雅・処

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映画「海難1890」と「杉原千畝」をハシゴ鑑賞

味わいの異なる歴史的映画

昨日、たまたま封切が同日に重なったため、久しぶりに新作映画2作品をハシゴしてきました。もともと前売券を買っていたのは、「海難1890」のほうで、日本とトルコの合作という珍しさや、あまり人々に知られていない感動的実話*1ということがきっかけでした。「杉原千畝」のほうは、再現ドラマなどで見知った内容でもありましたので、TV放映を待つか、ちょっと迷ってしまいました。


日テレ協賛ということで、唐沢さんと小雪さんがやたら番宣もしていましたし、封切の朝も特別番組が組まれていて、いかにも、な宣伝手法にちょっとシラけた思いはあったのですが、それでも杉原氏の”6000人のユダヤ難民を救った命のビザ”の話は魅力的で、ついつい見てしまうのです。


結果的にいえば、「杉原千畝」の面白さが印象的でした。外国の映画監督ということで、日本映画のようなただただノスタルジックに流れそうな題材を非常に客観的に、それでいて杉原氏に関連する人々の人間性まで温かく描いていて感心しました。さらに、当時のヨーロッパ各国の利害関係や対立なども反映された、歴史ミステリーの要素もあって、ラストまで全然飽きず、想像を超えた面白さでした。


外交官として有能であり、情報収集能力に長けていた(スパイ活動に重なるような)杉原氏について、初めて知った事実も多く、知った気になっていたのが恥ずかしいほど、勉強になりました。ビザの話をやたらと盛り上げるのではなく、あくまで杉原氏の人生の中のひとつの事象として、さりげなく扱われているところが心憎い(笑)です。


「海難1890」も題材となる歴史的事件が実に感動的で、日本とトルコの友情に繋がる内容でしたし、とても丁寧に描かれていて決して悪くはない作品なのですが、いかにも日本映画らしい情緒過多な演出がやや鼻につく、ところもあって少し残念でした。トルコ側の描写は、舞台背景など知らないことが多く面白かったですが。


両作品とも歴史的な事件を題材にしていますが、決して昔のこと、とばかり言えません。「海難1890」のテヘラン無差別攻撃前の脱出劇と「杉原千畝」でのポーランド人難民は、まさに現在のシリア難民を思わせるような話でしたし、関東軍ナチスドイツの悪行もISを連想させるような残虐性を感じさせて胸が痛くなりました。


それから見慣れた日本映画であっても、合作で他国のキャストやスタッフが入ることによって、独特の緊張感が生まれて、いつもと違う質感が出てくるんだなあ、と改めて感じました。このところ日本映画は、原作ものの映像化が多く、それ以外は作風がどちらかというと変わりばえのしないものばかり。冒険が少なくなっている印象を受けます。制作費や作り手の問題もかなり多いのでしょうね。


とはいえ刺激的な映画も、数は少なくとも作られているのは確かなので、自分の選び方にも問題はあるのかもしれません。予告を見ただけ、あるいは映画の冒頭を見ただけで、ラストまで推察できるような映画はやや食傷気味なので、もうちょっとヒネリの利いた作品を探してみたいと思いました。

*1:私自身は、2年くらい前に本で読んで出来事自体は知ってましたが。