少年・ピーター、衝撃のデビュー作!
今から4年ほど前、'70年代リバイバルブームの最中、とあるカルト映画がリバイバル上映されました。その名前は、『薔薇の葬列』。昔から何度か耳にしておりましたが、おどろおどろしいポスターに恐れおののき(笑)、なかなか縁がなかった映画です。
しかし、映画チラシを目にしてから、清水の舞台から飛び降りるような覚悟で、思い切ってビデオを購入してみました。見てビックリ、その独特の世界観に圧倒されてしまいました。
冒頭から、まだ幼な顔の少年の素肌が大写しになります。そして少年とも少女とも分からないような妖しい顔が覗いて、年配の男性とのちょっとしたラブシーンが展開されます。その後は、化粧姿にミニスカートで街を闊歩したり、(まるでドキュメンタリーのように)質問を受けて答える姿もあり、実験映画のような、妙に安定感のない映像が続きます。
少年ピーターは、のっぺりとした素顔でうつろに鏡を見たり、ありとあらゆる姿で画面の中を動き回ります。あるときにはけだるそうな表情を浮べて。
モノクロの映像のヒンヤリとしたムードの中に、醒めた目の少年が何度も映し出され、そのあまりの毒の強さにそれが物語の一コマだということを忘れそうになるのです。女装姿のピーターは、まるでそちらこそが本物の自分、というかのように自信に満ちていて、見ている私は翻弄されまくりでした。「キレイ」というよりも、本当に不思議な生き物のようでどうにも目が離せないのです。
映画のラストシーンは予想外の展開になり、ショッキングさで今でも思い出すと寒気がしちゃいます。しかし、たった1度でこれだけ強烈に場面が焼きついている映画というのも珍しいですね。
【 ピーターの隠された過去 】
映画デビューの頃の彼は、十代半ばぐらいでしょうか、顔立ちの幼さにドキッとするような妖艶さを持ち合わせておりました。つい最近のことですが、たまたまピーターの半生を特集したドキュメント番組を見ました。日本舞踊の名家の跡取りとして生まれた彼は、”師匠”である厳しい父親との折り合いが悪く、10代の頃に家出をして東京で働いてました。その頃にスカウトされたのがこの映画だったそうです。
その後は芸能界でも華々しい活躍をしますが、最後まで父親との本当の和解はできなかったと涙をポロポロとこぼして答えてました。それでも今、自分の体の中に、芸に厳しかった父と同じ同じ血が流れていることを知った、とも語っておりました。どこか陰鬱な眼差しを浮かべていたスクリーンの彼は、もがきあがいていた若かりし頃の”本当の自分”を投影していたのでしょうか。それにしても、
ホラーではないけれど、本当にオカルトな映画だったなぁ
薔薇の葬列
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