雅・処

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チェリまほ VS おっさんずラブ 似てるようで異なるドラマ

BLドラマだけど全然異なる作風


おっさんずラブ」(通称:OL)にハマり、今は「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」(通称:チェリまほ)に絶賛大ハマりしている私が、この禁断の比較をぶち上げます。まあ、チェリまほのオンエアは終わってませんし、優劣に拘るつもりもありません。


ただ、「チェリまほ」を見てるとどうしても「おっさんずラブ」に思いを馳せてしまう瞬間とか、あの色々なトラウマがシンクロしてきて、早めになんとなく心の整理をつけたくなったような感じです。


どちらかのドラマしかハマれなかった人もいるでしょうし、ある意味で一緒にしたくないと拒絶している人もいると思うので、どちらも素直に楽しめた自分は(節操ないけど)ラッキーです。


おかげで田中圭町田啓太というお気に入りの役者もできましたし。大袈裟ではなく、まさに生きる糧となっています。まずは、この2つのドラマの共通点をサクッと挙げましょう。

【共通点】

①深夜帯の放送
 ・おっさんずラブ 土曜 23:15開始 テレビ朝日
 ・チェリまほ   木曜 25:00開始 テレビ東京
②BLラブコメディ
③キャスティングは弱めで中堅の俳優が主体
④制作費少ない(TV局の期待値低め)
⑤若手ホープのプロジューサー・監督・脚本家を起用
⑥女性ファンが人気を支える
⑦主演カップルの写真集売上増、雑誌特集多


非常に共通点があります。どちらも深夜の地域限定放送で、鳴り物入りで始まっていない(TV局の期待度の低い)チャレンジ枠のドラマであること。口コミ人気が高く、BL作品だけに女性人気が極めて高いこと。


キャスティングも主役級の人気俳優ではなく、脇役メインの実力派を集めていること。チェリまほは、更に年齢層が若手俳優になっています。勿論、制作費の関係もありますが、すでに人気の出てる俳優をキャスティングするのは難しいということもあるでしょう。


製作陣にも若手を起用しており、型にしばられないドラマ作りができる(自由度が高い現場)ので、今を切り取ったポップな作品に仕上がる傾向。役者に寄り添った斬新かつ繊細な演出ができるため、製作陣と役者の距離が近いことも特徴。


資源の少ないことを逆手にして最大限に強みを伸ばせる環境ができてます。番宣が少ないため、SNSをフル活用して口コミで盛り上げている、この手法は「おっさんずラブ」が開拓した、と言ってもいいくらいですね。


オンエア前後に公式Twitterやインスタから集中的に情報や写真を供給し、役者のインスタや雑誌情報なども公開、これでどんどん盛り上がっていきます。インフルエンサー的なファンの書き込みが続けば、相乗効果となってドラマ人気に跳ね返ってくるでしょう。


おっさんずラブ(不動産編)では、ファン心をくすぐるハッシュタグを創造的につける公式Twitterやインスタでの宣伝が格別上手でした。隠れアカウント(武蔵の部屋)あり、ファンの心を鷲掴みにして、宣伝効果を圧倒的に引き出していました。


OLほどの発信力はないかもしれませんが、「チェリまほ」のTwitter発信は、このところかなりマメで、ちゃんと時節に合った内容や(他局出演にも拘らず)出演者情報を放出してくれるので、ホンワカと応援したくなります。


ドラマ人気が高まる裏には、SNS発信という無償の努力がカギになってますし、人気が出たらなお一層力をいれないといけないのでしょう。決して過度な宣伝を押し付けないよう、押したり引いたりセンスも大事なので大変だと思います。

