雅・処

好きなアイドル・俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

辞めても好きな人(1)~夢輝のあ~

現在78期には月組トップのアサコちゃん(瀬奈じゅん)、続いて次期宙トップ就任予定のカシゲちゃん(貴城けい)、月組のユウヒ君(大空祐飛)がおりますが、この期には退団したねったん(夢輝のあ)が居りました。彼女が今もし現役だったら、間違いなく相当高いポジションに残っていたのではないか、と思うほどの逸材でした。


「彼女の個性って目が離せない、たまらなく魅力的だなあー。」と思った頃には時すでに遅し、早すぎる退団が発表されてしまいました。そして最後の公演の時には舞台上で笑顔で去り行く彼女を見て、客席で「惜しくてたまらない・・・」と涙がこぼれ、軽く取り乱す自分。「こんなに好きだったのか!」と自分が驚くほど、ねったんへの募る想いが残りました。今でも彼女を思い出すとき、ささやかながら心が波立つのです。


ねったんを初めて見たのは、何の芝居だったのか?ファンになりたての当初は全組制覇を数年続けていたので、特に気にかけるまでもなく、中堅男役の彼女のことは目に入ったのだと思います。また、(初心者ファンの私にいろいろと教えてくれた)友人Hさんのお気に入りジェンヌの1人がねったんだったのもあって、比較的早い段階で覚えたのだと思います。石野真子似の濃ゆいプリティフェイスでありながら、まるで地の底を這うような低音ボイスに驚いた記憶があるので、芝居よりショーでの印象が強かったのでしょう。その時は、まあ、それだけ(苦笑)。


代表作となった宮沢賢治銀河鉄道の夜をモチーフにした『イーハトーブ・夢』で、夢見る少年系のねったんのポスターは宝塚らしくない特異さが目に焼きついたものの、これも残念ながら見逃してしまいました。*1なので、よくよく考えてみると彼女に特別惹き付けられたのは、こともあろうに(笑)『プラハの春』ということになります。

【 悪役の美学に惚れる 】


ねったんの純粋なファンの方には申し訳ない(苦笑)のですが、私が心臓ぶちぬかれたのは、なんといっても、この『プラハの春』のヘス中佐役。反共産主義活動家を追い詰めるサディスティックで冷酷極まりない人物で、全身黒ずくめのボディにウェーブがかった金髪をなびかせて、ちょっと・・・どころかかなりイっちゃってる(笑)役どころ。途中、主人公堀江(日本人外交官)の恋人カテリーナを尾行し、尋問する時のアブナイ演技を、2階席でオペラを握りしめ身悶えしながら見入っておりました。そう、クセ者大好き!の私にはたまらない一瞬でした。


しかし、こんなすみれコードスレスレの”アブナイ”奴を他の人では考えられないくらいの圧倒的な存在感で見せてしまうねったんにはつくづく脱帽!!勝手に惚れ惚れする一方、彼女の役への傾倒ぶりに”感動”を覚えました。持ち前の可愛い顔を引きつらせ、目を吊り上げて闇を睨むその姿は凄味があってかなり怖〜い。まあ、よくぞ演出家達がこれを許したものだ、と今考えても驚くほどに何か乗り移ってるような凄さがありました。


軽快なショーナンバー「LUCKY STAR」でもこの妖しさは引き継がれます。後からNHK-BSでの録画を見たのですが、いちいちヤバすぎ(笑)。階段上での男役群舞で、クサくキメているタータン(香寿たつき)のすぐ後ろで<魔界のホストか?>と思うほどの妖艶さで鈍い光を放つねったん。あまりにもこの公演で際立った彼女の個性を見たので、退団公演でのねったんは、あまり見せ場も無く、歌も少なく、非常に残念に思ったほどです。退団したジェンヌさんは、この数年の間にいっぱいおりましたが、今でもふっと頭をよぎるのはねったんが1番多いかもしれません。


そんな無念さが残ったのは、「ああいう独特の個性派がこの先現れるのか・・・?」と憂うる気持ちのせいもあります。ねったんにちょっと風貌に近いものを感じる、雪組のホープ緒月遠麻君あたりが’過剰な色気’を身につけてくれたら面白いかもしれません。


今でも観劇での目撃談が多いねったんですが、全く別の仕事に就かれているそうなのでOG公演などでも見ることは叶わずです。いつか舞台で再会できたら・・・と淡い願いを抱いてしまいます。

personal book
ねったんのパーソナルブックです。
彼女特有のちょっと変わり者かも?な性格を知って面白かったです。

辞めても好きな人(2)~汐美真帆~ 男役随一の妖艶さを持っていた人 - 雅・処

*1:スター以外の若手有望株男役が日本青年館で芝居物を演じる、ということ自体良く分かってなかった頃です。