雅・処

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映画「怒り」 アジアで続々解禁

公開後とうとう一ヶ月

映画「怒り」が公開された9月17日から早一ヶ月が経ちました。だいぶ落ち着いてきましたが、まだモヤモヤっと漂っております。自分の琴線に触れた作品に出会うと、ダメダメな人間に陥る私。すっかりその世界観から抜け出れなくなっていました。ノロノロと読みだした原作もようやく終盤に向かい、直人を失った優馬の喪失感にまた飲み込まれている状況。。。


ネットでいろんな人の感想を読んでいて、やっぱり自分の中ではイマイチ綺麗にまとめきれないので、総論めいたことが書けないでおります。ただ、3つのエピソード(原作では刑事のエピソードも追加されてますが)を並べて、男と男のゲイカップル、ワケあり男とワケあり女、少女と少年と正体不明男の対比を出す鮮明に出してストーリーへの吸引を強めている、ということが理解できました。


そしていずれの場合も、普通の幸せな家庭環境でない、一見平和な日本社会に潜む暗部や歪みを描き出していることが実感されます。更に李監督の韓国系の熱い血が映画の肉付けに結びついていたこと、など、まあ外側の構造などをうっすら理解してきた状態です。「幸せなどこにでもある家庭」という幻想こそが、最近とみに目立つ”血縁関係をもとにした殺人事件”などと結びついてうすら寒くなったり。


この映画、きっとエンディングで何一つ解決していないのが、モヤモヤ感の正体なんだろうなあ~。

「怒り」シンドロームはアジアへ

【台湾】

日本人の多くの方の感想も実に多様で面白いのですが、それ以上に面白いのが海外の反響で、ここ2週間ほど台湾・韓国の状況をネットで追っかけていました。台湾では、10月7日という比較的早い段階で上映が決まり、妻夫木君人気もあったせいか日本と時間差があまりない形で、ゲイ演技が話題になっていました。


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公開3日間でベストテンの10位に上がっているというのは、小規模公開ではなかなかの好成績かもしれません。日本の予告に中国語を付けたトレーラーも9月末には公開されていましたし。中華圏では、「ゲイって同志という呼ばれてるんだ」なんて新たな知識(笑)も仕入れてしまいましたよ。一番びっくりしたのは、公開前日の6日に妻夫木、綾野ペアの全裸写真をドッカーンと公開していたこと。


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たとえば、こんな感じですね(上記リンク参照)。日本ですら非公開だったのに、「この差はなんなんだ!さすがは中華圏」とワケのわからない感嘆。まあ、その紹介文もかなり煽情的でしたけど・・・。昔と違って日本明星の知名度も落ちてきているだろうし、このくらいの話題性を(出血サービス)出さないと動員難しいのかもなあ、と素直に受け止めました。


最近は映画自体への批評なんかも増えてきて、自動翻訳機能で「なんとなくこんな内容かな」と類推しながら読んでいます。とても真面目な分析もあって、日本国外の客観的な目という点からなるほど、と感心することも多いです。ここでうまくそれをまときることは難しいので、割愛させていただきますが、映画が投げかける「信頼」「愛」という問題を真摯に受け止めていることは違いないと思いました。

【韓国】


一方の韓国では、恒例の釜山映画祭が10月6日から開催されており、「怒り」は、7日、10日、15日の3回上映されました。渡辺謙さんと李相日監督が訪韓されていたので、いくつか日本でも紹介されていましたね。3回とも前売りチケットは、1分程度で完売。中規模のクラスの映画館で上映されたようですし、初回はティーチイン(李監督と謙さんのトークショー)あり。


興味深かったのは、映画祭開催以前には「怒り」についての公的な記事をあまり目にしなかったこと(前評判は決して高くない、という状況)。あまりに「君の名は。」旋風が強くて隠れた感もあり。一部関係者の間ではそれなりに話題にはなっていたいたようですが、李監督の作品は、「悪人」「許されざる者」に続き、釜山映画祭の招待が3回目であること、それら過去の作品がそこまで興行的に成功していなかったこともあり、ことさらに注目を浴びていない感じはしました。


李監督が韓国系の監督ということは、結構知られているみたいですが、「韓国人が最も愛する日本人映画監督」と言われている是枝監督より、やや地味めのような印象です。日本人監督は、他にも犬童監督、岩井俊二監督なんかは現地マニアに知られていますけど、李監督はそこまでではない感じ。是非、これから挽回(笑)して欲しいです。


但し、7日の映画祭上映前にマスコミ記者を集めての試写会を開いて、本編お披露目となってからは、掌を返したように高評価が並びました。「2時間20分という長い上映時間で全く退屈しなかった。」「役者がいずれも破格の演技を披露」と褒めており、エンディングの救いのなさなどについても、「回答ではなく質問をなげかける映画」という謙さんのインタビューが功を奏したのか、あまり言及されていませんでした。


観客のコメントは、まだそこまで多くはないですが、映画マニアと思われる方の「ここ数年間で見た日本映画の中で最高の出来」「スタンディングオベーションしたかった」「涙が止まらなかった」という賛辞もあったり、概ね好評のようです。もちろん、日本同様賛否両論であることは違いない映画ですが。意外だったのは、同性愛コードには日本以上に抵抗が強い、と思われる韓国人でもそのことを挙げている人が少ないことです。


あくまで比較的、映画祭慣れした目の肥えた映画マニアが多いのか、一般公開(公開時期未定ですが、来年上旬までには)になったら、同性愛描写への抵抗なども結構目にするかもしれませんね。違法ダウンロードが多い国なので、できれば日本でDVD販売前に公開して欲しいなあ(DVD映像に字幕を付けたしたものがすぐに出てしまうので観客動員数につながらない)と思っています。


日本映画は小規模公開が多く10万人も集めれば大ヒット、というお国柄なのですが、すでに1月韓国公開が決まっている「君の名は。」とまたもや同時期にバッティングするは嫌だなあ、と。


韓国人の映画感想は、日本人とは異なった文化&社会に裏付けされてて、細部への視点も違い、単純にすごく面白いです。映画慣れしてる国民性なので、映画に対して要求もすごく高いですし、どういう立場であれ自分の意見がハッキリしているのでお茶に濁さないのがいいんですよね。日本人は、どこかで人の目を気にして曖昧になりやすいし、かといえば、極端に”好き嫌い”だけで語ることが多いので、そこまで真剣に読める感想が少ない感じで。

【香港】


さらに10月28日、29日になると香港アジアン映画祭(香港亞洲電影節)でも「怒り」が公開されるようです。そちらもまた何かしらの感想が出てくるかな。正式公開は、11月10日からのようで、役者紹介と中国語と英語の字幕が踊りまくりの派手な予告編(笑)に圧倒されました。
【電影預告】《怒》(Rage) 11月10日真相"怒"面 - YouTube


古くはレスリー・チャントニー・レオンの「ブエノスアイレス」なんて同性愛映画もあったりして、同性愛に対しては寛容と闘争のイメージがあるし、香港映画界としてしてプライドも色濃い地域ですから、どんな感想が飛び出すか、気になります。


それにしても、レスリーが生きていたら、是非、妻夫木君のゲイ役見て欲しかったなあ。。。


miyabi2013.hatenablog.com
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