宝塚の演目の評判はどこか空気のように漂ってくる感じです。あらすじ・感想・映像紹介もかなり適当に流して、事前にあまり内容を入れないで見るようにしてますが、人々の意に反して面白い、ということは滅多に無いものです。現在、東京宝塚劇場で絶賛公演中の『落陽のパレルモ』もなんとなーく「あまり期待できないかなあ・・・」とおぼろげに感じた作品でした。ファンとしては誠に悲しいものですが。
唯一の楽しみは、春野寿美礼ちゃん自ら、決まって歓声をあげるくらい喜んだという”軍服”姿、とヒロインを目指して家宅侵入する場面です。もしかしたら、野獣のような(笑)寿美礼ちゃんを見れるかも?と密かに期待して。。
とにかくこのお芝居、登場人物のキャラクターの薄っぺらさが気になりました。それぞれが「今なんのために、そこにいるのか」というのが見えてこないし、また何を(誰を)求めているのかサッパリ伝わってこないのです。ひょっとして私が不感症なだけかしら?
「・・・ヴィットリオ君、ところでキミは一体何がしたいのかね?」
と心の中で問いかけて。
政府軍と民衆の板ばさみになって世の不公平を憤る一方で、 貴族のお嬢様アンリエッタとの叶わない恋を嘆き、 父親に捨てられて気がふれてしまった母との不遇な幼少期を振り返り*1、 最後は貴族(落し胤だったのです)に迎え入れられて笑顔でハッピーエンド(あっちゃー)。
寿美礼ちゃん扮するヴィットリオが、愛しのアンリエッタと結ばれるまで、あまりに何もせず、他力本願な主人公ぶりにちょっと呆然。
本当にこういう見せ場の少ない役もこなさなければならないジェンヌさん達には時折いたく同情してしまいます。演じ手のほうは作品の欠陥も全て分かっていながらも、自分を鼓舞させて頑張るのです。役柄の心のうちを必死で探り、背景の歴史や人物像を学び、共に話し合い、懸命に作り上げていく・・・全くもって脱帽です。
脚本家の植田景子先生もさすがにストーリーの矛盾・弱点は分かっていながら「時間が足りず」そこで完結しめなければいけなかったと言っていたそうですが、まさにその通りかな、と。気が付けば・・・全然褒めてないですね、マズイ(汗)。
【 お楽しみは・・・? 】
一方で、楽しみにしていたアンリエッタの寝室への忍び込みシーン。裏の木をつたって、5階の高さにあるその部屋*2まで行ったまでは良かったのですが、そんな無謀な情熱に突き動かされた割には、ヴィットリオ君、キミはどこまでも・・・高潔な男なんだ〜!
ここで、かつてのターコさん(麻実れい)が惜しげもなく披露していた”野獣”のようにヒロインへアプローチするのか、と密かに期待していたのですが、残念ながらやはり生粋の”プリンス”寿美礼ちゃんでした。『ジャワの踊り子』のラブシーン*3を思い出して、「今回もやっぱり紳士だったか〜」とちょっと落胆してしまいました。
⇒ 着眼点が微妙に違ってるか。
2.5番手(→2番手〜4番手くらいの微妙な時代の頃)の寿美礼ちゃんは、時折危険なほどに色気ムンムンだったのに
あの日のアナタは何処に〜?!
※ASIAN WINDSに続きます。
主要キャストについての雑感
- 寿美礼ちゃんは、憧れの軍服姿が眩しいほどに似合ってました。とにかく’軍服ショー’状態でもう目に楽しいです。あんな細身なのに、軍人らしく見えるのが素晴らしい。幾分台詞を’がなってる’のが気になりましたが、まあ良しとして。
- ふーちゃん(ふづき美世)は、退団作品ということで、見た目は落ち着いた貴婦人なのですが実は芯に熱いものを持ってる、という女役がハマってました。さらに今回の衣装は目を奪われるほど素敵でしたね。
- まとぶん(真飛聖)は折角、星組時代の持ち味である”濃さ”を生かさないばかりか、あっという間に花組のメルヘン色に染まってしまって「えーっ」と驚かされてしまいました。誰も彼女にそんな”爽やか系”を期待してはいなかったのではないでしょうか?このまま落ち着いちゃったらどうしよう・・・。
- ユミコちゃん(彩吹真央)が、もうちょっとなんとか”翳り”とか”色気”を身につけてくれるとメリハリつくんですけど(心底願わずにいられない)。ちょっと頑固、でも根っからイイ人感が漂います。
- 蘭トム(蘭寿とむ)君は、さすが色濃い役はお手のもの、ということでかなり役得、寿美礼ちゃんとの対比で一番印象に残ったのは実は彼女でした。桜乃彩音ちゃんとイイ感じで恋に発展するか?と思ったらあえなく殺されちゃって・・・無念。
- みわっち(愛音羽麗)&マッツ(未涼亜希)→花組の安定感を身につけてどんどん’若さ’を失ってないでしょうか?
- あすかちゃん(遠野あすか)は、相変わらず女優ですねー。全く危なげないです。余談ですが、先日劇場前でぶつかりそうになり、目があってあまりの可愛らしさにのけぞりました。
写真とストーリー:ENAK エナック
宝塚Stage Album (2005年) (タカラヅカMOOK)
- 作者: 小林公一
- 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ
- 発売日: 2006/03
- メディア: ムック
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
しびれまくりの軍服姿。本人が一番喜んだそうです。