【2つのドラマの比較】

分類 おっさんずラブ チェリまほ
①ドラマの性質  BLコメディ人間ドラマ BL王道純愛ドラマ
②原作  オリジナル コミックス(原作者:豊田悠)
③放送時間  パイロット版 90分  
連ドラ ・不動産編(S1) 45分×7話 ・本編 30分×12話 
映画 ・劇場版 2時間  
続編 ・in the sky(S2) 45分×8話  
   ・番外編 5分×4話  
スピンオフ ・in the sky 10分×2話 ・20分×2話 バレンタイン編・六角編・柘植×湊編
④日本への影響  2018流行語大賞ノミネート、LGBTの理解促進、後続BL作品へ裾野拡大 視聴者数が限定的なので影響希少
⑤世界への影響  世界トレンド1位 ※主に日本 ◆世界トレンド5位(2020.11.20付)日本1位、タイ2位、ベトナム3位 ◆台湾KKTVランキング1位
⑥役者への影響  田中圭 大ブレイク、出演俳優5人が主演に抜擢 赤楚衛二・町田啓太 人気急上昇中 ※写真集重版
⑦受賞  ドラマ賞総なめ、日経エンタ 西の横綱  
⑧公式グッズ販売  ◆DVD・Blu-ray 5万セット ◆公式本16万部 ◆サントラ3枚 ◆グッズ多数 ◆DVD・Blu-ray(2021.3.24発売) ◆サントラ ◆公式グッズ
⑨続編  映画、おっさんずラブin th sky  
SNS  公式TwitterInstagram、武蔵の部屋 公式Twitter
⑪配信サイト  Abema TV(無料) TSUTAYA プレミアム(有料)
⑫イベント  イッキ見上映会・舞台挨拶・フェス・オケコン 赤楚・町田インスタライブ(2回)
オリコン満足度 1位 98P(最終回) 1位 90P(最高)
⑭Baidu ランク  PL:8.1 S1:8.2 S2:6.3 劇場版:6.4 9点台(最高9.3)


違いの部分は、結構あります。一番大きいのは、BL作品としての内容と社会的影響度でしょうか。おっさんずラブは、男性の恋愛が主体なので形はもちろんBLの一種なのですが、作り手にBL作品を作っているという意識が薄かったと思います。


連ドラの元となった、スペシャルドラマの設定からして、黒澤武蔵部長(吉田鋼太郎)の春田創一(田中圭)への秘めた愛が発端で、そこに若い後輩が絡んでくる、という設定。


春田は無自覚に両者からぶつけられる愛にあたふたと翻弄される役まわりで性別を超えた愛情が織りなす人間模様そのものが最大の見せ場になっていたのだと思います。だから、製作陣としては「このドラマは純愛であってBL作品ではない」という言い換えがありました。


連ドラで後輩役がイケメンの牧(林遣都)に変わっても、その主軸は変わらずでした。黒澤部長の存在は、コメディとしてサラッと笑えて楽しめるカワイイおっさんで、ドラマへ引き込む原動力になりました。反対に牧は、真性ゲイの雰囲気を持ち、時折シリアスに転ずる役どころ。


春田と牧のキスシーンは3回もありながら、俳優2人の巧みな演技力もあって性別を消したような軽やかさが印象的でしたし、付き合う段階になっても「好き」を言葉ではなく態度で示す部分が多く、やや曖昧な関係のままラストへと疾走しました。


連続ドラマでは、脚本に書かれていない余白の部分で、役者達の演技力と想像力を結集し、春田の無意識下にある「見えにくい愛」を可視化して揺れ動く牧の苦悩と共に視聴者に感情移入させ、結果的にラクルな大成功をおさめました。


ところが映画化となったら、もう愛情面で描きたいものが無くなってしまった。春田と牧のその後には深入りせず、すれ違いで間をもたせ、ゲストをもてなし、不要な爆破などのエピソードで継ぎ接ぎ。作り手と受け手とのブレが一層大きくなって表面化してしまったのです。


男同士で恋愛関係が成就しても、職場と日常の些細な変化に戸惑いつつ、力を合わせて乗り越え愛を深めていこうという、まさに「チェリまほ」で描き続けられている恋愛ドラマの世界を「おっさんずラブ」で熱狂したファンは求めていた。


