雅・処

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スタジオライフ『少年十字軍』観劇記

近年の作ではかなり面白かった作品

「早く感想を書こう!」と思っていたのに、また1週間経ってしまいました(最近コレばっかりだわ)。久しぶりに3回連続というハードなライフ観劇でしたが、その後にかなり自分的に大きな体験がありまして*1、平和な観劇体験は、後回しになっておりました。


元々は、少女アンヌ役が宇佐見君と関戸君のダブルキャストだったがために3度見ることに決めたものの、公演直前にシングルキャストに変更されて脱力・・・でした。しかし、芝居を見てからアンヌ役にセッキーでは厳しすぎただろう、と実感したのと、セッキーのドミニク役が随一の素敵さ(笑)だったので、終わりよければ全て良し、といたします。


ただ、この公演は初日の8日、そして1週間後の土日も大雪に襲撃され、大変な混乱の中、開幕となりました。私は、偶然にも大雪を避ける形で上京できたので、それだけでも感謝したい気持ちでした。劇団員も観客もかなり参った(興行的にも大打撃・・・汗)と思いますが、忘れられない公演の一つになったかもしれませんね。


原作は、『死の泉』以来、劇団では2作目の舞台化となった皆川博子さんの『少年十字軍』。無垢な魂を持つがゆえにキリストの啓示を受けた、羊飼いの少年エティエンヌと彼を信じる子供達で構成された少年十字軍。エルサレムへ向かう行群から起こる様々な”事件”。史実にもあった少年十字軍の話をモチーフに皆川さんの物語世界が大きく広がっていきます。


あらすじを読んだ時は、有名なドイツの『ハーメルンの笛吹き男』をちょっと思い出しました。カスパー・ハウザーという出自不明の謎の男が、ある日突然、町に現れ、多くの子供達を連れ出して、そのまま失踪してしまった、という実際にあった歴史的大事件ですね。昔のヨーロッパには、こういう事件が結構あったのかもしれませんね。


原作の小説は、すごいボリュームですから、きっとかなり端折られた部分もあるのでしょう。中途で登場する、主役ガブリエルと悪魔サルガタナスのくだりなんかは、「ハムレット」を思わせる話でしたが、作品の中で少年十字軍との親和性がやや不思議だったので気になりました。いつか是非、原作を読んで確認してみたいと思います。


1度目の観劇では、登場人物や舞台となる町がどんどん変わるので、筋を追うのがやっとでしたが、個性的なキャストにも翻弄され魅了されていきました。2度目は、主要キャストが変わってちょっとテンションが落ち、実は一番面白かったのが3度目でした。Nチームのキャストがかなり気に入ったので、それで持ち直したのもありました。

【青木カドックに魂持ってかれた! 】


今回のキャストでは、若手、中堅、ベテランの組み合わせが三つ巴で良かったです。難を言うと、ベテラン(笠原さん&石飛さん)が全て脇役を繰り返し演じたため(多分10役くらいは演じていたのではないかしら)、これはあまりにも出過ぎ!初めて見るお客さんには、何度も現れる同じ役者の見分けがつかずに、イマイチ分かりずらかったのでは?


若手(Jr.11とフレッシュ)は、少年役が割り振られていて実に自然にノビノビと演じておりました。紅一点の宇佐見アンヌの期待通りの初々しさにはもちろん楽しませてもらいましたが、ルー役の千葉君、田中君の頑張りも良かった。千葉君の方が好みで完成度もやや高かったかもしれませんが、思いの外、田中君の身体能力の高さと台詞を話す時の間(恐らく無意識でしょうが)の使い方にも感心しました。


エティエンヌ役は、どちらかというと久保君の素直な演技が好感度大。金髪姿がIMALUに似てましたね。藤森君は、もうちょっと声の通りが良ければな~、という感じ。入団後から今に至るまで彼は役付きは良いのですが、私にはイマイチまだ魅力が伝わってこないです。チンマイ3人組(澤井、若林、浅川)は、三つ子のようで区別がつかない感じでしたが、それだけに子役がとても愛らしかったです。


若手の中でも若干、経験を積んでる藤波君のジャコブ。すごく良かったです。ものすごく役との一体感があって、下っ端の助修士(修道士のお世話係)で新米っぽいけど、実はシッカリ者という感じがもうあまりにイメージ通り。まさかのトキメキ第一号(笑)でした。


で、そのジャコブを上回る強烈なオーラで惹きつけれたのが関戸ドミニク。女役が続いて、久しぶりの男役でしたが、いやいや、パワーアップぶりが素晴らしい。もう影の主役ではないの?!というくらい、いちいち悪どい!いやアクが強い。やっぱりノリにノッテル、というのは、今の彼なのでしょう。どんな役でも怖いものなし、の圧倒的な存在感にウットリしました。


そしてこのドミニクに輪をかけて最恐、かつ最強だったのは青木カドックでした。いや、シビれた。今までライフの舞台で青木君が演じた全ての役で、これほど魅惑的な面白い役はなかったかも。”見るからにヤバイ奴”というところから、全然ブレないし、一瞬たりとも目を逸らせない、怪しくて自信たっぷり。おまけに船戸フルクへの「40代は・・・老人ですか?」の台詞を含め、クスッと笑わせる余裕。


