雅・処

好きな俳優・映画・演劇などエンタメ一般やスポーツについて自由に語ります。

なぜ「おっさんずラブ」界隈が炎上しているのか

有り余る愛情が憎悪に変わるとき

テレビ朝日の新ドラマ「おっさんずラブ -in the sky-」が、11/2からスタートします。ようやく先週に正式告知がされて、それからまだ1週間しか経っておりませんが、一部で激しい炎上騒動を引き起こしてます。


実のところ、今年の1月にテレビ朝日が年度内の続編を示唆したときから、私も危惧はしておりました。いくらなんでも早すぎないか。映画の公開は下火になってきていますが、まだ続いている状態です。しかも、社会現象化したほど大ヒットした連続ドラマ版(シーズン1)のキャストを揃えるのは厳しいだろうし、大胆なキャスト変更有でうまくいくのか?と。せめて1年くらいは間を空けるべき案件ではないか。


おそらくテレビ局関係者もキャスト達も、いよいよ新ドラマのプロモーションが現実的に決まった頃から、その激しい反発を危惧していたのではないでしょうか。劇場版のイベントでも、キャストの発言や表情から時折妙に不安定な想いを感じさせる瞬間があったので、かなり戦々恐々だったと思います。


案の定、9/27から大騒ぎです。ファン(OL民)が敵と味方になって撃ち合ったり、公式サイトに凸攻撃したり、とまあさんざんな状態。いい大人が情けない(涙)。その挙句、納得のいかないOL民の中には、いわゆる過激派まで生まれてしまってます。


公式Twitterへネガティブコメントがやまなかったり、テレビ朝日へ受けたダメージを告発するハガキを送る、やれクラウドファンディング朝日新聞に公告を出す、なんて騒がしい。


燃え盛った炎はドラマオンエアまでになかなか収束はしないのかもしれませんが、だんだん冷静に考えられる人も出てきてるようですし、ちゃんと新ドラマを楽しもうとしている人達も増えてきてるので、そこまで悲観はしていません。


今回は、多くの人々をあんなにも熱狂させたこのドラマが何故ここまで炎上したのか、理由を挙げてみたいと思います。

(1)キャスト変更への怒り

もちろん最大の理由はこれ、ですね。演技達者揃いの天空不動産を演じた俳優さんたちが田中圭君(春田創一役)と吉田鋼太郎(黒澤武蔵役)さんを除いて総入れ替わり。中でもドラマ大ヒットの立て役者でもある林遣都君(牧凌太役)の降板が大きかったのです。


おっさんずラブ」は、おっさん同士のラブコメディと紹介されることが多かったのですが、実際は春田と牧のせつないBLラブストーリーが核でした。BLという表現が嫌なファンは「ピュアラブストーリー」と言い換えてはいましたが、やっぱり形はBLに他なりません。


そこにのめり込んだファンは多かった。中でも腐女子と言われる、BL創作物に手慣れた人達よりも、ドラマをあまり真剣に見ない層、主婦や中高年の女性達の関心を掴み、熱狂に繋がったのが分かります。(WEBニュース記事でもその辺り、かなり分析されてました。)


私が驚いたのは、ドラマが終わってからも、牧と春田の甘い恋人同士の妄想に浸り続けている人が相当多かった、ということです。同人誌なんかで2次創作する、という流れは定番なので驚きませんが、ドラマの1シーンや台詞を何度も噛みしめるように味わって実在の人物にまで高めているか、のような人が多かったのです。


私も妄想癖はありますが、出来上がったドラマの世界の余韻にずっと収まっている、ということはほとんどないので、そこは同じファンでも違うな~とその熱に驚きました。毎日のようにドラマを見返す、という執着や根性もありません。


もはや信者と言ってもいいくらい牧への過剰かつ妄信的な愛が、「続編を絶たれた」と感じた時の激しい怒りと絶望に変わったことが背景にあると思われます。思い入れ無く「ビジネス」としてのみ考えているテレビ朝日との乖離がものすごく大きかったことが今回の反発を招き入れてしまいました。

