雅・処

好きなアイドル・俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

貴城けい『アプローズ』観劇記

東京遠征の目的は、カシちゃんのミュージカルでした。しかし、この感想を書こうと思うとなかなかまとまらなくて、参っちゃいましたね。往年のブロードウェイミュージカルといった趣きの作品。元々は、映画『イヴの総て』という超名作の舞台版だということ同行のTさんに教えていただきました。映画は未見でしたが、タイトルを何度も聞いたことがあっただけに相当有名なのでしょう。


”バックステージもの”の代表作と言われているようですが、トップスターとその座を狙う無名の新人女優との葛藤が主題で、合間には栄光を裏で支えるオーディションジプシーの青年達も出てきます。カシちゃん(貴城けい)は、前田美波里さん演じるトップスターのマーゴに憧れ、ファンから付き人、やがてその座を脅かすようになるイヴという新人女優役。


あらすじを読んだだけで、虎視眈々と主役を貶めていく悪女っぽい役どころで見ごたえありそう、と思っていたのですが、単純に白黒と割り切れるようなタイプの女性ではなくて、なかなかに生々しさがありました。芝居を見ていて、架空のドラマというより、「ああ、こういう女いるなあ・・・」と過去3人くらい思い浮かんでしまったので(汗)、リアルにしんどさを覚えました。


もっとも彼女達は、”したたかな女性”や”女を武器にするヒト”という括りに当てはまるだけで、イヴのような全エネルギーを傾けて、のし上がっていこうとするようなタフな女性というわけではありません。己の成功を実現するために、人の好意すら利用する狡猾さもありながら、一方では、本当の愛を知らない可哀想な女性イヴ。いずれにせよ、あまり共感を覚えないタイプの女性ではありますが。


一方で大物女優であるマーゴも、スターという立場から我儘を言ったり、強いプライドが邪魔して、年下の恋人・ビルのストレートな愛情になかなか応えられない女性。これまたきっと、大衆が思い描く往年の女優像なんでしょうね。永遠の愛か、女優としての名声かで悩む・・・という。


舞台の背景となった'50年代というと、今から半世紀も昔のお話ですが、華やかなりしアメリカのショービジネスの世界といった感じで、あの頃のスターならば、現代の何倍もの威光があったでしょうから、尚の事その裏側では熾烈な駆け引きがあっただろうと、想像できます。

【オトナの愛のカタチ】


このミュージカル、なんだか妙に”重さ”を感じたのは、40代を過ぎたマーゴと年下とはいえ、ビルも33歳というオトナ同士の恋愛が全編に強く押し出されていたからかもしれません。今の世なれば、その年代の恋だって決して珍しくないのでしょうが、50年ほど昔ならば平均年齢ももう少し短いでしょうし(笑)、もう失ったら後がない・・・ような切羽詰ったお年頃に映ります。


それだけに愛を選びたいけれども、「仕事と結婚している」マーゴの苦悩がヒシヒシと伝わってきてドヨーンと重かった。また前田さんの総てに、風格のある演技と歌が余計に盛り上げて下さる。恋愛ドラマ苦手の私には、結構重く、また何度も行ったり来たりしてる二人がまどろっこしすぎ、とそちらのほうでも若干疲労して。ミュージカルナンバーも、私の好みからするとイマひとつだったなあ。。。


話を戻しますが、カシちゃんは、女優となってもあまり違和感はなかったです。私にとっては初めての女役拝見でしたが、女優デビューしてから、もう2年が経つので、硬さも取れていましたし。ただ、カモシカのように真っ直ぐな細い脚、というのもあるのでしょうが、舞台でやや仁王立ち気味になってることが多く、「カシちゃん、脚開いてるよ〜(汗)」と内心ヒヤヒヤ。


スタジオライフ男優の”女優立ち”*1を見慣れているだけに、不自然なものが自然に見えてしまうのかもしれません。それから、田舎から出てきたばかりの純情娘イヴの時代、すでにカシちゃん、目が据わってて(笑)、充分に”獲物に狙いをつけてる”様に見え、基本は可愛いのですが「ちっともウブに見えません。」という感じでした。いや、男役上がりの眼光の鋭さを、失ってなくてウケてしまいました。


あとはオジさま達を利用し利用されの場面。キスシーンやハグシーンも多く、お初のラブシーンがいきなり「ダンディ系とのカラミかい」と思ったり、さてこの期に及んで「一体、私はカシちゃんと(ラヴシーンのお相手である)男優のどちらが羨ましいんでしょう?」と、くだらないことを考えて気がそぞろだったり。見てるところが違うでしょ!という感じでした。


気になった歌のキーは、宝塚時代とそれほど乖離してなかったので、ハスキーボイスでも無難にこなしておられました。まあ高音はやはりややキツそうでしたが、今後歌い続けていけばクリアできるだろうと思います。歌については、前田さんが圧巻の上手さで本当に往年のスターさんの魅力が全開でした。ここまでになるのには一体何年かかるんだろう、と途方に暮れる感じでしたね。


ジャニーズジュニア時代とあまり変わらなかったけれど、ゲイ役がなかなかイケてた佐野瑞樹君や、ヅカ時代、カシちゃんの相手役でもあった紫城るいちゃんが、ダンサーの卵として”元気娘”ぶりを披露していて、目を引きました。そうそう大事なことを忘れていました。


オープニングの受賞シーン、白いドレス姿のカシちゃんが、私の真後ろに座りました。至近距離で見られたのは、大の喜びでしたが、座っていたほんの数分間は、首から上が固まってドキドキ。女だろうが男だろうが、カシちゃんの魅力はちっとも変わっていませんでしたね。それが収穫でした。次はいつお会いできるのやら・・・?

*1:前に出した片足に添えるように後ろ足を重ね、踵を揃えてハの字型につま先を広げます。これが妙〜に女に見えるんですね。