青木カドックと関戸ドミニクの魅惑の悪役コンビ(ちょっと違うけど)が、私の魂を揺さぶり続けました。おっと忘れていけないのは、ガブリエル&サルガタナスのコンビ。松本君と芳樹君の役替わりで見せてくれたこの二役も面白かったですね。マツシンは、「カリオストロ伯爵夫人」の時から”美人”ぶりに拍車がかかった気がします。今は、女役より男役でのほうが美しい。


男役なのに、どこか色っぽさが滲み出ていて、それが相乗効果になってるようです。一時期、ちょっとヤツレていて血色悪い感じが痛い痛しい感じでしたが、今は肉付きが丁度よく、化粧がノッてるのかもしれません。見た目のみならず、このガブリエルという記憶喪失の青年役は、ヒーローなのか悪者なのか分からないような二面性があって面白い存在なので、興味深く見られました。


サルガタナスは、芳樹君が演じるとお調子者に見え、ダンスで培った軽快な動きも面白くてとても楽しめました。マツシンが演じると、ちょっと「オネエ」っぽくて、違いが思い切り出てましたね。一方、芳樹君のガブリエル、過去の惨劇を思い出すくだりの彼の演技はさすが”苦悩が似合う、芳樹”節全開。


久しぶりに芳樹君の得意分野を見せてもらえてフツーに感動しました。若干、エリック(ファントム)入ってた気もしますが(笑)。原田君の成長ぶりにも、ちょっと感動。長い下積みの果てに大役を任されて、役と一緒に燃えまくってる姿がアツくて良かったです。


やっぱり皆川作品は、登場人物が一筋縄でいかないクセ者揃いで面白いなあ、と感心しまくりでした。『死の泉』ほどの耽美&退廃はないけれど、人間のもつ弱さ、怪しさ、儚さが出ていました。あともうちょっと悲しみと感動があればライフらしい作品に仕上がったと思います。でも、DVD化されたら、これは確実に見返したい作品ですね。*2

【演出、効果と音楽について】


今回の作品は、宗教とか神とかキリスト教徒以外の日本人には、やや想像するのが難しい題材だと思いました。10~12世紀頃のヨーロッパで、いかに神が崇められ悪魔が恐れられていたのか。生活の全てが宗教とは切り離されない、そんな時代。それでも生きる指針が見えない現代社会に比べると、圧倒的に縛りが強い分だけ、人はわずかなことにも喜びを見出し、神の御心を感じているのかもしれません。


それが幸せなのか不幸なのか簡単には分かりませんが、分からないからこそ惹かれるのかもしれませんね。「人々にとって宗教とは、一体何なんだろう?」とちょっと考えさせられました。


舞台の効果としては、コンピュータ制御の照明が気になりました。舞台が始まる前から、なんか照明の形が違うなあ、と気になりました。客席へ何度も同じ方向に正確に光を送って、独特の効果を出していました。ヒュッと音を立てて生き物のように向きを揃えていたりして、「おお、こんなところも進化してるのか!」と内心驚きました。


前説で藤原さんが「こちらの通路は、役者の演劇スペースとなっております。」とまで、説明をしていたのが、中央の通路と前に伸びる2本の通路。ライフの芝居はこの通路でよく演技をしたり、走り去ったりというのが多いのですが、実はここで演技されても前の席からは見えずらいので「この演出は、正直どうかな~?」と思ったりもします。身近なところを役者が通っていくのは、単純に楽しいですけど。


芝居が始まる前に流れていたのは、例によってボーイソプラノの宗教音楽。何の曲だか気になって、耳を澄まして聴いてみましたが、あまりにマイナーな曲だったので分かりませんでした。そして、芝居の中での挿入曲にも驚きました。カドックとガブリエルが最初に悪魔談義をするやや長めのシーンに流れていたのが、Agostino Steffaniの「Stabat Mater」。ワケあって大好きな曲ですが、まさかこんな超マニアックな曲が流れるとは・・・恐るべし河内主宰。


そうそう、中盤にやや強引に挿入されていましたが(笑)”歌える役者”石飛さんから始まる役者達のコーラス、非常に印象的でした。子供達(役柄上)が楽しそうに歌ってる、あのシーンだけでも、ちょっと涙する名場面かも。


いろんな意味で、ここ最近でワクワクするような新作となりました。この作品に比べると、「カリオストロ伯爵夫人」や「天守物語」は、結構辛かったなあ・・・なんて思い出しながら。



Pergolegiも好きですが、こちらの「Stabat Mater」もたまりません。

◆仲原×藤森インタビュー(名古屋公演直前):
「仲原裕之×藤森陽太」インタビュー | Web 限定インタビュー | MEG-net 【Mixture Entertainment Guide】
⇒ なかなかに真面目でイイ話が読めました。


少年十字軍 (一般書)

少年十字軍 (一般書)

皆川先生が、80歳を超えて”最後の長編小説”と語ったという、渾身の一作。

*1:その辺りは姉妹ブログのほうで過剰に語っております。

*2:過去のDVD作品の大半は、全編見ないまま放置されていますが・・・(汗)。