(2)タイトル同じ、役名が同じパラレルワールド設定

2016年の単発スペシャルドラマの時から、「おっさんずラブ」「春田創一」「黒澤武蔵」の3点は変わらず、でした。春田の相手役は、「長谷川」「牧」と変わっていったり、勤めてる会社が変わったり、ドラマの細かい設定や性格も、結構違いがあります。それだけに新ドラマもここは同じ。


この手法を「パラレルワールド」というのだとも、これがきっかけで学びました。アニメなんかだとよくありそうな展開ですね。私自身は、結構トンデモ設定には鍛えられているので、「へえ、そんなものか、なるほどなあ」としか感じなかったのですが、違和感ありまくりのドラマファンは多かったようです。


確かにご都合主義甚だしいのですが、武蔵から春田への恋の物語は、こういう禁じ手を遣わないと続けられない。これも続編を手っ取り早く作りたい、という逃げに見えたようですね。(まあ、確かにその要素はアリでしょうが)


圭君に至っては、急に見慣れない短髪にして、髪が伸びるまで「はるたん」はないかな、と思わせてからの新種はるたん。ビジュアルを変えるくらいしかシーズン1との違いを明確化できない、というのも苦しい。


名前が同じだとシーズン1と区別がつかなくて傷つく人が多い、というのがあまりに繊細過ぎて、もはや私には理解不可能です。ドラマは、あくまでフィクションですよ、というのが通じないほど入れ込みが激しいのでしょうね。

(3)実は劇場版の出来も満足していない

今回の騒動であぶり出された問題点がこれ。鳴り物入りで宣伝された映画の出来栄えが必ずしも満足なものではなかった、というところですね。派手さと一般受けを狙った雑なストーリー展開のために、春田と牧の愛情部分の肉付けが非常に手抜きに映りました。


爆発やアクションや中途半端な地上げ部分を描くのなら、春田と牧の「結婚」までちゃんと道筋を描いて欲しかった、という思い。分かり過ぎるほど分かります。それでこそ、コアなOL民は成仏できたはず


この部分がないがしろになってしまっただけに、新ドラマへの気持ちの転換ができない人続出なのです。ラストシーンも物議を醸していました。牧と春田がまた離れ離れになって、2方向に別れていく様が、別れを暗示てしている、とか。牧があまりにも可哀想・・・という思いが強いのでしょうね。


今の私の捉え方は、この一時的とはいえ中途半端な別れの場面は、そこで本当の「THE END(完結)」を望まなかった監督やスタッフの想いだと思っています。決して意地悪じゃない、いつか天空不動産の春田と牧にまた会いたかった、そこが完全なるハッピーエンドにしたくなかった理由のような気がしました。


それから、たとえごった煮で満足のいかない映画であったにしろ、少なくともクリエイター達が作った作品。やっぱりこのシーンがない、あのシーンがない、というのはご法度な気がします。視聴者の好みをなぞって映画やドラマを作る、というのではおかしなことになりますから。


miyabi2013.hatenablog.com


(4)早すぎた続編ドラマの公開時期

映画「劇場版おっさんずラブ」がまだ完全終了していない*1この時期に発表するか?という呆れに似た感情。さすがに間隔の短さは無謀でした。シーズン1の爆発的人気から1年半、確かに短いというほどではない。


ですが、映画のプロモーション時期も含めれば3か月くらいは何らかの活動が継続している。その間、ファンのボルテージは上がりまくっていたわけです。そこから、「ハイ、次はコレね、よろしく」と急に違うものを提示された。ファンからしたら、何事ぞ、という戸惑いがあります。


