'70年代を代表するアイドル、キャンディーズのスーちゃん、こと田中好子さんがお亡くなりになりました。21日の深夜にその報を聞いて、しばし呆然。ニュースも見ましたし、ネットの記事も読みましたが、とにかくあまりにも突然で今だに「実感がない・・・」というのが、私の思いです。19年も癌と闘い続け、あの優しい微笑みの裏には壮絶な闘病生活があったとは。
先ほど、情報番組で流れた通夜の様子、ランちゃん(伊藤蘭)の思いの詰まったコメントの言葉を聞いて涙が出ました。危篤の連絡を受けて、ミキちゃん(藤村美樹)と一緒にスーちゃんが亡くなる最後の時まで7時間も付き添ったこと。キャンディーズが惜しまれて解散してからも、3人は定期的に集まって親交を深め続けていた、という事実は悲しい中にも絆の深さを感じて、感銘を受けました。
キャンディーズの熱狂的なファンのオジサマ達の様子も合わせて紹介されていましたね。今の若者には理解できないかもしれませんが、キャンディーズの全国的な男性ファンの勢いは、当時もただならぬものがありました。ハチマキを巻いて、長髪を振り乱して叫び声を上げる熱狂的なファンがあのまま歳を重ねたのか、と今白髪頭で涙を浮かべるおじさん達を見ながら感慨もあったりして。
今も昔のアイドルの売り出し方は、あまり変わりがないと思いますが、キャンディーズが大きく違うのは、「仕掛けられた感」が全くないことでした。バラエティー番組「8時だよ、全員集合」のマスコットアイドルのような形でレギュラー出演していたり、「みごろ!たべごろ!笑いごろ!」で、アイドルの枠を超えたコントを見せていたにせよ、それはあくまでも副次的なもの。
まだアイドルも歌が上手で、清潔感があって、という時代。スーちゃんがセンターでデビューした頃から、5枚目のシングル「年下の男の子」でランちゃんがセンターに変わるまでなかなかヒット曲に恵まれず、「この曲が売れなかったら辞めよう」と思っていた、なんてエピソードを当時、子供向けの”キャンディーズ物語”という漫画で(笑)読んだ記憶があります。
【キャンディーズの思い出】
地元で一度だけナマのコンサートを見たのですが、コンサートという異次元空間に興奮し、2階席だったこともあって(目も悪かったしオペラグラスも無かったので)、あまりよく覚えてません。それでも、TVにかじりついてキャンディーズの姿を見ていましたし、アルバムもよく聴いていました。キャンディーズで、初めてアルバムの世界というのは、シングルとは全く違うものなんだな、というのがおぼろげに分かりました。
春のそよ風のように明るく爽やかな印象が強かったキャンディーズですが、様々なタイプの曲と歌詞を表現する力が本当に素晴らしく、美しいハーモニーはもちろんですが、ソロでも充分にその魅力を放出していました。シングルでも「なみだの季節」「哀愁のシンフォニー」「わな」「つばさ」といったやや暗めの曲ばかりが好きな私。
アルバムの中でもランちゃんのソロ「アンティックドール」とか「卒業」「悲しきためいき」TAKE ME HOME COUNTRY ROADS」とか、なんかマイナー系メロディーが好きでした。彼女達が元気いっぱいのただの”カワイ子ちゃんアイドル”であったら、こんなに夢中にはならなかったでしょう。キャンディーズのベスト盤が発売されても、あまり食指が動かないのは、アルバムで感じたあの独特の寂寥感を感じさせる歌を聴きたいと思うから。
きっと私が好きになった頃の後期のキャンディーズは、”庶民派アイドル”としての活動に疑問を感じて、遅い自我の目覚めを感じていたからなんでしょうね。TVで見せるハッチャケた頑張りぶりの裏側に、揺らぐ乙女心(女性的な感受性の強さ)を、醸し出していたような気がします。だからこそ、解散して女優に転身してからのランちゃんやスーちゃんには、一本スジの通った迷いのない信念を感じました。
【最後に】
キャンディーズは好きでしたが、女優の伊藤蘭さんと田中好子さんは全く別人のように感じたものです。いつしか3人とも所帯を持ち、スーちゃんもマイペースでドラマや映画で活躍していて、そこには死を感じさせるものは全くありませんでした。短い人生でまだまだやりたいこともあったと思います。人生80年どころか90年という時代に、55歳はあまりに若すぎる(涙)。
子供の頃に見ていたタレントさん達の死が続き、寂しいながらもやや慣れつつあった昨今、そこにまさかスーちゃんが入るとは夢にも思いませんでした。それでも、愛情の深そうな旦那さんとかつて青春を一緒に過ごした仲間達に見送られて天国へ旅立ったスーちゃんに、その人生の短さを補ってあまりある幸せはあったのかもしれない、と救いを感じました。
今思い出すのは、アイドル時代のふんわり笑顔のスーちゃんよりも、何かを見据えるようなキリリとした瞳です。皆に優しくて、ハートも温かくて、それでも何か目に見えないものと闘い続けた、強い女性の姿が浮かびます。その一方で、鈴を転がしたような透き通るような優しい高音も、頭の奥に響いてきます。
スーちゃんの死により、キャンディーズは、真に”永遠のアイドル”となってしまいました。短い間でも、沢山のものを与えてくれた生命力溢れるグループでした。忘れない、忘れられない、忘れることのない、素敵なその笑顔。
スーちゃん、安らかに。
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DVDでセット発売されたものを、Blu-rayでバラ売りしているようです。DVDのほうで持ってましたが、新しいテレビが届いたら、また見なくちゃ!