場合、名声やスターとしての人気が高まり続ける反面、2度も世界チャンピオンになった実力者ゆえの重圧に心が揺れ動くことも多く、一般人には想像しえないデリケートな魂を持ってる気がします。そして相対する炎のような激情もまた持っている。世界選手権で見せてくれた見事なフラメンコの世界は、まだまだ追求し続けていくようなのでこの先楽しみですが、情熱の炎さながらに突き進む姿は、まさに”アーティスト”と言ったほうが良い感じですね。


そうそう「アメリカのファンは表面的だが、日本のファンは”とても誠実だ”」と語ってくれてるんですね、彼は。その説明の仕方がいちいち面白くて、クスっと笑えました。そういう発言をちょっとナナメにとることもできるかもしれませんが、ランビエールの場合は彼の発言自体に素直さが滲み出てくるので、掛け値なしで受け止めていいような気がします。そんなところも、日本人に好かれる所以でしょう。

【私流スケートの楽しみ方】

最近自分の中で、フィギュアスケートに対して変わってきたなあ、と思うことがあります。スポーツとしての順位至上主義にはちょっと疲れを感じるようになってきました。試合である以上、どうしても3位までの選手がスポットライトを浴びるわけですが、たとえ表彰台に上がらなくても、一瞬一瞬素晴らしい演技をし、観客と選手の心が一体化するほどの幸福感を持てたら最高だと思います。


何年もテレビでスケート競技を見てきていまだに6種類のジャンプも区別できず、ましてはテクニカルな面なぞまともに語れませんし、恐らく20年経っても、今と変わらずテクニカルな分析は解説者にお任せでしょう。。決められた要素をこなすことでの満足感や達成感を楽しむのもいいですが、”感性の目”で競技を楽しみたいものです。


スケーターは誰しも、完成度や得点の良し悪しから100%自由にはなれないでしょうが、それでも選手の数だけ表現がある。ランビエールのような超個性派がどんどん現れて、「得点以上の持ち味」を見せつけてくれるとまたどんどん面白さが増していくのではないかな、と思います。

◆公式サイト:Stéphane Lambiel - The Official Website - Homepage
  screenshot

 → 日本語ページにはビックリ。閲覧者の40%が日本人なので、というランビエールの説明で納得。


ランビエールインタビュー翻訳記事:ステファン・ランビエル ドイツ語のインタビューと記事の和訳

 → ページはシンプルですが、欧州でのショーレポや最新インタビューまで盛り沢山。かなり面白いです。


◇ファンブログ(1):はいばらのぞみの生活

 → ランビエールのみならず、スケート全般においても話題豊富です。


◇ファンブログ(2):Andiamo 歩いて行こう|yaplog!(ヤプログ!)byGMO

 → こちらもインタビュー記事が豊富です。ファンの愛情ってスゴイ!


ワールド・フィギュアスケート 29

ワールド・フィギュアスケート 29


夏のショー「チャンピオンズ・オン・アイス」の”ジャパンナイト”で、浴衣姿の選手達がラブリーで買ってしまいました。女性選手よりも男性達の今風浴衣姿が、各々の個性にも合っててなかなか良く、衝動買いしてしまいました。もちろんランビエールの浴衣姿も、オシャレです。(DVD付)