どんなに続編が早くても映画から1年くらいは間隔をあけて欲しいと思う気持ちは当たり前で、私自身も真っ当な意見だと思います。急がなければいけない理由は、ファンのほうではなく、テレビ朝日のほうにあったとしか考えられません。その辺りは、前回のエントリーに書いてます。


miyabi2013.hatenablog.com


(5)情熱を商売道具に利用されたという思いこみ

おっさんずラブ」がオンエア中は、低視聴率のドラマという扱いを受けて、それはそれはテレビ朝日の態度は冷たかった。特に紙媒体や番宣も少なく、グッズも全くなく、反響が大きくなっていってもなんのアプローチもない状態でした。


そんな状況と相反するかのように、自然発生的に大きくなっていったドラマへの傾倒や熱量。キャストはもちろん、スタッフへの信頼も膨らみました。そして、この虐げられている深夜ドラマを私達がどうにかしてバックアップしたい、というファンの意思にも繋がっていきます。


まずは(無意識に)ドラマに登場する商品へと関心が向きました。春田の使用する黄色いマグカップニトリ製)、猫メモ(Cando製)、牧の着用していたカットソー(ikka)、あたりが有名ですが、他にも鞄や弁当箱、ランチボックス、キャリーケースなど。


ドラマに出てきた商品は、ただの小道具を超えて、面白いように(飛ぶように)売れていきました。SNS全盛時代、Twitterからの情報を元に、私もいろいろと買いあさりました。ドラマ終了後は、ようやくテレビ朝日からのオリジナルグッズが多数売り出されました。


当初、突貫でデザインされたクオリティ的には低いものが多かった(汗)のですが、それでもファンは、ドラマの感動と共になんでもいいから課金したくなっていたので、かなりのお金をつぎ込みました。やがて公式の書籍類やサントラCD、からDVDと出すものが全てヒットする異例の現象へ。


おっさんずラブ展」や夏祭りでの食堂での定食など、いろいろな機会に何回も提供されるグッズやお金にまつわるもの。それらは、劇場版のコラボとも相俟って相当な金額へと膨れ上がっていきました。モノ消費(グッズ類)もコト消費(聖地巡礼おっさんずラブ展)も長期に渡って続いてます。


実際にテレビ朝日の2018年決算にも営業外収入として数十億円の金額が上乗せされた、という話ですし。OL民が支えた、と豪語する部分は伊達じゃありませんでした。その「私達が支えてあげた思い」というのが、「こんな残酷な仕打ちになるのか」という怒りを増幅させたのだから、皮肉な現象です。


OL民の課金が、映画や新ドラマの製作費として使用され、それだけではなく単に「お金の成る木」として利用されたのではないか、という疑心暗鬼を巻き起こしました。正直、グッズなんかは自分が欲しかっただけ、という自己満足なので諦めはついてるはずなんですよね。


それでも怒りが強いと、私たちがつぎ込んだお金=純粋な思いを、不当(身勝手)に、不純な動機に利用された不快感に転嫁されてしまうわけですね。怖い怖い。

(6)公式への不信感(仲間と信じていたはずなのに)

もう一つ、「おっさんずラブ」というドラマには、SNSをうまく活用したことによってこれだけの大成功を収められた、と新時代のテレビ界の潮流を切り取る側面がありました。いままでの指標が視聴率しかなかったので、ものすごいインパクトだったと思います。


TwitterInstagramを効果的に使用し、ドラマの視聴者の目線を惹き付けて飽きさせない工夫。作り手と受け手の距離を縮めて、協同で盛り上げましょう、というアプローチが予想以上に当たったのです。戦略を練って意図的にやっていたとしたら、ここまでうまくはいかなかったでしょう。


有能な女性スタッフがTwitterやインスタで絶妙なタグをつけて発信したり、「武蔵の部屋」という裏インスタを立ち上げて春田を隠し撮りする部長、などとびきり楽しい企画を立ち上げ、ドラマへの興味へ繋げることへ成功したことが挙げられます。


