雅・処

好きなアイドル・俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

スタジオライフ韓国公演 番外編(2)

韓国公演実現までの道のり

めでたく韓国公演が成功!!とあちこちで気勢が上がって(?)おりますが、それに至るまでの道のりは決して容易ではなかったようです。2年前に韓国へのFCツアーが敢行された時に、すでに劇団は公演の足がかりとなるような活動を水面下で行っていたようです。


その様子は当事者でないと分かりませんが、興味も手伝って約2ヶ月間、韓国のサイトをのぞいて、いろいろな広告やニュースを通して、公演の前準備が進行していく様を追っかけておりました。もしかしたら、劇団員も知らない情報もあったかもしれません。こういう無駄で、暇つぶしな行動ってむちゃ楽しいかったりするんです。

【1.売れない前売券】


終わりよければ全て良し、かもしれませんが、当初、公演チケットの売れ行きがあまりにも芳しくなく、頭を抱えておりました。あれは9月16日のこと、INTERPARKという韓国のチケット購買サイトには、スタジオライフのチケット発売情報が掲載されました。ホールの客席数が411席。4日間で1600枚あまりのチケット枚数です。このサイトでは、刻一刻と変動する残席情報も確認できました。


11月に入ると公式サイト、公式Twitterもオープン、さすがに勢いが出て10枚単位で売れている日もありましたが、残席数はなかなか50%を切りませんでした。特に韓国人客オンリーの初回、2回目公演はかなりの残有率で、公演2日前でも200枚近いチケットが残っている状態(汗)。ということは劇場の半分はガラガラってこと!?と不安な思い。


もちろん韓国では知名度が”無”に等しい、劇団スタジオライフ。そういうことも充分予測はしていたでしょう。赤字を抱えて不成功に終わることの切なさよりも、せっかくあれだけのクオリティの芝居なので、やっぱり単純に一人でも多くの方に見て欲しい、というのが真の気持ちでした。ところが開けてびっくり玉手箱、で実際は初日にほぼ満員の入りだったという情報が。


一体どんなどんでん返しが起こったのか?狐につままれたような気分でおりました。日本と異なり、多様な割引サービスも功を奏したのかもしれませんし、何らかの招待なんかもあったのかもしれません。ただ、韓国の演劇事情に詳しい?わが友キョンちゃんの話だと、韓国では前売券はそれほど売れないことが多く、当日にぶらりと映画を見るような気安さで劇場に足を踏み入れる人が多い、とのこと。


それは裏を返すと非常に羨ましいことかもしれません。日本では、お芝居とか演劇・ミュージカルなどは、よほど見慣れているファン以外は、結構敷居の高いものですから。それどころかお芝居自体をほとんど見たことがないような人も多数いる地域(例えば我が故郷とか)もあるわけで。

【2.割引サービスもいっぱい】


驚いたのは、それだけではありません。日本では、あまりお目にかかれない割引サービスというのも用意されていました。日本語劇であるため、日本語科の学生が割引になるというのは分かるとして、面白いのは、11月10日修学能力試験*1を受けた受験生へのねぎらい割引があるということ。

◆劇団スタジオライフ公演割引

  1. 日本語科&演劇映画科大学生30%割引(1人2枚/学生証持参)
  2. 10人以上団体購買20%割引
  3. 2011年11月10日試験を受けた修能受験生30%割引(1人2枚割引可能/受験票持参)
  4. 日本国際交流基金会員30%(1人2枚)


これは芝居に関わらず、レストランや映画館なども割引サービスをしてくれる一大イベントのようですね。割引率はそれぞれ異なりますが、アイデアとしてはなかなかのものじゃないかな、と思いました。これが日本だったら、ポイントサービスなど、一つの施設単位で行う割引はありますが、こんな大々的な割引サービスは聞いたことがありません。受験で疲弊した気持ちを、さぞかし沸き立たせてくれるイベントになるのでしょうね。


【3.華麗で苛烈な宣伝活動?】


もっとも韓国らしいなあ、と思ったのは、ネットでの情報サービスの量と速さ。以前、映画の公式サイトで感嘆したことがありますが、その見せ方の懲りようはなかなかのもの。まずサイトのデザインについては、”視覚的に目に訴える”方法を熟知してるんです。必ずしもセンスが良いものばかりとは限りませんが、瞬間目に飛び込んできたら、「これは何だろう?」と興味を引かせる術といいますか。


そしてその次は、情報量で押しまくる。その更新の早さたるや、おっそろしいほどでした。Twitterでの情報拡散も、「この担当者すごいわあ、いつ寝てるの?」と驚くほど。*2それから、”他人行儀でバカ丁寧”な日本の公式関連に比べると、もっとフランクで友達に語るような口調で「どんどん来てね!」みたいなノリです。尚且つ痒いところに手が届くサービスをしてくれます。


