雅・処

好きな俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

花組『ファントム』観劇記(2) 親子愛

いつになく青年観客の多い?東京宝塚劇場では、「『オペラ座の怪人』と違って’家族愛’が重視されているんだって?」と、同行者に興味津々で問いかけてる若者の会話が聞こえてきて内心笑みがこぼれます。


2回目になるとようやくこまごまとしたシーンも目に入り*1春野寿美礼ちゃん扮するエリック(=ファントム)に対しては、その歌声にウットリするだけでなく、クリスティーヌへの初々しい恋への情熱と悲哀を強く受け止めることができました。ピンスポットの当たった暗いステージに一人、仁王立ちで歌ってる時の彼女は、



 あんたが大将! 春野寿美礼、万歳!!


という具合に、文句のつけようがないのです。エリックとキャリエールの見せ場シーンで「(顔は醜くても)でも声はいいだろう・・・?」という台詞が嫌味なく、頷いて聞けてしまうのがまたたまらない。そして今回の泣きのポイントは、母と幼き息子の愛、父と子の愛。やっぱり家族愛は王道です。宝塚で見せる親子愛というのは、シンプルで直球勝負・・・なだけに、ツボに入って思い切り泣かされることが多いのです。

【親子愛は麗しいけれども】


しかし、冷静に考えるとキャリエールってあまりお付き合いしたいタイプの男ではないんですよね。若き日の熱情から不倫(浮気と本気の違いはありますが)に邁進し、子供が出来てしまう。さらに、生まれた子供がハンディキャップを抱えていると知って、名乗りをあげずに外から庇護している。結構、姑息で自分可愛さ、に見えなくもない。なのでとりわけ”生真面目で包容力を持ってる”ように見える生徒*2、を役にセッティングしないといけなくなります。


おかげで地下に閉じ込もっている息子は、卑屈で皮肉屋な一方、妙にオクテでピュアに成長してしまうものだから、クリスティーヌへの接し方も恋人というより、母への思慕に近いよう。クリスティーヌを支配しながら、崇拝しているところがあって、それって・・・やっぱりマザコンボーイなんだ、ファントム(笑)。そして後半はダメダメパパに対して、秘めた愛情を思い出し、ファザコンに転換?して涙と感動を誘ってます。


人々の理想の中で、親子愛は「完全無欠のもの」だけれども、不完全で障壁が立ちはだかるほうが、ドラマティックで感動的。宝塚版「ファントム」が不思議と心地良いのは、そこに多かれ少なかれ”愛と思いやり”が溢れているためかもしれません。かつて映画で見た「オペラ座の怪人」には、全く共感が持てなかったのは、ファントムが己の”内なる悲劇”に捉われすぎて、他者に対して横暴に見えてしまったためかもしれません。

【新たなる代表作】


好きな素材(歌声)であっても、必ずしも作品に魅了されるとは限らないですし、また巷で大評判をとった作品でも必ずしも自分が気に入るとは限りません。アンハッピーエンドでも何故か心地良いものもあれば、ハッピーエンドでも登場人物の誰かの心の痛みに動かされて沈痛な気分になるものもあります。私にとって「ファントム」は前者にあたり、久しぶりに(おいおい)DVDを買って永久保存版にしよう!と思いました。


寿美礼ちゃんの出演作を見てみると、過去に評判をとったリバイバル作品が多く、そういうものは、予想通り素晴らしくなるのですが、オリジナル作品群においては、「もうちょっと何とかならないかな・・・(汗)」と思うものも多いです。いつかリバイバルされるような名作がもっと生まれるといいのですが、多作であってもこればかりは贅沢な悩みかもしれません。*3


適役というのは、本人と役柄の個性が溶け合ってハーモニーを作り上げるところ。ファントムはもちろん、寿美礼ちゃんとは違う人物なのですが、今回はかなり一体化して見えました。寿美礼ちゃんは、”孤高の人”を演じると、持ち味が際立ってくる気がするのです。


 そうか、寂しいのか、キミは。
 ボクの広〜い胸でお泣きよ。


と呟きたくなってしまいます。おっとまた、その戦略にひっかかったか・・・いかんいかん。


※画像は、この公演用に売店で販売されていたメープルクッキーです。公演が良かったので勢いで買ってしまい、味は期待してなかったのですが、甘さが抑えられていて結構オツでした。

*1:初回はいつも雰囲気とストーリーに流されがちな私です。

*2:樹里咲穂さん、彩吹真央さん、といかにもな顔ぶれ。

*3:むしろ、最近では他の人に1作分けてあげてよ〜(笑)、なんて思うくらいですけど。