雅・処

好きなアイドル・俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

ようやく見た『富士見二丁目交響楽団 寒冷前線コンダクター』

食わず嫌いしてましたが、意外と良かった映画

(邦画の)BL映画好き、の私としては、いずれ見ようと思っていたものの、なかなか手が出せないでいたのが、『富士見二丁目交響楽団』。約1年前の映画ですね。原作自体は、だいぶ昔から知ってました。と言っても読んだことはなかったのですが、20年くらい前に、知人から「きっと気に入ると思いますよ。」と言われていた音楽モノのBL先駆け小説。


この小説が出た頃は、まだ”ボーイズラブ”という言葉自体なかった気がしますね。*1で、映画のほうですが、見る前はすごく抵抗がありました。原作に何の思い入れもない私ですが、それでもこのキャストイメージは、原作とは大いにかけ離れているんじゃないか、と。


そう実は私、守村悠季役の高崎翔太君がニガテ*2だったのです。見た目も演技も・・・。映画を観終わっても、やっぱり苦手としか言いようがない。タクミくんシリーズの最終章「あの、晴れた青空」にほんのチョイ役で出演して時にも、「この子が”フジミ”やるのか~」とテンションが下がっていました。とはいえ、実際に「富士見」を見ると主役として、予想以上に頑張っていたのは実感できました。


溢れるほどの気力が眼力となって、こちらに伝わってきましたもの。顔立ち自体が濃いし、顔の筋力も良く動くので、見ていて若干しつこさを感じてしまうのが残念。一方、桐ノ院圭役の新井裕介君の方が、役者としてはまだまだ荒削りな感じでしたが、その分、何を考えてるか分からない天才指揮者のクールっぽさとシンクロしてきて「役得だなあ」と思いましたね。


物語は、天才コンダクター桐ノ院圭が、二流の富士見二丁目交響楽団(市民楽団)に突然現れ、ダメダメだった演奏を変えていく、という成長物語の中で、実は、第一ヴァイオリニスト(コンサートマスター)である守村悠季に秘かな想いを寄せていた、という筋立て。団員のフルート奏者・川島奈津子が、入ってちょっとした三角関係もどきもありますが、基本はシンプルで分かりやすいBLの王道ストーリーです。

【見せ場がイタイ】


まあ普通のBLと違って冒頭30分でいきなり強姦シーンが出てきちゃうのが、覚悟していたとはいえ・・・な、ところかも。なんとなく獣っぽかったです。”そのケ”のかけらもない、健康かつ若い男優2人が無理してやらされている感が漂っているので目を背けたくなるような、軽く嫌悪感を抱いてしまいそうな、全く萌えようがないシーンにひきつります。もっとも頑張ってるのは痛いほど分かる、特に高崎君のほうは、「撮影後、泣いた」というのも理解できます。


まあ、強姦シーンが残酷なのはまともなのかもしれませんが、そういうのを見てるコッチ(視聴者)は求めてないんだよなあ~。こういうシーンこそ撮影技術の見せどころ!とうまく匂わせるくらいで済ませる演出にすればいいのに、と残念に感じてしまいました。襲う側の新井君は、クールというより淡々としすぎていて、妙に不感症っぽく見えちゃうし(笑)。


このハードコアなシーン(?)で一旦、幻滅したんですが、その後、心理描写に移っていってからは大丈夫でした。訥々と悠季への愛を語る桐ノ院が、どんどん魅力的に見えてきます。彼は谷原章介さんを若くしたような感じ、の青年ですね。上にも書いた通り、役者としては経験不足が見え隠れしますが、そこが逆に初々しく、恋愛に不慣れな桐ノ院と徐々に重なってきます。


対する高崎君は最初から最後までブレずに安定していました。ただ私自身は、残念ながら(相手役が誰、ということに関わらず)彼には色気をあまり感じませんでした。終盤、悠季の前から姿を消そうとする桐ノ院と、初めて逃げずに対峙しようとする悠季のシーン、ここは胸がキュンとなって、中盤までのまどろっこしさを忘れさせてくれました。最後まで見て良かったなあ、と思った瞬間です。


悠季の夢の中でのラブラブシーンも「さすがダテにBL映画撮ってないわ、監督」と感服させられたましたし、もしかしたら、当初私が思っていたよりずっと良い映画だったりして?!


他に巡査役で1カットのみのカメオ出演馬場良馬君。黒髪だったので、やや大人びて見えたせいか、一瞬、誰か分かりませんでした。また、主演二人の間で、図らずも恋のキューピットになってしまってる川島役に岩田さゆりちゃん。「金八」シリーズ出演からだいぶ大人になったなあ、と感慨を抱きました。


そして、最も驚いたのは、こんな低予算の(失礼)BL映画に、往年の人気俳優である国広富之さんや宮川一郎さんが出演していたこと。「一体、この映画ってどういうランクの作品なわけ?!」と、一瞬考えてしまいました。そういえば、他の出演者も脇役とはいえ、いくつものドラマで見かけることの多い役者さんが固めていた感じです。うーん、BL映画の地位が上がって、さほど抵抗がなくなってきたのか、それとも彼らに作品を選んでる余裕がないのか。


「タクミくんシリーズ」の映画化は続きましたが、この「富士見二丁目交響楽団シリーズ」はどうでしょうか。私の中ではちょっと微妙・・・な感じがしてますが。むしろ、過去の遺産を利用するより、新しい形のBL映画をそろそろ見せてもらいたいなあ、と思っています。最後に、黒のVネックシャツ姿で指揮をとる新井君が千秋先輩(のだめカンタービレ)に重なって見えましたね、定番アイテムなんでしょうか。


DVD絶賛発売中。やっぱりカップリングとして見ると、この2人では正直ソソラレナイです。


原作小説です。映画を観終わって、小説も読んでみたくなりました。でも長いシリーズなんですよね、これも。

*1:「タクミくんシリーズ」にも通じますが、JUNE小説なんて言われていたんじゃないかな。

*2:別に嫌いなわけじゃないけど、なんとなく苦手、というレベルです。