それを主演の田中圭君もしっかりと認識していた。だからこそ劇場版とin the skyで、愛の物語がブレブレになっていく脚本に悩ましい思いをしていたんだと思います。in the sky に至っては、一体どこに物語の主軸を置いていいか分からないほど迷走していました。


素晴らしい演者や優れた制作スタッフがいたにも関わらず、良くも悪くもBL作品の呪縛に囚われて、畑違いのものを提示するしかなかった。その挙句にドラマの大半の熱狂的ファンを失ってしまいました。これは悲劇なのか皮肉というべきか。


恐らくあまりにも短期間に巨大な成果と想定外の反響と実利的な収益を上げてしまったがため、じっくりと脚本を練り上げる時間が無かったという原因が背景にはあります。テレビ朝日は、目先の利益を追いかけて将来にわたる見通しを完全に誤ってしまった結果、落胆と虚無の闇が広がる。


それから、作り手側にも何があっても「逃げずに本気でBL作品を作る」という覚悟の欠如もあったでしょうし、「BLドラマ」に対して二の足を踏むような役者サイド(役者本人ではなく周囲)の種々の問題もあったかもしれません。


やはりBLドラマは、依然として大きな賭け、である部分はあるのかもしれません。当たった時の波及効果は絶大である反面、その揺り返しも大きい。成功しても失敗しても、です。何故なら、熱狂的な(一部の信者のような)ファンを生み出すから。


作品が完成した後は、その舵取りは受け手側に委ねられてしまうので、作り手と言えども制御できないというパワーバランスの違いがありますね。普通の恋愛ドラマなら、あっという間に興味は移ってしまいますが、BLドラマは希少価値が故に(良作であれば)影響が強く長く残りやすいと思います。

チェリまほに色濃く見える精神性と海外展開


おっさんずラブ」の制作スタッフ達がBLの極意を知らない、というのは責められないと思います。私自身も、BL畑にどっぷりではないので、受け攻めの論理とか実はどうでもいいし、逆に拘りはないほうが好ましい。


それこそBLにせよ同性愛にせよ、いろんな描き方があって、どのスタンスに立っても自由だと思ってます。ただ一つ重要なのは、カップル2人の恋愛感情の軌跡がちゃんと提示されていること。


一方が他方を好きで、相思相愛になり、成就するにせよ破綻するにせよ、そこに愛がちゃんと見えること。この最低限のルールを男性同士で見せてくれたら、それは全てBLと言っていいのだと思います。


チェリまほは、そのルールに則って、テンポ良く違和感なく良質のものを提示してくれる。「どうして彼(安達)を好きになったのか」の過去をひもとき、「どうして彼(黒沢)に惹かれているのか」と今につながる感情も的確に見せてくれます。


BLに限らず、恋愛作品ではこの原因と結果を蔑ろにしないことが大切です。そして感情表現の繊細さも、チェリまほを見ると、おっさんずラブ雑さが嫌でも目に入る。そこは役者の上手下手ではなくて、演出の違いだと思います。


チェリまほは、安達のマインドリーディング(魔法)を利用して相手の感情を読む、という特色があり、台詞の応酬より脳内で語る(独り言の)芝居が多くなってます。細かい感情表現を説明できる強みがあり、その分、黙ったまま目や表情で訴えかけるシーンが増えます。


更に繊細な手の動きをカメラで追いかけたり、主演2人だけに特化しているため、緊張感や集中度が高まるという好条件がありました。また、BLドラマで比較的邪魔な存在となりやすい「女性」の関与も極力排しており、視聴者は安定した精神状態で楽しめます。


LGBTQの理解の高まりもあって、主演の赤楚君や町田君のBLへの捉え方も柔軟性が高いように思えます。圭君や遣都君とそれほど世代が変わらないとはいえ、恐らくこの数年の差でセンシティブな問題などを受けて、随分と若い世代の価値観は変わってきたのではないか、と思います。


