雅・処

好きなアイドル・俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

スタジオライフ 『カリフォルニア物語』観劇記(3)

個性のぶつかり合い

ようやくメイン以外のキャストの感想が書ける!のが嬉しいです。20人以上も役者が登場しますので、どうしても全部は書ききれません。今回取り上げる方々は、私の心のアンテナにひっかかった方になってしまいます。きっと魅力的なのに見逃している役者さんもいるんだろうな、と思うと恐縮ですが。

《スウェナ:ヒースのGF》
スウェナ嬢は、伊礼彼方さんとライフ永遠のヒロイン・及川健君。伊礼君は、チリ人とのハーフということで目立つ顔立ちですし、ミュージカル『エリザベート』の次期ルドルフ役に決定した!と聞いて興味深々でした。体格も良く、豊満なスウェナ(笑)となっていましたが、初めての女役だとは思えないほど生き生きと演じていて、気に入ってしまいました。


仕草などはかなり・・・ガサツでオーバーリアクションでしたが、そのあたりがアメリカン・ギャルっぽくて可愛いです。よく動く表情と何モノも恐れぬ度胸の良さ、更にそこはかとなく漂う愛嬌が、場を明るく盛り上げます。雑誌の及ちゃんとの対談やネットインタビューなんかでも、非常に演技に対して真摯に向き合って、「貪欲に吸収しよう」という意欲がヒシヒシと感じられて◎。あのポジティブなノリで、慣れないライフの世界に挑んでいってる姿がとても素敵でした。


対する及ちゃんのスウェナ。2年ぶりというブランクを感じさせない、いつもの”及ちゃん”でした。昔は万年少女だったけど、さすがに大人の女性を感じさせる部分が見えて「おっ」と小さな驚きが。イーヴに反発して、嫉妬心を吐露するシーンでは、怒りだけでなく、深い哀しみも伝わってきて余韻が残りました。大好きな松本君、の腕に抱かれて幸せだったのではないかしら(笑)。

《テレンス:ヒースの兄》
真面目一筋のテレンス役は、(個人的に楽しみにしていた)三上真史君とHILUMAさん。しかし、どちらも同じような役作りで、面白味やら役の広がりが不足していてちょっと残念。まあ、脚本がブツ切れなので感情移入しにくい(汗)のは気の毒に思うのですが、この役、上手く演じれば結構”もうけ役”になったと思うのです。


父親の求める理想の息子像を演じ続け、誰にも本心を打ち明けられない閉塞感を抱えているテレンス。弟ヒースにも一歩遠慮したような態度をとっていたが、ようやく兄弟の絆を感じることができるようになった矢先の不幸。実直で誰にでも優しかった兄、でもその心の奥に隠されていた悶々とした苦しみ、それがヒースに宛てた手紙で明らかにされる。


血の繋がったたった一人の弟への嫉妬と強い愛情を、短い言葉の端々に丁寧に織り込んでいってくれたら、もっと見せ場になっただろう、と思うと「勿体無い・・・」です。とても誠実な演技をするお二方だと思いますが、「与えられた配役をキッチリ演じること」に集中していて、どこか硬さが感じられました。三上君なんて、刑事役のほうがリラックスしてて、楽しそうに演じているようでしたし。

《スージー:兄テレンスの婚約者》
このキャラクターは好きでした。密かにヒースの想い人になっていた彼女は、スワソン家で板ばさみになる辛い立場にいますが、清楚な佇まいの中にも、ちゃんと芯がある実に魅力的な女性です。奥ゆかしい女役ぶりは共通ですが、仁田宏和君はちょっとチャーミングで可愛らしさを醸し出していました。


ほんのわずかな差で、私は栗栖裕之さんのスージーが気に入りました。男性が化粧している、と分かる若干ごつい容貌ですが、伏せ目が色っぽく、そこはかとなくヒースを誘惑してる気がしてしまうのです。麻薬中毒になったヒースにすがられた時なんて昼メロか(笑)と思うくらい、見てはマズイ気がしました。


普段、男役しかしない(当然ですが)役者にとって、「女役」というのは一段またベールを被せる作業が必要なだけに立ち居振る舞いなどの見せ方にも気配りが必要で心理的なハードルも高いのでしょう。その分、集中力や気合が全身から漲って、静かな緊張感を生み出しているなあ、と思いました。だから女役って面白い!!わけです。

《ブッチ:スウェナの兄》
両キャスト(tekkanさん、カサノボー晃さん)も歌が上手い!聞かせていただきました。そして歌が上手な人って芝居の勘とかリズム感が良い、と聞いたことがありますがまさしくそうですね。

【見慣れているけど新鮮なライフ陣】

クセの強い人物を何役も演じまくりだったのは、スタジオライフの面々。曽世海司さんの芸達者ぶりには、相変わらず脱帽なのですが、ちょっと今回はウケを狙いすぎだったかも。。。メインのインディアン役は、あの”カツラ”はともかく、やはり安定したナレーションぶりが心地良かったです。一番好きだったのは、ヒースに「クソばばあ」と暴言を吐かれる嫌味ったらしい叔母様役でした。女役を最も楽しそうに演じてる人だけあります。

バリトンボイスでダンディなパパ役を演じるかと思えば、別チームで”アヤシイ女優”ルシンダを嬉々として演じる石飛幸治さん。そのギャップに心底惚れています。劇団内で歌も唯一お得意でホッとさせてくれましたし、表でも裏でもライフの”オネエキャラ”を、これからもやり続けて欲しいものです。

藤原啓児さんは、今回オヤジキャラをいくつ演じたのでしょうか。なんかやけに藤原さんが出まくりだったなあ、と。

実は一番心惹かれたのは、吉田隆太君の女役でした。Aチームのシャーロットママ、Bチームの娼婦マリアン、そこに立っているだけで本物の、「良質の女」を感じさせるのです。入団したての頃から、彼の”女役”は際立っていて、見ているだけでウットリとさせられたものですが、また一段とほのかな色香を増して麗しくなっています。


ただ本公演になると、三上俊君・松本慎也君・関戸博一君など同期のほうが大きな女役をもらってしまうのが、前から「解せぬ!」と思っていました。上手いからこそ脇役にまわされてしまうのかもしれませんし、熱血タイプでもないので、比較的地味に見えてしまうのかもしれませんが、もう長いこと吉田君には大輪を花開かせて欲しい、と願ってやみません。


ということでそろそろ公演も折り返し地点となっているようです。なんだかんだ言っていろいろと違う面を感じさせてくれる公演でした。新しく知った外部の役者・アーティストの皆さんにはいつかまた違う機会でお目にかかれたら、という楽しみが増えました。出演者の皆さんも、やる気満々だったり、かなり公演を楽しんでいるのが伝わってきて何よりでした。


5月からの『夏の夜の夢』再演もおかげで一層楽しめることでしょう。また大ちゃんのハーミアが大暴れしてくれるでしょうしね。今回の舞台で「劇団スタジオライフオンリーの公演を見てみようかな~?」と思ってる、そこのアナタ!(笑)これは、”分かる人だけに分かる”類のお耽美芝居ではなく、何にも考えないで大笑いできる、ライフでは珍しいタイプの芝居です。どうぞお楽しみあれ!(と最後に劇団の広告してしまいました。)


スタジオライフ 『カリフォルニア物語』観劇記(1) - 雅・処
スタジオライフ 『カリフォルニア物語』観劇記(2) - 雅・処
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