雅・処

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スタジオライフ『カリオストロ伯爵夫人』観劇記

ゴージャスだけどいろいろもったいない出来

千秋楽間際の観劇からはや1週間。すぐに感想を書きたかったのですが、現在いろいろとプレッシャーの多い毎日にくじけて、遅くなってしまいました。見終わった時の感動もあったので、正直その勢いのままで書きたかったなあ・・・と反省もありますが、とりあえず一番強烈に残った思いだけを書いてみたいと思います。


今回は、歌える役者が抜けた状態での音楽劇でどんなことになるのやら?と半信半疑で見ました。結局は、プロ歌手であり、劇団の音楽トレーニングにも尽力していらっしゃるというtekkanさんがメインの語り手兼シンガーとして登場。更に弦楽器隊とコーラス専門の外部のミュージシャンの方も参加していたので、バックミュージックの完成度が高い内容でした。


但し、これが果たして良かったか、というと若干疑問です。tekkanさんの長めのソロは、劇中3回程度ありました。せっかくの素晴らしい歌声なのですが、語り手としての出演頻度も高く、あまりに出番が多すぎてかえって散漫に見えてしまうのが残念でした。劇団のファンとして何も知らずに観劇し始めて、外部からミュージシャンを呼んできて成立している音楽劇には違和感を感じてしまいました。


そもそも歌う必要性は全く感じない劇なので、せめて弦楽器の生演奏だけでも十分ではないかな~、と思いました。かろうじてジョゼフィーヌ役(カリオストロ伯爵夫人)の関戸君の良く通る歌声は、台詞に近い情感を感じさせてくれました。台詞も多く悪女という難役もあっただけに、その中で長いソロを歌うプレッシャーは結構あったのではないでしょうか。


この芝居の全体的な印象としては、音楽の生演奏やコーラス、背景画や衣装なども凝っていて、いろいろと新しい試みもあった割に、なにか企画倒れ的なもったいなさがあり、ラウールとジョゼフィーヌの対決シーンも多く、やや冗長なところが感じられてしまうという短所はありましたが、若手役者の成長がとても新鮮で収穫は多い公演でした。

【女役の素晴らしい成長ぶり】


とにかく今回の芝居は、女役達のめざましい成長ぶりに感動をもらった公演でした。現在、私イチオシの若手である宇佐見輝君。ラウール(アルセーヌ・ルパン)の婚約者クラリスとして、初の女役を初々しさいっぱいに可憐に演じておりました。動きもまだまだぎこちなく、”ぜんまい仕掛けのからくり人形”のようでしたが(笑)、とにかく愛らしい。メイクも青いドレス姿もトータルで演技をカバーしていて、出てくるだけで可愛さいっぱい。


余談ですが、青木君が最新のFC会報で熱く「女役の重要性」を語っており、ものすごく共感を覚えたのですが、スタジオライフでの女役の存在というのは、劇団の”核”となる部分。それだけに、若い世代に女役を安心して見られる役者が育っていないとマズイ、という危機感がありました。見た目の可愛らしさだけではなく、内面から漂うハートウォーミングな魅力を持っている女役です。


役者として女役専科のイメージがつくと、だんだん男役が遠のいてしまうマイナスもあるかもしれませんが、私みたいな”女役好き”にはたまらない魅力になって、「これぞスタジオライフだ!!」と快感を覚えて、一気にボルテージが上がります。宇佐見君には、正統派娘役や純真な少年役などどんどん活躍して欲しいものです。捕えられているラウールを救いに来るクラリスには、ひたすら健気さが漂っていてドキドキしてしちゃいました。


そして今回一番の私的見どころは、鈴木智君の女優ブリジット・ルースラン。入団直後から、不思議と女役が続くなあ・・・と思っていた鈴木君ですが、まさに花開いた瞬間でした。ベテランでもなかなかに難しいと思われる女優役なのに、身のこなしの軽やかさと柔らかさに、女言葉の巧みさが相まってまさに心を持っていかれました。


昨年の「天守物語」の時も、女役を楽しそうに生き生き演じておりましたが、なんとなく「彼は男役のほうがいいんじゃないかなあ」と疑問を持っていました。しかし、今回ブリジットが登場した瞬間から、まるで全ての謎が解けたかのような爽快さに包まれました。長いこといろんなタイプの女役を見てきましたが、鈴木君は歴代の先輩の誰とも似ていない独自のモノをすでに身につけている気がして、目が釘付け。


最後のダンスシーンもとにかく軽快で素敵~!の一言。まさにこれから楽しみな新星現る!という感じでした。青木君が鈴木君を評して曰く、”攻める女役”の真骨頂。DVDが届いたら、鈴木君のシーンは何度も繰り返し見てしまいそうです。