ドラマが終わってからDVDが発売される間にも、公式サイトからいくつかの企画が提供され、信頼が深まっていった、と(勝手に)信じこんでしまっていたのです。もちろん公式だって騙すつもりなんてさらさらなく、プロモーションと視聴者へのサービスを兼ねて話題を提供し続けてくれました。


だからこそ、ずっとおっさんずラブは、終わって1年以上も経つのに視聴熱のベスト3圏内に何度もランキングするほど、パワーを失わないで生き続けることができたのです。需要と供給のバランスが絶妙な作品でした。


そう私達は心の底から公式を信じていた。信じていた相手に裏切られた(と思いこむ)時の絶望、これも激しい反抗の根底にあるのだと思います。

(7)せめても新旧ドラマのSNS管理を分けて、という要望

今は、炎上が起きてしまった後の状態なので、この段階ですね。Twitter公式アカウントやタグを分けて、まだ傷の癒えないシーズン1「おっさんずラブ」のファンを隔離して欲しい、そして、これから始まるシーズン2「おっさんずラブ -in the sky-」の前向きなコメントに触れさせてないで分離して欲しい、というささやかな願い。


残念ながら、これもまた簡単なことではないようです。私も今回初めて知ることになりましたが、正式アカウントの分割管理は、サイト運営のほうからNG(フィッシング詐欺的と見做されたり)で、申請にも長く時間がかかるようです。


Twitterのタグわけも、タイトル名と副題の間に空白があるなしの違いで書くほうも混乱してますし、「#おっさんずラブ」で統計を取りたいという思いがテレビ朝日側にあるようで一筋縄ではいきません。

結局待つしかないのか

いやはや、まあ笑っちゃうくらいうまくいかないものですね。あれだけ振り幅の大きな作品だっただけに、その反動で試練もまた大きいのかもしれません。


いろいろと書き並べてきましたが、総括すると今までになく熱狂的に支持されたドラマ(特に田中圭×林遣都の2人のカップリングが熱烈に愛された)で、視聴者の作り手への信頼関係や仲間意識も異常に強かった、だけに裏切りやがって、という思いが反発をさらに大きくしたのだと思います。


更に、作り手と受け手の境を曖昧にして成功したドラマだっただけに、憤りを伝えようとする声も大きい、という皮肉な側面もあります。難しいのは、裏側に多大な愛情が隠れていること。それでもまだ公式を100%憎めない、どこか信頼したい、という切実な思いが見え隠れしている点です。


愛が深いから、いつまでも離れられない。一見、ストーカーのような過激な振舞いをとってしまう部分はあるのだと思います。本来は、怒りを鎮めるアンガーマネジメントという手法なんかを使用するとか、SNSのプロを呼び込むなどしないと、このわだかまりを無難な形で終わらせるのは難しい気がしますね。


公式サイトの運営者も初期メンバーとは変わってる可能性もあって、うまく鎮める手段を持たない気がしています。ちゃんと説明責任を果たしてくれたらいいのですが、それすら炎上が怖くて身動きとれない感じがしております。


結局は、怒りが少しでも沈静化していくのを気長に待つ、とかしか方法はないのかもしれません。悲しいかなあんなにも情報を出しまくりだった、テレビ朝日の公式サイトがダンマリ状態です。


今のところ、私の勝手な見立てですが、8割継続(様子見含む)、2割脱落、2割新規でプラスマイナスゼロ、という感じかな。大成功は難しくても、母数が大きいので大失敗はない、と思います。しかも実力派の演じ手が揃っているのが強み。ただ、あくまでストーリーが良ければの話ですが(苦笑)。


ドラマ開始まで1ヶ月を切りました。新キャストのファンも楽しみに待っています。愛の方向性が混乱していますが、本当は皆「おっさんずラブ」を愛している。この騒動、どこかでうまく線を引いて収束できるようにしていけるといいのですが。

*1:一部劇場でロングラン上映も決まったという