雅・処

好きなアイドル・俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

2016年BL的演劇 感想

『ゴーゴーボーイズゴーゴーヘブン』阿部サダヲ岡田将生

昨夜、WOWOWで放送された『ゴーゴーボーイズゴーゴーヘブン』。生で観ることはできなかったのですが、最近やけに資金力の高さを感じさせる(笑)WOWOWがやってくれました!まあ、メジャー系役者も出ていますし、大人計画ですし、私は名前だけ知っていた松尾スズキさんの作品というのもあって、BL・ゲイ系路線を取り上げたことに軽く驚き&喜びがありました。


人気俳優の阿部サダヲとイケメン俳優枠の岡田将生君出演、更には大女優の寺島しのぶさん、更には芸達者な大人計画の役者達、ということで、どんな世界観か?と思いましたが、義太夫節と2015年のアラブ紛争地域を思わせる描写と、アジア圏のゲイ文化を融合させたような、いわゆる”いかがわしい日本演劇”でした。


その中でも阿部さん特有のコメディーの”間”の見事さを楽しめましたし、岡田君は生白くて、ローマ系美少年を思わせる透き通るような綺麗な肌と持前の美貌を見せてくれてそれなりに楽しめました。舞台放送の最後に鈴木さんが「BL」として説明していたのですが、ちょっと違和感。確かに、少年売春の話も出てくるし、過去に少年を愛した男達2人の日本人の話がメインですし、岡田君ともキスや疑似的なカラミのシーンもあるんですけど、全体的に私が求める「艶っぽさ」が足りないんだよな~、と。


ノンケの作り手が「BLってこんなもんでしょ?」と興味本位と手探りで作ってる、という居心地の悪さ。まあ、この作品はロマンス系BLではなく、リアルで乾いた現実感の中で描き出している娯楽系演劇からかもしれません。3時間飽きずに見られた、ということと(寺島さんの落ちぶれた女優シーンが若干邪魔ではありましたが)、鈴木さんも言われるように「女性は綺麗な男性が見たい」という根源の欲望に狙いを定めているのは確かですが、やっぱり”そっちのセンスのない人”って、やっても所詮・・・という感じでした。


最近は、若手イケメン俳優の突き上げが激しいせいか、若干影が薄くなってきた感じのある岡田君。こういう「少年美」がピッタリかと思うとそうでもなく、ところどころ見え隠れする男らしさにハッとする瞬間がありました。この芝居当時は26歳かな、確かにギリギリの線だったかもしれません。むしろ、阿部さんのほうがずっと色っぽくて、彼が岡田君に向けるオドオドとした眼差しのヤバさにときめく、という。演技巧者って何をやってもイケるもんですね。


natalie.mu


『鱈々』藤原竜也山本裕典

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10月に用事で上京し、なんとかチケットを入手してみたのが、韓国の劇作家の作品である『鱈々』。こちらも、私が見たいタイプのBL系演劇ではなかったのですが、同性愛がタブーである韓国らしい、ちょっと古風なお芝居でした。倉庫の中で中身不明な段ボールを並び替えるという単調な仕事に従事している2人の男の話、という異色の設定ですが、内容的にはかなりオーソドックス。一昔前の同性愛もの、という感じがします。


山本裕典君演じる同僚キームへの秘めた恋に苦しむ男ジャーンを藤原竜也君が静かに演じています。キームはやがて女を作って、倉庫から旅立っていく、それに対してジャーンが「頼むからここに居てくれ」と懇願する姿が切ない。キームにとってはただの几帳面で融通の利かない同僚であり、”うるさい世話焼き男”でしかないジャーンの存在ですが、それでもどこか後ろ髪を引かれている部分もあって、実は想いを知ってるんではないか?と類推する瞬間もありました。


古風だけれど、実際にノンケの男性を愛する男性が直面する、悶々とした苦しみ、悲しみ、情愛が閉塞的な環境と相俟ってやり場のない痛みとしてそこにある、という感じでしたね。ストーリーとしては、特に驚くような展開もなく予定調和的なのですが、4名の登場人物がそれぞれになんとか厳しい現実の前で足を踏みしめて耐えているところが共感を持てました。