青木君のストレートな女役も久しぶりで、持ち前のエキセントリックでチャーミングなところは変わらず。今やや円熟味を感じるくらいの堂々とした看板役者っぷりですね。劇団の中核となってきて、深い部分での責任感の強さとたくましさを感じる昨今。入団したて時の彼のあの”危なっかしさ”を覚えてるファンにとっては、すっかり立派になった青木君が眩しくて仕方ないくらいです。


そして、千秋楽で初の大役演じきった関戸君にも目から鱗でした。「ファントム」のクリスチーヌ役でも想像を上回る出来栄えに感動しましたが、今回のカリオストロ伯爵夫人については、文句なしの真骨頂を見せてくれました。相手役の松本君のリードもあるでしょうが、敵となるラウールを愛してしまった女の愚かさと切なさを漂わせ、ちょっとした台詞にも苦悩や揺らぎが色濃く出ていて圧巻。


関戸君の女役としての初期の大役は、'09「LILIES」の伯爵夫人だったと思いますが、その時は、個人的にかなり失望を覚えたものですが、あれからもう5年。今、演じたらきっと見事な伯爵夫人を見せてくれるのではないか、と思います。それまでは、実力のある女役が抜けてしまった穴埋めに、セッキーが女役を振られている感じが結構あったのですが、そのチャンスを糧に少しずつ成長してきた彼の頑張りが花開いたのではないか、と一際感動しました。

【ミスターXは松村君 頑張っていました】


トリプルキャストで最初から配役を伏せられ、「主役=ミスターX」とされていたのは、松村泰一郎君でした。Jr.10で鈴木君と同期ですが、もともと外部出演が多く、劇団の本公演で主要な配役で見るのは私的にほぼ初めてに近い印象。それこそ「お初にお目にかかりまして」な感じでした。少年時代は、テレビにも出ていた子役あがりということで、やっぱり顔立ちも綺麗なんだなあ、とマジマジ見てしまいました。


台詞量が膨大なので多少余裕がないのは仕方ないですが、持前のまっすぐさで頑張って演じきっていたなあ、という印象です。スタジオライフの役者の持つ透明感や繊細さなども感じられて、劇団公演にはあまり出演していなくてもやっぱりライフ役者なんだなあ、と改めて思ったり。


ラウールという役は、”一人の男性”としてみると、婚約者クラリスがありながらも、若気の至り的(笑)にジョゼフィーヌと激しい愛に溺れるという、かなり身勝手な人間に見えてしまいます。後半、財宝獲得へのあくなき情熱からライバル同士となると、ジョゼフィーヌを捨てようとするのですが、なかなか情に縛られてうまくいかない。そこへクラリス妊娠の報を受け、自分が本当に大事にするべきなのはクラリスだと気付くという、とんでもなく調子のよい浮気男に見えてきます。


この辺り、もしかして倉田さんの(無意識の)思いが反映しているのかなあ、と若干うがってみておりました。男性の演出家だったら、もっとジョゼフィーヌを悪女に仕立て上げる気がしますが、ライフ版だと女性目線が強くなってきて、ラウールが一番の悪者に感じられてしまう。その辺り、原作のほうがもっとラウールの葛藤が強くあるらしいのですが、芝居を見ているとラウールを強く愛するが故に束縛してしまうジョゼフィーヌへの共感が強くなっていきます。


その辺り、マツシンのラウールは2人の女性の間で迷い、分かっていても不毛な関係を続けてしまう男心を巧みに演じておりました。台詞一つ一つに自然と滲み出る”優しさ”が半端ない。独特のマツシン節が空気を震わして、その心地良さにどっぷりハマってしまいます。セッキーとの同期コンビということもあって、あうんの呼吸もあるのでしょう。組合せがすごくハマっておりました。


また原作では、ただの部下(?)レオナールは、船戸さんが演じたことでジョゼフィーヌを陰ながら見守る男の包容力を存分に感じられました。まったくもってこういうちょっとワルっぽい役どころは船戸さんにピッタリ。ラストで、ラウールともみ合いになって、銃が暴発、ジョゼフィーヌの生死は分かりませんでしたが、もし生き延びていたら、きっとレオナールが最後までジョゼフィーヌを守り続けたのではないか、と勝手に想像しておりました。


脇に倉本さん、藤原さん、牧島君が固めていたので、なんとか成立していたものの、若手公演という感じもした公演でした。やっぱりいつも見る実力派の役者達が外部公演で不在というのは寂しい。次回の「LILIES」では、ますます花形不在となりそうで、キャスト発表がかなり不安です。


カリオストロ伯爵夫人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

カリオストロ伯爵夫人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

こちらが原作です。小学生の時、ルパンシリーズのファンで何冊か全集を読み漁っておりましたが、この作品は全く知りませんでした。教育的見地から全集に入れられてなかったのかもしれませんね。