今夏、念願叶って松尾芭蕉が「閑さや岩にしみ入る蝉の声」と句を読んだことで有名な山形の山寺へ行ってきました。もう20年も前から行こう行こうと思いつつ、なかなか実現しなかったのですが、ようやく。なにせこの山寺、”修験道の聖地”ということもあり、1000段もの石段を昇ってようやく到達する難所です。
子供時代、羽黒山で2000段超の石段を遊び半分に降りていって、帰りひどい目にあっただけに石段と聞くだけで及び腰になりました。しかし、折角思い立ったのですから、無謀にも暑い夏に訪れたい。天候カレンダーを見て、渋滞をなるべき避けるように、と日にちを8月12日に決めたのは、1週間を切った頃のこと。相変わらず思いつきで生きてる私。
奇しくもこの12日は、ビジュアル系バンドVersaillesのJasmine Youさんの葬儀の日(→ネットの噂で知りました)と重なったこともあり、天空をあおぐような神聖なお寺で祈りを捧げることもできるなあ、ということで気合が入りました。実際、彼の”安らかな眠り”をお祈りしてきたことで、逆に自分の気持ちがだいぶ慰められました。
山寺(宝珠山六石寺)は、860年慈覚大師が開山した天台宗のお寺。まずは麓から望む山寺の図。緑に囲まれてまさに絶景かな、という感じ。本当に全部登りきれるだろうか、という不安に駆られつつ、絶対登りつくぞ!という意気込みが芽生えてきます。母を麓に待たせていたので、2時間程度の行程を目標にしました。
左の写真は、登山口付近。木々が生い茂り、圧巻です。3人くらいしか一緒に通れないような幅の狭い階段が、ジグザグに作られていました。いくつかの院で構成されていますが、山道のあちこちに石像、木柱、地蔵、墓などが点在していて、山全体が巨大な寺になっていました。登る人、降りてくる人が絶えずすれ違っており、かなり多くの観光客が来ているのを実感しました。
登山口から30分も上がったところに、芭蕉が句を詠んだ、「せみ塚」(右の写真)があります。そこは、一息入れられるように軽くベンチなど置いてある休憩場。まだ全行程の半分弱ですが、汗が吹き出してきます。脱水症状を起こさぬよう、水分補給と休憩を適度に入れていったので、スピードは段々落ちてきました。途中、具合の悪くなった人が横になっているところも見かけたので、体調と相談しながら登らないと大変だと思います。
かなり高台に近づいてきて、建造物が入り組んできたあたり。この辺りからは、もう振り返ると”絶景かな”という感じで、山とはるか先に民家が見下ろせます。柵もなくて足元がやや不安になるほどの高所です。そんなところに売店と郵便ポストがありました。
郵便ポストは、一応日に一度は手紙を回収していくらしいので、配達人はこんな石段を毎日数百段も登ってるのかしら?(汗)と驚いたのですが、実は運搬用の小さなケーブルカーがあるそうです。
一番上の写真は、赤い小さなお堂は納経堂(写経を納める)です。そしてその先には、五大堂があり展望台となっていました。まさに素晴らしい眺め。昔、JRのローカル線から何度も見て感嘆していた場所がここだったのか、と思い、これまでのしんどさを忘れるような瞬間でした。総時間で3時間程度かかって、さすがに修験道の山だ、と実感しました。
戻ってから、上山(かみのやま)温泉街へ移動。温泉に浸かって旅の疲れを落としたつもりですが、慣れないことをしたもので、3日ほど筋肉痛におそわれ、階段を上がるのに大変難儀しました。
【おくりびとロケ地と上山城】
泊まった旅館で周辺地図をもらって気付いたのですが、なんと映画「おくりびと」ロケ地が宿から一丁曲がったところ(数百メートル先)にありました。本木雅弘と広末涼子演じる夫婦が住む家”コンチェルト”です。向かいの神社が仮の駐車場になっており、観光客が数人程度ですが、引きも切らずやってきていました。
道路に面しているので、すぐに分かるのですが、ここだけちょっと不思議な空間です。付近には「おくりびと」のロケ地であることを伝えるポスターやミニ看板がありました。家の周りの花壇も手入れがされていて、可愛い花がいっぱい咲いていましたし、裏側には川が流れていて本当に映画の雰囲気そのまま。
入口の扉も開けられており、100円の入館料で中にも入れます。映画では家の屋内はセットだったらしいので、もっともっと狭い空間でした。階段の一部も使われたそうで、2階にも上がることができました。監督、プロデューサーのサインやポスター、台本、映画についての紹介、古いレコードなどの雑貨等、あちこちに映画を忍ばせる”手作り感”漂うの品々が置かれていて、「おくりびと」ファンならば、一度足を運んでみるといいだろうなあ、と思いました。
最後は、城フェチ(笑)の私。生憎の雨でしたが、上山城にも立ち寄りました。復元された城なので、中はちょっとした博物館になっており、エレベータもあります。同じような小さな城でも、木造で城の内部まで再現した白石城のほうが好きかな。でも、お城のある町ってやっぱり素敵ですね。