雅・処

好きな俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

スタジオライフ吉田隆太、衝撃の制作転向

かなりメゲました・・・

今週に入って一つの衝撃的なニュースが入ってきました。劇団スタジオライフのファンでなければ、「何それ?」という実に狭い世界での話ですが、私にとっては重大事件。


劇団の役者として活躍していた吉田隆太君が劇団の制作部へ転向する、という告知でした。FC会報を開けた時に目に入ってきたのは、色紙のDMに直筆で私の名前と自筆サイン、手書きのコメントでした。


一瞬喜んだ後、奈落に突き落とされたのは、”ジュニ7”として入団して以来、約7年間*1の演劇人生に幕を下ろす、という吉田君の「考え抜いての決断」が綴られていたからでした。


今年に入ってから、役者として舞台に上がることをセーブし、裏方に廻って舞台を支える、という意向の結末がこれだったのか・・・と愕然としながらも、納得してしまったのがとても悲しくて(涙)。


それにしても、最近はようやく”役付き”も良くなってきたし、見るたびに安定した演技力プラス情感を見せてくれていた矢先、上昇気流に乗っていた(贔屓目抜きでも)彼だけに惜しい、惜しくてたまらない、です。


劇団に残ってくれて、今後ももしかしたら世話役?的な立場で会えるかもしれないとは思いますが、舞台で存分に演じている姿を見ることができないのか、と思うと他の劇団員達とまだ近い距離にいるだけに複雑な思いです。


入団した時から目を引いたのは、彼の女役の素晴らしさ。芸能事務所にも所属していた時期があるだけに基本も出来ていて、最初から新人らしからぬ新人でしたし、それでいて変に悪目立ちしない奥ゆかしい存在感にも好感を持ちました。


若者らしい伸びやかでやや高めの声は、なんとも耳に心地良い響きを持っていて、どんなに激昂していても下品になりません。とりわけ女役を演じたときに、吉田隆太にしか決して出せない「深い味わい」を醸し出していました。


たとえ主役でなくても、いや脇役だからこそ彼の味わいは、唯一無二の”いぶし銀”的魅力を持っていたのだと思います。劇団イベントなんかで見る吉田君は、まさに好青年でどんな仕事もキッチリこなす気持ちの良い若者でした。己のやるべきことにはガムシャラに頑張るのでしょうが、一方でその優等生っぽい、アクを抑えた”気持ち良さ”が役者として自己主張が弱いことになっていたのでしょうか。


元来持ち合わせている実力の割に、役付きがなかなか満足いくものではなく、この2年ほどでやっとスポットが当たってきた矢先に・・・。

【一体なぜ今この時に?】


だのに何故、彼はまさにこれから!という時に、悩んでこのような決断をしてしまったのでしょうか。「役者としての限界を感じていた」というビックリするような文言がDMの中にありました。真面目な性格ゆえにきっと極限まで考え抜いたのでしょう。


そういえばブログも半年前から更新が途絶えていました。思えば最近は、『訪問者』のヘラや『LILIES』のリディアンヌなど、スタジオライフの代表作で重要な役柄を担いました。作品自体の魅力もありますが、吉田君の演技も作品や過去の先輩達に決してひけをとらないほどの素晴らしさでした。


ちゃんと吉田ワールドを展開し、存分に魅了されました。もしかしてこれらの作品が彼の中で集大成となる一方、彼の言う「限界」とやらを叩きつけたのでしょうか。確かにまだまだ完璧ではない部分もあったかもしれません。しかし”完成形”ではないからこそ、今後の成長が一層楽しみになっていたのです。


私が思うに、”演じること”に限界なんてありません。才能の違い、技術の違い、オーラの違いはもちろんあります。成功を掴む役者は一握りの厳しい世界です。不安定な収入など金銭面の問題で役者を辞めざるをえない人もいるし、裏方の方が向いてるから、という人ももちろんいるでしょう。


最近、私が惚れまくってる堺雅人氏は、「役者を辞めたいと思ったことが一度もない。」と答えてます。演じることが根っから好きな人は、たとえ成功できなくてもどんな形でも演じることを諦めたりしない、と思います。


比べるのも恥ずかしいですが、私も今年ズブの素人ながら初めて舞台に立ってみました。演技力どころか発声からして落第点でしたし、稽古をしてもなかなか自分を捨てることが難しく、役者ってなんて大変なものだ、と痛感しました。


それにまず私は人に向かって本気で演じたいという欲求があるのか?という根源的なところで躓いてしまった、という情けなさでした。それでも、いつかまたチャレンジしてみよっかな、なんて懲りないヤツでもあります(笑)。


そんなことをつらつら考えると、吉田君は入団前にも一度役者を諦めかけた時があった、ということですし、今回で2度目になるわけです。役者として向いてるとか向いてないとか、いう以前に、究極のところ「演じることができなくなったら生きてはいけない」というくらい強く揺るがない欲求が無かったのではないか、と推察します。


過去にも何人もの劇団員が去っていきましたが、(恐らく)大好きな劇団だから、それでも制作という”新しい道”に全力投球し、残ってくれることになったのは不幸中の幸いとは言えますが、なかなか吹っ切れないものがあります。


まだまだ若いのだし、今は切羽詰って決断をつけてしまったんでしょうが、もう少し気持ちが落ち着いて心の余裕がついてきたら、「人が足りないっていうから出ちゃった。」とか言って、ちゃっかり舞台に出てきてくれたら・・・なんて望みを捨てないでいたいと思います。


たとえそれがスタジオライフでなくてもいいし、昔とったキネヅカでも何でもいいから、その気になったらいつでも戻っておいで、という未練たらたら(笑)な思いでいたいと思います。