以前は、芸能事務所側がBL作品に抵抗が強くて拒否されることがあったそうです(とあるBL映画のパンフレットにも記載あり)。しかし、現在は下世話なことを言えば、BL作品も多数作られてきて質も上がってきている。


役者としては「BL=マイナーでリスキーな作品」というより、熱烈なファンが多く、チャンスも秘めてる分野の意識もあると思います。ゴールデンタイムでの出演作や映画が(話題にならないまま)無風で終わっても、BL深夜ドラマはニッチなニーズがあるので注目を集めやすい。


これからも一定層の新規ファンがついたり海外へ渡ったりという可能性がある有望なジャンルではあると思うので、どんどん作品が増えたり、拘らず出演する役者も増えるかもしれません。


日本では偉業と言ってもいいくらい、爆発的なブームと社会現象を引き起こしたおっさんずラブ。その人気は、アジアの一部に広がりました。ただし、脚本の粗や無理やり感が質の面では疑問を投げかけ、ドラマの評価はそこまであがらず終わってしまったようです。


チェリまほは、8話を終わったところで、海外への波及が日本以上で、小さな深夜ドラマの奇跡がアジア各国にファンを増やし、驚きを与えてます。台湾・タイ・フィリピン・ベトナムでは、ほぼリアルタイムで日本と同時にオンエアされており、中国・韓国・他諸国は非公式映像ですが(汗)楽しまれてます。


日本と同様、役者の人気も高まっており、写真集はかなり売れているみたいですね。強い魅力を持つエンタメ作品は瞬く間に世界中の人に見つかって国境を超える、というのが昨今のトレンドのようです。


海外への影響度の大きさはチェリまほがはるかに上回ってますね。ただし、海外にいくら広まっても直接的な儲けの確保には至らない。韓国なんかと違って、日本のエンタメビジネスの下手さは、ここにも影を落としてます。


タイBLは、各国でBLブームを武器にバンバン儲けてますが、チェリまほは質の高さは認められても、TV局側は今後、役者を使って国外で何か儲けようとか全く想定もしてないでしょう(事務所のしがらみもあり)。よってチェリまほのブームも一時的な盛り上がりで終わると考えられます。


赤楚君も町田君も、チェリまほが終われば新しい作品で新しい役回りを演じ、次第に安定基調に戻っていくでしょう。ただ、同世代の役者が多数ひしめき合ってて、1年ごとに勢力地図は変わっていく過酷な時代に、2人は実力で飛躍を手に入れたことは大きい。


2018年の田中圭君のような常軌を逸するというか、バブルのような人気爆発には至らないと思いますが、無名に近かった状態から一気に頭角を現していくことは間違いないと思います。それほどチェリまほという作品に赤楚君、町田君という主演2人の魅力は、欠かせない意味がありました。

忘れてはいけない、おっさんずラブの功績


そして、おっさんずラブがBLドラマ実写化という壁を「OPEN THE DOOR」&大成功してくれなかったら、チェリまほどころか他の優れたBL作品も制作されなかった可能性が高く、ただただマイナーな作品群にすぎなかったでしょう。


その意味での功績と言うのは、今なおものすごく大きいです。更に忘れてならないのは、OLスタッフは、ファンの声に耳を傾け、心からファンサービスに応じてくれたこと。大量のグッズ販売やイベント実現も元はファンの声に真摯にこたえたものでした。


圭君はじめ、役者の皆さんも2年近くもファンへの歩み寄りをして、団結力を高めて声援に応えてくれてました。たとえ続編の出来がイマイチでレベルダウンしたとしても(涙)、あの努力には感服と感謝と賛美は惜しみません。


だからこそ、OL民の端くれの一人としては、あらゆる楽しみ方を提供してくれたOLには足を向けて眠れない、という想いもあります。この二つのドラマが引き合って見せてくれた世界がどんどん発展することを、心から祈りたいと思います。


miyabi2013.hatenablog.com
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