雅・処

好きな俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

「風が強く吹いている」仙台公演 観劇記

箱根駅伝と青春物語

昨日は、仕事帰りに芝居を見てきました。地元で、こんな若い客層の芝居を見るのは”初めて”のこと。いつになく物販にも熱気があって驚きました。まるで東京時代にタイムスリップしたみたい(笑)。大抵観劇は、休みの日に行ってますが、東京メインの芝居の地方公演(どさ回り)は、やはり平日夜が多いわけで、現実に何度か引き戻され、気持ちの入替えが難しかったです。


今回の芝居のお目当ては、例のごとく劇団スタジオライフのマツシンこと、松本慎也君。ライフ役者の外部公演を地元で見られることは稀なので、貴重な機会でした。演目は全く知りませんでしたが、”人気作品の上演”と友人に聞き、不安もなかったですし、駅伝ランナーの10人の一人なので出番も多く嬉しかったです。内容が良ければ、どんな芝居でも楽しいものですが、顔見知りの役者がいれば、その楽しさは倍増!


比較的若い出演者ばかりでしたが、松本君以外は全く知りませんでした。ただし、帰ってからネットで調べてみると、D-BOYS出身者もいるし、結構テレビに出演している若手タレントさんばかりで、いかに日頃自分がテレビを見てないか(汗)、と実感する羽目に。若干台詞が聞きづらいときもありましたが、いわゆる”舞台役者”は少ないので、良い意味で演技がこなれてなく、役と重なり等身大の魅力を感じました。


と思ったらカーテンコールで、仙台出身の伊藤高史さんが、客席の知り合いらしき方々から大きな歓声を浴びていて、「あっ!伊藤さんだ~。懐かしいわ~。どおりで見たことがある気がしたわ。」なんて、今頃気付くな(笑)、という状態に。客席とのアットホーム感が後押しして、スタンディングオベーションへ流れていきました。役者さん達もスタオベにかなり驚いたみたいで、その後の嬉しそうな顔が印象的でした。

【若き日の汗と涙】


あらすじ:灰二(ハイジ)は、ある日素晴らしい走りを見せる走(カケル)を自分の棲家へ強引に連れてくる。そこは名ばかりの”陸上部専用”ボロアパートで、8人の自由気ままな”自称”ランナー達が住んでいた。ハイジは、部員が10人揃ったことで「箱根駅伝」をめざそうと仲間達に声をかける。駅伝など夢にも考えていない仲間達は、彼の提案に驚き、最初は笑って取り合わなかったが、いつしか自分達の中にくすぶってる悩みやコンプレックスを解放するかのように、走ることの情熱に突き動かされていく。実現するはずがなかった夢の舞台、箱根駅伝で彼らは何を掴むのか・・・。


とにかく良く出来た話です。日本人なら誰しもぐっとくる(笑)、友情てんこもりの集団劇。一人ひとりは決して派手でないけれども個性的で、人に言えない悩みを抱えながら何食わぬ顔で日々をやり過ごしている。けれど、実は誰かに理解されたくて、その悩みを克服するチャンスを本当は望んでいる。そのために選ばれた小道具が、駅伝というわけです。


私の周りにも不思議とマラソン好きが多く、母親までがマラソン&駅伝中継にハマってます。「1キロ走るだけでも死んじゃう!」が口癖の軟弱者の私は、マラソンのお誘いなぞ全くもってとんでもない、と退け、「苦しそうに走っている姿を延々見続けてて、一体何が面白いの?」など、皮肉の一つも言いたくなってしまう、絵に描いたような運動オンチです。そんな私でも、この芝居を見て、間違ってジョギングでもしてみようかしら(笑)、などとふと考えさせる(緩やかだけど)揺るぎない魔力がありました。

【見せどころは・・・】


松本君の演じる漫画オタクの”王子”も、そのひ弱さがいじらしいキャラクターですが、登場人物一人ひとりの小さなドラマを見ていると、誰もが皆、必死にあがいてて、それを克服した瞬間に輝きを放ち、まるで友達のような親近感が芽生え応援したくなってきます。走ることが自分の人生で特別なことではない、という陸上エリート育ちの灰二や走にしても、決してスーパーマンではなく、人には言えない悩みと自負心の間を揺れ動いて苦しんでいます。


この芝居は、きっと「希望」や若さの持つ一瞬の「きらめき」を閉じ込めているのでしょう。だからこそ、見終わった後で清々しくなって、若い人を惹きつけるのだろうなあ、と思いました。私の場合は、特になんという事件もなく、ぼーっと過ごしてしまった自分の学生時代を懐かしく思い出しました。あんな熱い仲間達に囲まれてワイワイやっていたわけではなかったけれど、それでもなんとなく自由で楽しくて、そして不安定さを感じていたあの頃。ボロアパートも昭和チックでしたし、なんだかひたすら郷愁を感じてました。


セットがボロアパートのまま、最後までいってしまったら寂しいな、と思っていましたが、見せ場の駅伝シーンは、シンプルさを効果的な演出でカバーしていて二重丸。非常に集中力を高めてくれましたし、10人の選手達がとにかく素敵に見えました。素直な演技で、役とオーバーラップしているのが、伝わってきます。主要人物の灰二と走は、更に本心を吐露する泣かせどころがある分、印象には残りますが、10人全てに共感するポイントがあってそこがこの芝居の強みなんでしょうね。


ただ、スポーツを題材にした作品には「将来走れなくなってもいい・・・全力を尽くしたい。」という切実な思いが良く出てくるところが私的にはひっかかります。実際、五輪とか大きな大会で故障しながらも無理して出場する、というケースは多く*1、時には美談にもなりますが、将来の生活に明らかな支障が出たり、一生痛みを抱えていくというのはキツイこと。私が根っからスポーツ選手の資質がない、と自覚するのは自分なら一線を越えられない、と思うからかもしれません。一時のカタルシスと、一生の不自由さを秤にかけると・・・。


ま、そんなこんなですが、とりあえず楽しめました。なんと今秋には映画化もされるようですね。巷に爽やかな風を巻き起こしそうです。マツシンには、今月末も東京で会える(ハズ)。今回の芝居のような等身大の男の子、もいいですが、彼の”キラキラした繊細さ”を見せるのは、やはり劇団作でしょう、本領発揮待ってます!


風が強く吹いている

風が強く吹いている

原作本です。

*1:極限まで感情が高ぶってるからかもしれませんね。