スタジオライフという劇団への愛着はこれまでのところ変わりはしません。緩急とりまぜて細く長くファンであり続けたい劇団です。それでも吉田君の出ないこれからの舞台をどうやってボルテージ上げていいか、まだ見当つかない状態です。そして新しい「担当役者」を誰にするか・・・難題です。次々回作は、萩尾望都さん原作の『11人いる!』ですが、全然気持ちが盛り上がらず。

【”役者”吉田君の思い出】


吉田君について思うとき、最も残念なのは、彼の代表作と言うべき作品がほとんどDVDになっていないことです。例えば再演の『訪問者』、間違いなく吉田君の集大成でしょう。『トーマの心臓』はBSで流れましたが、『訪問者』は著作権の問題があるのか、あるいは売れ筋ではないためか(主要人物3名ですし)、今のところ幻の作品となっています。


ナマの舞台は一度しか見てないだけに、何故もっと見なかったのか、と悔やむのとあれが映像で残っていれば・・・というやり切れない思いとで胃がキリキリする思いです。


吉田君については、入団直後から好きな役者でした。人気が高かったジュニ7の中でも、今思えば一番好きでした。初期の頃の作品で印象的だったのは『ドリアン・グレイの肖像』の淑女役。髪を上品にまとめドレスを着込んだ彼の演技に「これが新人?」とビックリさせるほど、可憐な容貌に似合わず、危な気ない台詞廻しにビックリしたものです。


新人離れした落ち着きで毎回舞台に立っていた吉田君でしたが、ある日、舞台の上で台詞をド忘れし、ベテランの笠原さんが吉田君の台詞を自分の台詞のように繫ぎ合わせて場を救った、ということがありました。やはり落ち着いているようでも「そこはまだ新人なんだな」とちょっとホンワカしたものです。


新人時代のエピソードでは、『OZ』の広島公演でのこと、舞台袖で先輩・及川健氏が転んで腕に怪我をしてしまったという事件があったのです。本番中だったため、すぐに舞台に出ていったのですが、吹き出す血をどうにか誤魔化すのが大変だった・・・と後ほど及川君が雑誌の連載で書いてました。


道案内役(暗闇の中を懐中電灯で足元を照らす)の吉田君が、自分の不手際のせいで先輩が怪我をしたと、泣きながら謝り続けた、という話を聞いて、なんてピュアな子なんだろう、と思ったり。


仲間うちでも冗談半分で「隆子」なんて愛称で呼ばれていましたが、スタジオライフに入団したきっかけである『LILIES』観劇で初代ヴァリエを演じた山本芳樹君に憧れ(というかファン?)ていることが、稽古裏話でもよく話題にされていて、親近感を抱くことも多かったです。


今年のトーマ仙台公演後、開かれた曽世さんの「オスカー役卒業パーティ」では、化粧も落とさず、すぐに会場となる店に来てあれこれ準備をしていたこと、帰りに記念品を手渡ししながら見せた笑顔も最高でした。


バタバタしていてレポをまとめられなかった夏の25周年記念イベントですが、そこでも吉田君のコメントは印象強く残っています。「ここまでスタジオライフが続けてこれたのは本当に奇跡なんです!」とファンを前にかなり力説していた姿は、笑いを誘ってましたが、今ならば彼が熱く語っていたワケが少し分かるような気がします。まさかできるはずがない、とサジを投げそうになりながら、いくつもの奇跡でここまできたんだよね、って。


吉田君への思いが特別なものになってきたのは、プロデュース公演『カリフォルニア物語』からです。この時演じた、娼婦マリアンのあまりの美しさに射抜かれてしまいました。出番も少なくてすぐに自殺してしまう役だったのですが、女性的な色気すら感じる艶やかさにノックアウトされて未だにその残像が残ってます。再びプロデュース公演『フルーツバスケット』で演じた佳菜役も素敵でした。自然に匂いたつ女らしさ、愛する恋人ハトリとの悲しい別れのシーンは、二度見ても涙を誘いました。


スタジオライフの公演に戻って、『TAMAGOYAKI』の百合子先生役。ワンパク坊主達にいつも優しく接しているマドンナのような存在。白いブラウス姿が清楚で、何も特別なことはしていなくてもそこに立っているだけでふんわりと漂う母性。悲劇のヒロインや死ぬ役が結構多かったのですが、そういうダークさが全く本人のイメージには影響しなかったのは、吉田君が持つしなやかで大らかな個性のせいかもしれません。


思えば私はいつも”吉田君の演じる女性”に恋をしていました。不思議な感情ですけれど、恐らく”生身の男・吉田隆太”ではないんです。もちろん素顔も可愛くて爽やかでイイ子だなあ、と好感を持っています。


でも、それを遥かに凌ぐ魅力は、彼の唯一無二の”女役”でした。女性にも出せないオンナの魅力、なぜに普通の男性(→おそらく)である彼が、それを意識せずに持ち合わせたのか謎ですが、もしかしたらそんな頭抜けた個性も彼には悩みの一つだったのかもしれませんね。


役者・吉田隆太の魅力は、本人よりももしかしたら彼のファン達のほうが遥かに分かっていたのかもしれません。退団ではありませんが、私の中では「引退」に等しい今回の決断。今まで、いろんなファン歴がありますが、どうしてこんなに絶頂の時の”突然の別れ”が多いのか・・・。


もしかしたら、そういう人ばかり選んでファンになってるのかもしれないなあ、とまたしても思わされました。今後の吉田隆太に幸あれ、と祈ります。しかしながら本音は、


隆太ぁ~、カームバック!!

*1:劇団スタジオライフの一員となってから