雅・処

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韓国映画「アンティーク〜西洋骨董洋菓子店」

昨秋に韓国で封切られた映画「アンティーク〜西洋骨董洋菓子店」が、いつの間にか地元で公開されたので見に行きました。当時から、日本で公開したら絶対見るぞ!と気合を入れてました。東京でのGW公開後、全国順次ロードショーを待っていたのですが、つい先月、主演のチュ・ジフンが麻薬使用容疑で逮捕される、というまさかの展開で、お蔵入りか・・・(涙)と諦めていたのです。


ジフンのファンも可哀想ですが、大々的な公開イベントや宣伝が出来なくなった興行主も気の毒な限り。更には、せっかく満足な出来栄えで購入意欲に火をつけたこの映画がDVD発売されるのかどうか・・・と思うだけで溜息が出ます。元々、よしながふみさんの原作漫画「西洋骨董洋菓子店」は、日本でも有名な作品です。


ケーキ嫌いの1人の中年男が、意識下のある”目的”を実現するために、開業したケーキ店「アンティーク」。そこに個性的だけれど、それぞれ傷を抱えた男達3人が集まり働き始めます。店には、ケーキが彩る人々の人生模様が、繰り広げられます。今のひとときの幸福感と過去の悲しみ、優しさと苦痛の対比などが、淡々と、ところどころで爆笑を起こしながら展開していき、深い味わいを残す出色の作品です。


BL要素もなかなか強いにも関わらず、人間同士のやるせない関係・愛らしさの中に溶け込んで、ありふれた人間関係の一つの側面にすぎなくなってしまうのです。よしながふみワールドの独特な乾いた笑いと人間観察の鋭さには、酔わされることが多いのですが、やはりこの作品は、何度も読みたくなる、大好きな作品です。


そんな原作は、過去にタッキー(滝沢秀明)主演でドラマ化もされております。ドラマでも、メインキャラクターを演じた4人はなかなかの好演だったと思いますが、お茶の間の趣向に合わせるため、BL部分を大幅にカットし、話をつくり変えてしまったようです。それでもドラマの評判は結構良かったようですし、きっと悪いドラマではなかったと思いますが、なんたって天才”パティシエ”小野の「魔性のゲイ」という設定を外したことで、もはや原作とは乖離してしまってる、と思えます。

【原作を忠実に映画化】


それゆえ、韓国で「アンティーク」という名前で再度、映像化されると聞いて一抹の心配もあったのですが、監督が原作漫画の大ファンであり、選んだ若手俳優のスチール写真(→漫画のキャラクターに似ている)を見て、どんどん期待が高まりました。実際、本国での上映後、映画を見た人達の感想を読んでみると、なかなかの好評判で、100万人を超すスマッシュ・ヒットとなったそうです。


私が映画を見た印象では、原作に忠実なあまり、猛烈に展開が速く、かなりのジェットコースター映画になってます。時々、あっけらかんとミュージカル調、そうかと思えば急にホラー調にも切り替わって、唖然とさせられたり。このまま、「嫌われ松子の一生」の亜流みたいになったらどうしよう?!とハラハラしちゃったほどです。


役者のぽんぽんと威勢の良い会話の応酬も多いです。邦画なら絶対、見せ場ならば、噛み締めるようにゆったり演じるはず・・・と思うシーンまで、元気良くチャカチャカ進んでしまうのです。映画の作り方としては、「韓国映画ってやっぱりアメリカ映画に通じるなあ〜。」と思いました。


ただ、過去の回想シーンや原作のこまごまとしたエピソードを再構築(やや強引でもありますが)して、「まさかそんなとこまで使うなんて!?」と驚くほどに、出血大サービス状態。原作を知らない人だと、このスピードについていけるかどうか、と心配するほどに。


あちらでは、ネタとして一番取り上げられたのが、狙った男は、百戦錬磨で落とす凄腕?の「魔性のゲイ」ソヌ役キム・ジェウクが演じました。原作の小野と比べると、彼はかなり明るい感じですが、男性とのラブシーンでふと見せる、フェミニンな微笑みが綺麗だったです。本人も慣れない同性愛の設定に苦労していたようですが(確かに腰が引けてるところも何回かありました(笑))、充分及第点です。


映画としては、主人公ジニョク(チュ・ジフン)を苦しめている過去の誘拐事件にかなり力を置いていて、かなりのレベルで漫画とシンクロしていたので、見ごたえがありました。原作では、そこはかとなく背筋がゾクゾクする不気味さがあったのですが、映画では視覚的にもホラーのレベル。それでいて全くブレテいないし、子役も魅力的です。


天才ボクサーの経歴を持っていたがソヌの弟子となったギボムや、何をやっても不器用なジニョクのボディガード・スヨンも、短い時間配分の中で、生き生きと楽しそうに演じておりました。そして、何よりもジニョクを演じた、チュ・ジフンがとても魅力的に見えてきます。若気の至りか興味本位か分かりませんが、クスリに手を出して、逮捕されていまったのが本当に惜しまれてなりません。


漫画の中のドキッとするような台詞、印象的なシチュエーションが次々出てきて、楽しくて仕方なかったので、何年かかってもいいのでDVDを待ちたいと思います。今更ですが、日本でも映画化やって欲しいなあ。。。スローテンポな日本の場合は、ドラマの方が無難かもしれませんが、見せ場はネットリと(笑)やってくれそうです。


明るさと男同士のカラミを強調している。(意外性を出したかったのかも)、韓国版の予告です。日本版予告はもう少し多角的です。

紹介記事:映画「アンティーク」 13日公開(1) | Joongang Ilbo | 中央日報



原作漫画は、本当に大好きで、たまに猛烈に読み返したくなります。ジンワリ心に響く台詞や、男同士のさりげない優しさも魅力的。そして、甘いケーキの背景にある、主人公の心の葛藤も不思議なリアリティを感じます。


アンティーク~西洋骨董洋菓子店~ [DVD]

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ようやくDVD発売が決まったようで、嬉しいです!クリスマスにぴったりの作品・・・ホントか(笑)?しかも日本語吹替あり、やったぜ!