私が今回思ったのは、少ない”情報”を工夫して宣伝する韓国側のプロモーションの強さに比べて、日本側のなんとも消極的なこと。日本で絶賛公演中(笑)とはいえ、劇団員が数名でも予め訪韓してプロモーションするなり、「もっと本気で宣伝したらいいのに。」と思ったものです。黙っていても客が入るような有名劇団とは違うのですから。


宇野氏のチラシがとてもアカデミックなのは認めますが、このチラシを韓国バージョンで初めて見た時は、あまりの芸の無さにガックリしました。全くスタジオライフを知らない国の人間にこの”イラスト画”だけで、一体何が分かるのでしょうか。韓国版ポスターで、マツシン船戸さんのドアップ写真が来たときに、素人の私ですら「やっぱそれが正解だよねえ~」と思わず拍手したくなりました。


男性だけの劇団という強みを充分に生かすには、写真の効果が一番テキメンでしょう。むくつけき男性ではなく中性的な美青年と幻想的なムード、これこそが何よりもの劇団の売りなんですもの。始めから写真を使った効果的な宣伝ポスターだったら、少なくとももうちょっとは目を引いて前売りも売れたのではないかな、なんて。


大学路(テハンノ)という町では、多くの劇場で常時公演をやっている演劇のメッカだということです。それこそ、小劇団の役者達は自ら道に立って客引きもするとか。それに比べると日本の劇団は、他力本願でお上品すぎる気がするのですが。


もう一つお金をかけずに一般人に話題にしてもらう、ということでは、招待券プレゼントのネット企画なんかもありました。一番面白いなあと思ったのは、8人の劇団員を出して、「この中で女役は誰?」クイズをしていたこと。書き込む人達のコメントも面白くて、「最も正解じゃなさそうな・・・石飛さん」だとか、「この妖しく色っぽい眼差しはそうだわ・・・関戸君」とか。楽しんで答えてましたね。



この時点でチケット余っていたから全員プレゼントでもいいかも(おいおい)、と内心思ったりして。

【4.「十二夜」祭り】


韓国のニュースサイトでは、当初から「夏の夜の夢」よりも「十二夜」を重点的に取り上げられていました。何故なのかなあ?と不思議に思ったのですが、それはどうもここ最近、韓国ドラマで男装をする女性を主役にしたドラマがヒットしており、シェイクスピア演劇でも”性別の取替え”みたいな話がたまたま注目を引いたことにあるようです。


公演直前になると、ほとんどの記事がシェイクスピアの「十二夜」を同時期に3~5種類の劇団で公演している、ということをトピックにその違いを説明していました。奇しくも、とある韓国の劇団が男性のみで公演を打っていたそうですが、写真を見るとガタイの良い男達ばかりで、女役もややニューハーフっぽい化粧をしていました。更には、韓服を身につけ韓国的な風合いのする芝居のようです。


スタジオライフについての、いくつかの紹介記事を取り上げてみます。自動翻訳にかけてますので、若干のニュアンスの違いはご容赦を。なんと”美形揃いの劇団”で、”現代版歌舞伎”の高みまで持っていかれちゃったりしてます(笑)。

日本劇団 ‘スタジオライフ’の男俳優たちは本当の線のきれいな女ではないか?と、錯覚に陷るようにするほどに秀麗な外貌を持っている。その結果現実世界では捜すことができない、舞台空間でばかり見られる “中性美との遭遇”を体験するのだ。

’スタジオライフ’の特徴は美学的に徹底的に計算してキャスティングになったすべての出演陣が男性という点と、 演出家倉田淳の独創的な脚色力と美しい世界観がもたらす纎細な舞台だ。

劇団 ‘スタジオライフ’は日本の伝統劇団形態である 「歌舞伎」の精神を現代的に解釈した日本男性劇団だ。日本には、「歌舞伎」「宝塚歌劇団」など同性の俳優だけで演劇を作る伝統があり、これを通じて客席の感じる雰囲気は一般演劇に比べてもっと多様だと言うのが関係者たちの説明だ。

優雅なドレスを着て踊る男俳優たちの激情的な振りを通じて人生の光と影、そして喜びと悲しみを伝達する。男性俳優たちが舞台の上で抱き出す強烈な力には、逆説的にも生の意味をもっと切なくするパワーを感じさせるだろう。


SBSという韓国のテレビ局でも「十二夜」特集を放映したようですね。CMや韓国版に続き、ラストにスタジオライフが放送されています。公演のライブ映像ではなく、公演前日17日のプレスコール*3の動画ですが、オリヴィア役の及ちゃんの歌と踊りが堪能できます。(期間限定かもしれませんが、再生ボタンで動画が見られます。)
SBS芸能ニュース「十二夜」


もう少しだけ続きます。


miyabi2013.hatenablog.com
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*1:日本でいうと大学入試のセンター試験みたいなもの、と思われます。

*2:Twitterの仕組みはイマイチ分かりませんが、一定時間に自動で同じ情報が流れるような設定があるのかもしれませんが・・・。

*3:一般客を公募しての撮影イベント&プチ記者会見。これも2日くらい前にいきなりサイトで募集して、希望した人は即効OKでした。