それにしても一番私が気になったのは、藤原君の喉の調子。3,4日前に見た人も言っていたそうですが、かなり声を潰していて、「大丈夫か?」と心配になりました。舞台経験が豊富な人なのに、珍しいな、ちょっと残念だな、と。対して、山本君のほうはビンビン、台詞が聞こえてきました。偉そうなことは言えませんが、以前に見た『トロイラスとクレシダ』(2012年作)より、やっぱり巧くなってるなあ、という印象。


秘めた純愛って、見ていて最も萌える要素なんですけど、やっぱり誰でもできる、というわけではないんですね。勿論、演技巧者ならばある程度の完成度までは持っていけるのでしょうけど、”醸し出す色気”が全くないタイプは無理かもしれない。確かに、これまでの作品群の中で、藤原君に”アブナイ色気”を感じたことは一度もないので、今回も”苦悩に酔ってる男”に見えたのかもしれません。


妙に安定感だけはあって破綻がなく、いつ見ても「自己陶酔型」の演技で、このまま歳を重ねると役者的に方向性が見えなくなってしまいそうだなあ、藤竜。もともと恋愛映画があまり向かない人でもあったので、器用貧乏になりそうな予感。まあなんだかんだいっても彼は生き残るでしょうけどね。


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番外編『お気に召すまま』成宮寛貴小栗旬

師走を騒がせている一連の騒動で、「役者としての成宮寛貴ってどうだったっけ?」と思って、見返したくなってきました。このまま彼の出演作が闇に葬られる危険性もあると思うと、さすがに痛ましく残念に思う気持ちもありますし。幸いにも綾野剛君の2014年蜷川作品『太陽2068』をWOWOWで見たばかりであったのと、2004年『お気に召すまま』初演のDVDを所持しておりました。


恥ずかしながらそのDVDも買ってからだいぶたちますが、今回初めて見返した、という状態でした。また、2007年の再演を見てるはずなのですが、月川悠貴君に目が釘付けだったせいもあって、ほとんどストーリーを覚えてないことに愕然としました。こんなに記憶力って落ちるものなんだわ・・・汗。しかし、改めて見てみると成宮ロザリンド、めちゃくちゃ可愛い。それにほとんど主役だったのですね。てっきりオーランド役の小栗君が主役だと思っていました。


自分の過去ブログを読み返して、ちょっとだけ思い出したのですが、私はロザリンド役として女形を演じる成宮君のしゃがれ声に多少の嫌悪感を抱いていたようです。演技自体は、恋は盲目チックな乙女心をまっすぐてらいなく演じていてかなり好感を持てるのですが、声がどうにも嫌すぎて。。。それも男役ではなんとも感じないのですが、女役は本当に苦手。決して、鈴を転がしたような高い声でなきゃ、というわけでもないのですが、ちゃんと訓練されてない”下品さ”が我慢ならなかったんですよね。


今となると初演の映像しかないので、余計に演技の粗削りさが目立つのですが、それでも「体当たりの必死さ」はすごく魅力的でした。だんだん可愛くて仕方なくなる(笑)。皮肉なもので今となると、彼がこの役を生き生きと人間性豊かに演じられるのも当然、と思ってしまうのですが、ちょっとぶりっ子で甘えたがりなチャーミングな部分が自然に醸し出されているのかもしれません。故蜷川さんが成宮君をロザリンド役に抜擢した先見の明に感服するばかり。


それからキャリアを重ねてきた成宮君を評して、「(他の役者とは異なり)成宮にしかない翳の部分や独特の個性を生かせばいいのに」と惜しんだ、ということも、彼の根っこの部分をいろいろと見抜いていたんだろうな、と思います。もし、蜷川さんが存命ならば、「バカヤロー!とっとと日本に帰ってこい!」と一喝しただろうなあ、と想像してしまいます。たとえば何年かかって復帰しても、芸能界に待っていてくれる人がいるのといないのとでは全然違うでしょう。


輝いていた頃の演技を見ながら、なんかいろいろと残念だな~と本当に実感しています。たった数年でフェードアウトしてしまう役者が多い中、せっかく生き残っていた人なのに。とはいえ、のりピーも地味に復活しているし、戻ってくる可能性も半分はあるのかな。


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